中東戦略、中国マネーに落とし穴(The Economist)

中東戦略、中国マネーに落とし穴(The Economist)
欧米の二の舞いにならないと自信深める中国だが
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1113S0R10C21A4000000/

『中国指導部は、世界の大国が遂行すべき中東政策を書き換えようとしている。

近年は中東の主要な国々と通商協定など様々な協定を次々に締結している。その多くは長年、互いに敵対関係にある国々だ。イスラエルとパレスチナのいずれとも良好な関係にあると主張したり、2013年には双方の代表を別々に北京に招いたりした。

中国の王毅外相(左)とイランのザリフ外相は3月27日に、イランと経済や安全保障を巡る25年間の協定に署名した=ロイター
信頼関係の構築が難しい中東で中国はアラブ諸国にも、非アラブ諸国にも新型コロナウイルスワクチンや監視技術を提供し、信頼できる国という評判を築いた。

シーア派の盟主を自任するイランと敵対するスンニ派の盟主サウジアラビアの両国にとって、世界最大の原油輸入国である中国は代えがたい貿易相手国だ。中国はそのイランとサウジと、数週間の短い間隔しか空けずに、それぞれと海軍の合同軍事演習まで一度ならず実施している。

中国政府は外国人はほぼ金で動かせると思い込んでいるらしく、イデオロギーといった価値観より経済的利益を重視する姿勢を鮮明にしている。自分たち独自の中東外交を展開する限り、米国や中東をかつて植民地として支配した欧州諸国が頻繁に泥沼に陥った二の舞いは回避できるとの自信を深めているようだ。

イランと協定、ホルムズ海峡近くに港湾も整備か
中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は3月24~30日に中東6カ国を歴訪し、「域外からの介入が中東にひどい爪痕を残した」と嘆いた。イランとは27日、経済や安全保障を巡る25年間の協定に署名した。

その詳細は明らかになっていないが、イランが原油を割安で提供する見返りに中国が通信網や病院、地下鉄の整備を支援するのに加え、世界有数の戦略的要衝に港湾を複数整備する計画があるという観測も流れている(編集注、バーレーンに司令部を置く米第5艦隊はホルムズ海峡を戦略的に重視しているが、同海峡近くのオマーン海に面するジャスクに中国が港湾設備を整備するとの噂もあり、西側の大きな懸念を呼んでいる)。

中国指導部は、中東では経済を軸に外交を展開するのがよいと考えている。習近平(シー・ジンピン)国家主席は2016年にアラブ諸国で構成するアラブ連盟で演説した際、中国は中東で影響力を及ぼせる勢力圏を築きたいわけでも、中国の利益を代弁してくれる存在を求めているのでもないと発言した。中国の狙いは経済成長を軸とした関係の深化であり、「中東の混乱は経済発展の遅れが原因だとみている」と語った。

イランの激しい反米感情やイスラエルへの敵対心といった難問中の難問もささいな事と片づけ、経済的繁栄で解決できるとの見方を示したのだ。

中国もイランの核開発に反対の理由
中国は、特に自国がイランに約束した様々な投資が、イラン核合意と呼ばれる包括的共同作業計画(JCPOA)にイランを引き戻す取り組みを阻害するというより促進するものだと主張する。JCPOAは15年に米オバマ政権と主要五カ国がまとめたが、18年に当時のトランプ大統領が一方的に米国を離脱させた。トランプ氏は、イランが核兵器の開発を制限する代わりに制裁を緩和したオバマ政権のやり方を批判し、核合意離脱後はイランに対し厳しい経済制裁を復活させた。

中国の政府系シンクタンク、中国社会科学院で中東情勢を長年研究している殷罡氏は、中国はイランとの貿易拡大を目指しているとはいえ、イランの核開発には反対の立場であることをバイデン米政権がなぜ疑うべきではないかをこう説明する。

何かと率直な物言いをする殷氏は、中国がイランの核兵器開発に反対なのは中国のマイナスになるという身勝手な理由からだと指摘する。イランが核兵器を持つに至れば中東で軍拡競争が始まる懸念が生じる。「イランが核兵器を開発すれば、サウジやトルコも追随するのは間違いない」と。そうなれば中国にとって直接の脅威にこそならないかもしれないが、「もし中東で核戦争が起きたら、中国の中東ビジネスはどうなるのかという問題が浮上する」と言う。

