[FT]エクアドル次期大統領、試される政治手腕

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『11日のエクアドル大統領選の決選投票では事前予想を覆し、一代で巨万の富を築いたギジェルモ・ラソ氏が勝利した。だが、政治的対立によって社会が分断し、経済が疲弊して多くの住民が貧困に陥り、新型コロナウイルスで打撃を受けた同国を率いるラソ氏の行く手にはあまたの難題が立ちふさがる。

同日夜、元銀行頭取のラソ候補が予想外の勝利を収めると、数千人の支持者が同国の首都キトにある高級住宅地の路上に繰り出し、当選を…

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同日夜、元銀行頭取のラソ候補が予想外の勝利を収めると、数千人の支持者が同国の首都キトにある高級住宅地の路上に繰り出し、当選を祝った。

「私たちはこの日が来るのを何年も待っていた」。支持者の1人であるハネス・ヒメネス氏は甲高いクラクションの音に負けじと声を張り上げ、ラソ氏の名前と顔が描かれた大きな旗を振りながらこう語った。「この勝利によって、この国がやっと泥沼から抜けだし、あるべき姿——正常な、繁栄した国へと生まれ変わるよう願っている」

だが祝賀ムードが過ぎ去り、植民地時代にキトの旧市街地に建てられた白いしっくい塗りのカロンデレ宮殿(大統領府)にラソ氏が着任すれば、自らが担う責務の大きさに気づかされるだろう。

ニューヨークにあるエムソー・アセット・マネジメントのリサーチ部門を率いるパトリック・エステルエラス氏は、ラソ政権は「途方もない」課題に向き合わなければならないと指摘する。
新型コロナの超過死亡率は世界2位
エクアドルのコロナワクチン接種率はわずか1.6%と中南米諸国で最低水準にある=ロイター

まず初めに新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への対応だ。フィナンシャル・タイムズ(FT)の分析によると、新型コロナ禍が始まって以来のエクアドルの超過死亡率は世界で2番目に高い。政府の対応は混乱を極め、この1年間に保健相が4人も交代した。

ラソ氏は選挙期間中、大統領に就任すれば100日以内に人口の半数以上に相当する900万人にコロナワクチンを接種すると約束した。過去2カ月間の接種率がわずか1.6%と中南米諸国で最低水準の同国にとっては極めて野心的な目標だ。

「ラソ政権がこの目標を達成できるとは思えない。公約を果たせなければ、政敵はそれを攻撃材料として利用するだろう」と、キトの国立高等研究所所属の政治学者ソフィア・コルデロ氏は指摘する。
公的債務はGDP比65%、財政赤字も拡大

エクアドル経済はコロナ禍の前から低迷していた。2020年の経済成長率は8%近いマイナスとなり、中央銀行が発表した21年の予想成長率は3.1%にとどまる。公的債務の国内総生産(GDP)比率は約65%まで跳ね上がり、財政赤字も拡大した。エクアドルは20年に国際通貨基金(IMF)との間で65億ドル(約7060億円)の融資契約に合意したが、パンデミックの影響で融資要件を満たせなくなるおそれがある。

英調査会社のキャピタル・エコノミクスは「新大統領にエクアドルの公的債務を持続可能な水準に戻すよう求めるのは難しいだろう」とみる。「より穏やかな財政緊縮路線に舵(かじ)を切るというのが最も有力なシナリオだ」

とはいえ、IMFはラソ氏の勝利に胸をなで下ろしているだろう。米銀行大手のシティバンクは「ラソ氏となら、IMFはプログラムを継続しやすい」と予想する。「同氏は投資と経済成長をより重視した政策を打ち出すと思われる」ためだ。

エクアドル国債の価格は11日の投票結果を受けて上昇した。「ラソ氏はより正統派のイデオロギーの持ち主であり、IMFとの協力継続を希望している。国債価格を押し上げた主な要因はこの2つだ」と米資産運用会社アライアンス・バーンスタインで新興国国債券部門の責任者を務めるシャマイラ・カーン氏は言う。
連立政権作りへ厳しい闘い

政治面でもラソ氏は厳しい闘いを強いられそうだ。同氏が率いるクレオ党は5つの主要政党の中で最も小さく、国会定数137議席中わずか12議席を占めるにすぎない。連立相手であるキリスト教社会党の19議席を加えても過半数の確保にはほど遠い。

したがって、第2勢力で先住民主体のパチャクティック党と、第3位の左派民主党との交渉が必要になってくるが、両党とも社会的保守主義者で資本家のラソ氏と手を組むとは考えにくい。

同国南部のクエンカ大学で政治学を教えるアンジェリカ・アバッド氏は「政権運営が気がかりだ」と懸念を示す。「この国の政党は結成するとすぐに崩壊してしまう『幻の連立』を繰り返してきた」

ラソ氏をよく知る人々は同氏を交渉巧者とたたえつつ、異質な政党を一つにまとめて継続するのは容易ではないとみている。ラソ氏は投票日の演説で、LGBT(性的少数者)活動家とシングルマザーにあえて言及し、多様な価値観を受け入れる寛容な社会を実現し、そうした人々を保護していくと述べた。だが批評勢力は同氏がカトリック系の保守派団体オプス・デイのメンバーであることを踏まえ、そんな公約は守られないだろうと高をくくっている。
再起模索する元大統領
ベルギーに亡命中のコレア元大統領は政権復帰の機会をうかがっている=ロイター

一方、コレア元大統領にとっては、ラソ氏の勝利により有権者からはっきりとノーを突きつけられた格好だ。コレア氏は後継指名したアラウス候補を当選させて、いずれはエクアドルへ帰国しようともくろんでいた。

だが実際のところ、同氏のベルギーでの亡命生活は長引きそうだ。20年に開かれた欠席裁判では汚職の罪で8年の懲役刑を言い渡されており、帰国すれば受刑者として収監される。

米国の検察官が別の事件で提出した書類によると、エクアドル政府の職員は07年から17年にかけてのコレア政権時代に、ブラジルの建設大手オデブレヒトから3350万ドルの賄賂を受け取っていた。

大統領選の結果が明らかになると、コレア氏は柄にもなく率直に敗北を認めてラソ氏を祝福し、「我々は心から勝利を信じていたが、見通しが間違いだったようだ」とツイートした。

その一方で、自身の政治家生命が終わったわけではないと示唆し、「これは終わりではなく始まりにすぎない」とうそぶいてみせた。

By Gideon Long

(2021年4月14日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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