中国、「開放」から再び「統制」へ

中国、「開放」から再び「統制」へ 党支配の揺らぎ警戒
分岐点の中国 共産党100年㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE171XD0X10C21A6000000/

『中国共産党が7月、結党100年を迎える。改革開放路線に踏み切った後の経済成長は一党支配を支えてきたが、都市と地方の格差や少子高齢化の加速、米国との対立激化など内憂外患も深まる。分岐点に立つ中国の姿を追う。』

『中国・安徽省合肥市。内陸部の省都は1000億元(約1兆7000億円)を投じ量子技術の世界最大の研究拠点を建設する構想に沸く。「今後10~15年で国防や金融、エネルギーなど幅広い分野に応用する」。4月、「量子の父」と呼ばれる中国科学技術大学の潘建偉教授は息巻いた。

習近平(シー・ジンピン)国家主席は2020年10月の党の会議で「量子技術の国際競争でトップの地位を占めよ」と指示、潤沢な資金投入を約束した。日本経済新聞社が出資する調査会社アスタミューゼによると中国の09~18年の量子コンピューターへの研究投資額は6億3千万ドル(約700億円)に達し、米国の10億6千万ドルを追う。

中国は巨額の資金を元手に官主導による研究開発を推進する。3月には今後5年間で取り組む科学技術の重点分野に人工知能(AI)など7項目を掲げ、官民を合わせた研究開発費を年平均7%増やす方針も示した。』

『習指導部が次世代の成長の軸を探すのに躍起となるのは、一党支配への国民の不満を抑えているのが高成長による生活水準向上と国力発展にあると考えているからだ。』

『建国の英雄だった毛沢東氏の死去後、最高指導者となった鄧小平氏は1978年に改革開放政策を採用し、外資導入を進めた。89年の天安門事件の混乱を経て、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟で「世界の工場」の地位を確立した。

だが過去の高成長を支えた柱は外資による技術導入と安価な労働力だった。05年ごろには新興国で農村部での労働力の余剰がなくなって都市部への人口流入が減り、賃金上昇が始まる「ルイスの転換点」を超えたとされ、沿海部を中心に労働コストは急上昇した。15~64歳の生産年齢人口も13年をピークに減少に転じ、かつての2ケタ成長は見込めなくなった。

米国はデータ流通や半導体など重要分野で中国への技術流出を阻むなど経済面での封じ込めを探っており、外資導入にも不透明感が漂う。』

『08年のリーマン・ショック以降の経済成長は借金の拡大という「カンフル剤」で底上げされてきたのが実態だ。企業・家計・政府を合わせた債務残高の国内総生産(GDP)比は07年の142%から20年末に290%に上昇し、米国(296%)とほぼ肩を並べる。国有企業の債務不履行が続き、借金頼みの成長は限界に来ている。

長年取ってきた「一人っ子政策」の影響で少子高齢化も加速し、共産党系メディアも「総人口は22年にも減少に転じる可能性がある」と指摘する。中国の人口問題に警鐘を鳴らす米ウィスコンシン大学の易富賢研究員は中国の実質経済成長率が30年までに3.3%まで低下すると試算する。

高齢化で膨らむ社会保障費負担への備えは遅れ、不動産価格の高騰で持たざる若年層の不満も高まる。世代を問わずくすぶる体制批判の芽を摘もうと、習指導部は「開放」から「統制」へのシフトを加速する。』

『習指導部は自由こそがイノベーションの源泉と位置付ける米国に対し、国家主導の体制で挑もうとしている。だが中国を世界第二の経済大国に押し上げたのは、アリババなど米国の模倣もいとわずに激しい競争を繰り広げてきた民間のハイテク企業群でもあった。国家の管理を強めれば、潜在力を封じかねない。

国民の不満を経済で解消できなくなれば、香港や台湾への高圧姿勢のような対外強硬路線に人心掌握を頼らざるを得なくなる。100歳を迎える共産党の統治の行方は、世界も左右する大きな分岐点となる。』