中国政府はどんなに厳しい経済制裁を科しても中東諸国などによる核兵器開発は阻止できないとみている、と殷氏は北京でお茶を片手に断言した。そして、その代表例が北朝鮮だと指摘した。

そのロジックはこうだ。もし米国が対イラン制裁を解除して、中国や欧州および他地域の企業とイランの企業や組織との貿易の再開を認めれば、イラン側に自制した方がいいと判断する理由が増える。だからこそ中国は米国に制裁の解除を求め、イランには核合意の義務履行を求めているのだ、と。

中国政府が自国の利益のことしか考えていないのを隠そうともしないのは、自らの主張に噓はない証拠だとも考えられる。

イランは米中が協力できる少ない問題の一つ
バイデン政権は今のところ、中国もイランの核開発には反対で、中東への関心は経済が中心で政治的野心ではないという主張に耳を傾ける方向のようだ。

3月18~19日の米アラスカ州での米中外交トップによる協議の後、イランの核合意を巡る対応は米中が協力できそうな数少ない項目の一つに入った。中国がイランとの貿易を拡大しようとしている件について聞かれた米国務省の報道官は、イランによる核開発反対は米中間で「戦術的に連携できる数少ない分野」の一つだと述べた。

中国・北京に駐在する各国の外交官らによると、中国政府は新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族への弾圧をイランやアラブ諸国に支持するよう求めるなど、中東で政治的な目標の達成も追求していると言う。

この点について、殷氏は、ウイグル族はトルコ系民族であり、イランもアラブ諸国もトルコ系民族を嫌っているので、「彼らはウイグル族弾圧のことなど政治的に問題だなどとはみていない」と冷ややかに言い放った。

だが殷氏は、中国が中東で経済的存在感を高めつつ政治的には無関係であり続けようとする戦略を多くの中国の学者らが懸念していることは認めた。中東には様々な機会が豊富に存在するが、「罠(わな)や泥沼も多い」と言う。

中国人の外交専門家には、米国の存在感低下で中東に空白が生じているとみる向きがある。13~17年に東アジア・太平洋担当の米国務次官補を務めたダニエル・ラッセル氏も、中東諸国の間で米国をもはや頼りにはできないとの見方が浮上する中、中国が存在感を発揮しようとしていることを認識している。

中国政府は中国企業に、広域経済圏構想「一帯一路」の実現に向け海外進出を進め、中国の価値観や様々な技術標準を広めるべく先端技術を拡販せよとハッパをかけている。だが、中国が各国と結んだ野心的な協定には政治的リスクが伴う。現在は米国のアジア・ソサエティー政策研究所に所属するラッセル氏は「存在感や投資を拡大させるほどリスクもそれだけ高まる」と指摘する。

それでも野望が行き詰まる可能性
米国が中東への関与を減らしつつあるとはいえ、中国は中東戦略を考える上で米国の存在を常に意識している。中国の最も魅力的な貿易相手国である湾岸アラブ諸国は長年、安全保障を米国に依存してきただけに米国の存在を無視することなど不可能だ。

もし中国が中東で軍用にも商用にも使える港湾を建設したり、重要な技術で中東諸国に協力を求めたりすれば、米国は古くからの同盟国に米国に味方するよう求める可能性は十分ある。

中国は倫理をものともしないビジネス第一主義を貫くことで、これまでは中東で様々な落とし穴に陥るのを回避できたかもしれない。だが今後、中国の野望は行き詰まる可能性がある。

(c)2021 The Economist Newspaper Limited. April 10, 2021 All rights reserved.

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米国務副長官にシャーマン氏 上院が承認

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1442B0U1A410C2000000/

『【ワシントン=共同】米上院本会議は13日、米外交のかじ取りを担う国務省ナンバー2の副長官に、オバマ元政権などで北朝鮮やイランとの交渉に携わったウェンディ・シャーマン元国務次官(政治担当)を充てる人事を承認した。

採決結果は賛成56、反対42。オバマ元政権で米朝交渉を担ったほか、イランとの核交渉も担った。クリントン政権下の1997~2001年には北朝鮮政策調整官を務め、00年10月のオルブライト国務長官(当時)の訪朝にも同行した経験もある。』

ウェンディ・ルース・シャーマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3

中国製EV、日本に本格上陸 佐川急便が7200台採用

中国製EV、日本に本格上陸 佐川急便が7200台採用
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC136SH0T10C21A4000000/

『中国の自動車・部品メーカー、広西汽車集団が小型商用の電気自動車(EV)を日本企業に供給する。SGホールディングス傘下の佐川急便が国内での配送用トラックとして7200台採用することを決めた。EVの普及で先行する中国製のEVが日本に本格上陸する事例となる。

広西は中国南部の広西チワン族自治区柳州市に本拠を構える。供給するEVは軽自動車サイズの商用バンで航続距離は200キロメートル以上。配送拠点から配達先までの短距離を走り、配送拠点で夜間などに充電する。8月に仕様を固めて、広西が9月にも量産を始める。実際の納入は2022年9月になる見通し。

生産を担当する広西のグループ企業は日本経済新聞の取材に対し「量産に向けた準備を進めている」とコメントした。

日本の自動車メーカーが手薄な小型商用分野を市場開拓の足がかりにする。当初は並行輸入車などとして日本に供給する。並行して国内で継続的にナンバーをとるのに必要となる国土交通省の型式認証手続きを進める。

車両の企画開発や製品保証は日本のEV関連スタートアップのASF(東京・港)が担当する。広西はASFからOEM(相手先ブランドによる生産)を受託する形となる。佐川は今回採用するEVのコストを明らかにしていないが、現状のガソリン車の軽ミニバンの130万~150万円を下回る水準とみられる。

小型EV商用車は、採算性や安全性の確保、ブランド維持の観点から日本メーカーがあまり手を付けていない領域だ。三菱自動車が世界初の軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」を11年に発売したが、累計で9100台の販売にとどまる。

中国製EVは商用車ではそろりと浸透し始めた。中国大手の比亜迪(BYD)が日本での納入例を増やしており、上野動物園(東京・台東)やハウステンボス(長崎県佐世保市)などが園内バスとして採用しており、のべ53台を納入済みだ。BYDは22年6月までに100台まで増やすことをめざしている。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Spotlight/Electric-cars-in-China/Japan-s-Sagawa-to-buy-7-200-low-priced-EVs-made-in-China?n_cid=DSBNNAR

【詳報】処理水 海洋放出の方針

【詳報】処理水 海洋放出の方針 理解はどこまで…?風評対策は?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210413/k10012971481000.html

『東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から10年以上がたった今も増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水。その処分方法について政府は、国の基準を下回る濃度に薄めたうえで海へ放出する方針を決めました。
政府は7年余りにわたる検討を経て方針を決定しましたが、地元を中心に海洋への放出には根強い反対があり、専門家は地元など関係者の理解や納得に課題を残したと指摘しています。これまでのプロセスや海洋放出の具体的な方法、風評被害対策の方針などをまとめました。

去年、政府が開いた意見を聞く会では地元住民や漁業関係者など29団体43人のうち6つの団体と個人が海への放出に明確に反対する意見を表明したほか、福島県内の市町村議会では海洋放出への反対や慎重な対応を求める意見書が相次いで可決されました。

また、今月7日に菅総理大臣と面会した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は「海洋への放出は絶対に反対という考えはいささかも変わらない」と強調していました。
“国・地元 双方向の対話機会が少ない”<専門家>
なぜ、このような状況になったのか。

専門家からは地元を含めた関係者との双方向の対話の機会が少なかったことが影響しているとの指摘があがっています。

国は、処分方法について2013年から有識者による委員会などを設けて検討を行い、去年、国の小委員会が基準以下に薄めて「海か大気中に放出する方法が現実的だ」などとする報告書をまとめました。
この間、2018年に地元住民など一般の人が意見を述べる「公聴会」が開かれ書面による意見募集も行われましたが、あくまでも意見を聞く場だとして関係者との対話や議論はほとんど行われませんでした。

また、政府は処分方針の決定に向けて去年、地元の農林水産業者や全国の商工団体などから意見を聞く会を開きましたが、出席者はほとんどが組織の代表で割り当てられた時間内に意見を述べる形式のため双方向の対話にはなりませんでした。

合わせて書面による意見募集も行われましたが、方針が決定されるまでの間にこうした意見に対する政府としての見解は示されませんでした。

これについて経済産業省は、なるべく多くの意見を聞くためこの形式を採用したとしていて、処分の方向性が決まらない検討の途中では意見のやり取りができる材料がなかったとしています。
“住民の議論参加に課題”<NHKアンケート>
NHKはことし2月、福島県の1200人を対象にインターネットによるアンケートを行いトリチウムなどを含む処理水の処分についても聞きました。

この中で「地元住民などの関係者が十分議論に参加しているか」尋ねたところ
▽「そう思う」は3%
▽「どちらかといえばそう思う」は10.4%だった一方
▽「そう思わない」は37.4%
▽「どちらかといえばそう思わない」は23.8%で
住民がどのように議論に参加するかが課題になっていたことが伺える結果でした。
専門家“政府 関係者の理解得る努力 長期で必要”
原子力と社会との関係に詳しい東京電機大の寿楽浩太教授は、漁業関係者など反対の声も上がる中で政府が方針を決定したことについて「政府側はさまざまな方の意見表明の機会を多く設けた認識だと思うが、当事者としては意見が方針に具体的に反映された手応えを持てていないのではないか。関係者どうしが相互にやり取りしながら解決策を模索していく場が十分に設けられなかったことが惜しまれる」と指摘しました。

そのうえで実際の放出に向けては、関係者の理解を得る努力が長期にわたって必要になるとして「10年の時間を要して十分な納得感が得られていないという声が聞かれる中で政府の責任で決定したのであれば、過去の経緯をきちんと検証し改めて信頼関係を作っていく必要がある」と話しています。
そもそも、トリチウムとは…?
トリチウムは日本語では「三重水素」と呼ばれる放射性物質で水素の仲間です。

宇宙から飛んでくる宇宙線などによって自然界でも生成されるため、大気中の水蒸気や雨水、海水それに水道水にも含まれ、私たちの体内にも微量のトリチウムが存在しています。

トリチウムは通常の原子力施設でも発生し、各国の基準に基づいて薄めて海や大気などに放出されています。

水素の仲間で水の一部として存在するため、水から分離して取り除くのが難しいのが特徴で、福島第一原発の汚染水から多くの放射性物質を除去する装置を使っても取り除くことができません。
国内の原発では1リットル当たり6万ベクレルという基準以下であることを確認したうえで海に放出していて、海外でも各国で基準を定めて放出しています。

トリチウムが出す放射線はエネルギーが弱く空気中ではおよそ5ミリしか進みません。このため人体への影響は外部からのものよりも体内に取り込んだときのリスクを考慮すべきとされています。

国の小委員会は
▽体内で一部のトリチウムがタンパク質などの有機物と結合し濃縮するのではないかといった指摘があることについては、体はDNAを修復する機能を備えていて動物実験や疫学研究からはトリチウムが他の放射性物質に比べて健康影響が大きいという事実は認められなかったと結論づけています。

また
▽マウスの発がん実験でも自然界の発生頻度と同程度で原子力発電所周辺でもトリチウムが原因と見られる影響の例は見つかっていないとしています。

放射性物質の性質に詳しく国の小委員会の委員をつとめた茨城大学の田内広教授は人体への影響を考える際、濃度の大小がポイントだと指摘します。そのうえで田内教授は「トリチウムが体内に取り込まれてDNAを傷つけるというメカニズムは確かにあるが、DNAには修復する機能があり紫外線やストレスなどでも壊れては修復しているのが日常。実験で細胞への影響を見ているが基準以下の低濃度では細胞への影響はこれまで確認されていない」と話していて、低い濃度を適切に管理できていればリスクは低いとしています。
海洋放出はどう行われるのか?
福島第一原発構内のタンクにためられているトリチウムなどを含む処理水は、現状ではトリチウムの濃度が環境中に放出する際の国の基準を超えているため今のままでは海に放出することができません。また、トリチウム以外の放射性物質も濃度が基準を超えているものがあります。
このため、海洋放出に向けてはまずトリチウム以外の放射性物質の濃度が基準以下になるまで改めて専用の浄化設備を通して放射性物質を取り除き、濃度を下げます。

そのうえで、こうした設備で取り除くことができないトリチウムを海水で薄め基準を大幅に下回るレベルにして放出することになります。

国は放出に当たって放出の前後でのモニタリングを強化し、環境に与える影響を確認しながら少量での放出から開始するとし、モニタリングで異常な値が出た場合などには放出を停止するとしています。

トリチウムの濃度を薄め放出するための設備は新たに作る必要があり、今後、設計や放出までの具体的な計画を東京電力が検討し原子力規制委員会の審査を受けることになります。

国は東京電力に対し、2年後をめどに海洋放出を開始できるよう設備の設置などの具体的な準備を進めることを求めています。
その基準は?
トリチウムを環境中に放出する際の国の基準は1リットル当たり6万ベクレル以下と定められています。
国はトリチウムなどを含む処理水を海に放出する際の濃度について、基準の40分の1の、1リットル当たり1500ベクレルを下回る水準まで薄めるとしています。

福島第一原発では汚染水の発生量を抑制するため建屋周辺で地下水をくみ上げ海に放出していますが、この中にもトリチウムは含まれています。

こうした水を海に放出する際の東京電力の自主的な基準は1リットル当たり1500ベクレル未満で、国はトリチウムなどを含む処理水の海洋放出にあたっても同様の水準にするとしています。

また、1年間に放出するトリチウムの量については事故の前、福島第一原発が通常の運転をしていた時に目安とされていた22兆ベクレルを下回る水準となるようにするとし、その値は定期的に見直すとしています。
トリチウム放出量<国内の原発>
また、トリチウムは通常の原子力施設の運転に伴っても発生していて、各国の基準に基づいて薄めて海や大気などに放出されています。国内の原発では1リットル当たり6万ベクレルという基準以下であることを確認したうえで海に放出されています。
国内の原発の1年間のトリチウムの放出量です(2019年度)。
▽関西電力
大飯原子力発電所で56兆ベクレル
高浜原子力発電所で13兆ベクレル
美浜原子力発電所で8600億ベクレル
▽九州電力
玄海原子力発電所で50兆ベクレル
川内原子力発電所で55兆ベクレル
▽四国電力
伊方原子力発電所で16兆ベクレル
などとなっています。

経済産業省のまとめによりますと、福島第一原発事故の前の5年間を平均した年間の放出量は、加圧水型と呼ばれるタイプの原発で18兆から87兆ベクレル、福島第一原発と同じ沸騰水型と呼ばれるタイプの原発で0.02兆から2兆ベクレルとなっています。

東京電力福島第一原子力発電所では事故の前の2010年に2兆ベクレル余り放出されていました。
トリチウム放出量<国外の原発>
国外の原子力施設でも運転をする際にトリチウムは発生し、各国がそれぞれつくる基準に基づいて海洋や大気中へ放出されています。
原発のタイプや施設の種類によって放出量に違いがあり日本にあるタイプのものでは、経済産業省のまとめによりますと、2002年には
▽中国の大亜湾原発で42兆ベクレル
▽アメリカのキャラウェイ原発で同じく42兆ベクレルが放出されています。

このほか
▽カナダのダーリントン原発で2015年に
液体として241兆ベクレル、気体として254兆ベクレルが放出されています。

▽またルーマニアのチェルナヴォダ原発では2002年に
液体で85兆ベクレル、気体で286兆ベクレル
▽韓国のウォルソン(月城)原発では2016年に
液体で17兆ベクレル、気体で119兆ベクレル放出されています。

再処理施設では放出量がより多く
▽フランスのラ・アーグ再処理施設では2015年に
液体で1京3700兆ベクレル、気体で78兆ベクレル
▽イギリスのセラフィールド再処理施設では同じく2015年に
液体で1540兆ベクレル、気体で84兆ベクレル放出されています。
東電の設備能力審査へ 原子力規制委
原子力規制委員会では今後、東京電力が申請するトリチウムを薄めるための設備の能力などの審査を行う見通しで、これに合格しないと設備の稼働は認められません。

タンクにたまった処理水を放出するためにはトリチウムを国の基準以下の濃度に薄めるための専用の設備を作る必要があり、東京電力は今後、福島第一原発の廃炉計画に、新たに作る設備についても反映させ、規制委員会に審査を申請することになります。

規制委員会は東京電力からの申請を受けて、トリチウムを基準以下の濃度に薄める能力が確保されているかや、設備の健全性などを審査の中でチェックします。

審査のほか、建設工事のあとに行われる検査などの手続きもあり、それらに必要な期間について規制委員会の更田委員長は2年程度かかるとの認識を示していて、この審査や検査に合格しなければ設備の稼働は認められません。

また、規制委員会は海洋放出の実施後、福島第一原発周辺の海域で海水に含まれる放射性物質の測定を強化することも検討していて、水質に大きな変化はないか確認するとしています。
風評対策 議論深まらず…
一方、政府による方針の決定まで7年余りの歳月がかかったにもかかわらず、議論が深まらなかったと指摘されているのが風評被害対策です。

去年4月から7回にわたって開かれた地元の農林水産業者や全国の商工団体などから意見を聞く会では、29団体43人のうち半数以上から風評被害対策を示すよう求める意見が出されました。

もともと国はトリチウムなどを含む処理水の処分に伴う風評被害などの社会的な影響について2016年からの国の小委員会の中で議論するとしていました。

しかし報告書では、海洋放出の場合、社会的な影響は特に大きくなるとの指摘があった一方、示された対策は
▽周辺環境のモニタリング強化や
▽測定結果や科学的知見の丁寧な情報発信
それに
▽福島県などが取り組んできた既存の対策の拡充と強化などにとどまり
地元などから具体的な対策が見えないという声が相次ぎました。

経済産業省は理由について処分の方法が決まらない中、仮の話だとしても風評対策について割り切った議論を進めることが難しかったとしています。
国の小委員会の委員を務めた福島大学の小山良太教授は「方法を決定する前に海洋放出の場合にどんな影響や損害があるか事前にシミュレーションして対策を考えることもできたが、国側はその時点で方法を決めたと思われることを気にしていたのではないか。本来であれば事前に影響の大きさや対策の内容、規模感について議論をしたほうが合意形成につながりやすいプロセスだったと思う」と述べました。

また、今後の風評対策については「これまでの風評対策をただ拡充するのではなく水産業や観光など産業の特徴を踏まえてどんな対策は効果があったのか一度、現状を分析するべき。また福島の漁業は本格操業しておらずまだ経営体としてぜい弱なので、流通や消費への対策だけでなく経営体力を強化するような生産基盤に対する支援も必要だ」と指摘しています。
政府は“風評対策に万全”
トリチウムなど放射性物質を含む処理水を海に放出するにあたって、政府は風評被害の対策に万全を期すことにしています。

具体的には風評の影響を最大限抑えるためトリチウムの濃度を国の基準の40分の1、WHO=世界保健機関が示す飲料水の基準では7分の1程度に薄めたうえで海に放出するとしています。

また、農林水産業者や地元の自治体の関係者なども加わって放出前後の濃度などを監視するモニタリングを強化するとしていて、IAEA=国際原子力機関の協力も得ながら海洋放出が国際慣行に沿って行われることなどの情報を、科学的な根拠に基づいて発信することにしています。

さらに、水揚げを増やすため漁業関係者の設備導入に対する支援事業を継続するほか、地元や周辺自治体の仲買や加工業者の販路の開拓なども支援します。

このほか、観光業などについても風評被害が懸念されるとして、観光客の誘致や地元産品の販売促進など本格的な復興に向けた対策を講じるとしています。

こうした対策を取っても生じる風評被害には東京電力が賠償を行うよう求めています。

そして、関係閣僚による新たな会議を設けて必要に応じて追加の対策を機動的に実施するとしています。
専門家「科学的理解と流通経路の維持を」
風評問題に詳しい筑波大学の五十嵐泰正准教授は、政府が示した風評被害対策について「処理水の安全性について科学的な理解を醸成していくことは非常に重要だが、風評被害の構造的な問題として流通の各段階で取引先が気にするかもしれないという過度なそんたくが発生することで需要そのものが減退し、消費者の理解以前に買えなくなるという状況がある」と指摘しています。

そのうえで「科学的な理解の醸成と車の両輪のように重要なのは福島県や周辺地域の魚介類の流通経路を決して失わないようにしたり、拡大したりする方策をしっかりと示すことだ。売られているのだから大丈夫だという状況を作り続けていくことが大事だ」と述べ、科学的な理解の醸成に加えて生産・加工・流通・消費の各段階での対策の必要性が盛り込まれたことは評価できるとしています。

一方で、風評被害が生じた場合の賠償については「大前提として風評被害が発生した場合に賠償するのは当然だが、賠償を継続している漁業に後継ぎ世代が未来を見い出せるかどうかや子や孫につがせようと思うかは心配で、賠償が長引くほどこの産業に将来展望を見出しにくくなるのではないか。賠償を支払うだけではなく後継者の育成や他業種からの新規参入の促進など、漁業を中核とした地域をどう作っていくかというビジョンも関係者との対話の中から明確にしていくべきだと思う」と話していました。
専門家「このままでは風評避けられず、対策を」
国の小委員会の委員を務めた東京大学の関谷直也准教授は、今回の政府の方針決定について「国民の中でどれだけ処理水についての理解や周知が進んでいるかというと不十分なまま今に至っているのが現状だと思う。このままの状態で放出となれば風評被害の発生は避けられず、放出までの2年間で国民の理解を得るために何をするのか具体的に考えなければならない」と話しています。

さらに最近、東京電力の不祥事が相次いでいることにも触れ「福島第一原子力発電所の事故から10年がたった今、さまざまな問題が出て気の緩みが出ていることを考えると、今は東京電力による処分を信用できる段階ではなく信頼性をどう担保するかも課題だと思う」とも述べて、国民の理解や信用を得ていくことの大切さを指摘しています。

また、国際的に政治問題化している点についても指摘し「この問題に関しては中国、韓国、台湾などでこの数年間、科学的な問題が政治問題化されたまま放っておかれていて課題が逆輸入されている状況もある」と述べ、近隣諸国に向けた情報発信の必要性を訴えました。』

米上院外交委が中国対抗法案、人権促進や安保で他国支援

https://jp.reuters.com/article/usa-china-senate-idJPKBN2BV2P0

 ※ これは、けっこう重大なでき事だ…。

 ※ なぜなら、「大統領令」で対処している限り、それを「取り消すこと」は、大統領令で可能となる…。

 ※ 現に、バイデン政権は、前トランプ政権下で出された「大統領令」を、随分と取り消し・変更した…。

 ※ しかし、「議会(下院、上院)」での決議となると、それを取り消し・変更するためには、同様に「議会での決議」を要するから、取り消し・変更のハードルは高くなる…。

 ※ 一旦、「法律」として可決されると、「恒久的なもの」の色彩を帯びてくるわけだ…。

 ※ ネットで、そういうことを指摘して、「注目した方がいい」と言っている論を、見た…。

『[ワシントン 9日 ロイター] – 米上院外交委員会の指導者らは8日、中国が世界的に影響力を拡大していることに対抗するため、人権保護促進や安全保障支援などを柱とした超党派による法案を公表した。14日に審議を行う。

米上院外交委員会の指導者らは4月8日、中国が世界的に影響力を拡大していることに対抗するため、人権保護促進や安全保障支援などを柱とした超党派による法案を公表した。写真は米国と中国の旗。北京で1月撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)
「2021年の戦略的競争法」と題した法案は、中国に対抗するための一連の外交的、戦略的対策の権限を付与。議会の両党における中国に対する強硬姿勢を反映している。

中国との経済的な競争だけでなく、ウイグル族などイスラム系少数民族に対する扱いや香港での反政府デモの抑圧、南シナ海での挑発的行為を含む、人道的、民主的価値観を推進する。

法案では「インド太平洋地域における米国の政治的目的を達成するために必要な軍事的投資を優先する」重要性を主張。米議会が連邦予算を中国と対抗するための戦略的責務に「沿ったもの」にする必要があると訴えた。

2022─26年の会計年度に、同地域に軍事援助として計6億5500万ドル、インド太平洋海上安全保障構想と関連プログラムに計4億5000万ドルを拠出するよう推奨している。

また、台湾が「インド太平洋地域における米国の戦略に必須」であり、協力関係を強化する必要があると指摘。米当局が規制なく台湾当局と交流できるようにすべきだとした。中国は台湾を自国の領土と見なしている。

米国は同盟国に対して、中国の「攻撃的で積極的な態度」を抑制するように促すべきだと主張。米政府の各行政組織と機関に、中国との戦略的競争に関する政策を担当する高官を設けることを提唱し、「全ての連邦行政組織と機関は、中国との戦略的競争が米国の外交政策の優先事項であることを反映する構造にしなければならない」とした。

その他、中国の軍事設備を置く国に対する支援を制限するとし、中国の広域経済圏構想「一帯一路」が、中国の安全保障を推進し軍事アクセスを拡大するためのものであると指摘した。

中国外務省の趙立堅報道官は9日の定例会見で、中国は法案に「断固反対」すると発言。米上院議員に中米関係の安定的発展に一層努力するよう求めた。

台湾外交部の報道官は、米上院の台湾支持の姿勢に謝意を示し、法案の行方に注目していくと述べた。

*内容と写真を追加しました。』