ミャンマー問題、大国が混乱助長 遠のく解決

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『 国軍によるクーデター後の混乱が続くミャンマーの情勢をめぐり、中国やロシア、インドなど周辺の大国が国際政治の駆け引き材料に利用する場面が目立ってきた。国際社会の一致した行動が難しくなり、ミャンマーの民主主義の回復など問題の解決を遠ざける可能性がある。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は5日、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国に、ミャンマーに内政干渉しようとする外部の力への注意を促した。国営新華社のインタビューに応じたもので、国軍への制裁を強化する米欧を念頭に「混乱を助長し、分断をあおり、状況をさらに複雑にさせる」と批判した。

中国は香港の民主化の後退や少数民族のウイグル族の人権問題を抱え、米欧の制裁を受けている。ミャンマーへの介入を「内政干渉」と位置づけ、ASEAN内で米欧の批判に同調する動きを封じる思惑があるとみられる。

ミャンマー問題を利用し米国が日本など同盟国と築く対中包囲網にくさびを打つ外交も展開する。王氏は3月末から4月初めにかけてシンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンのASEAN4カ国の外相を個別に招き、ASEANが事態打開に向け開催予定の首脳会議を支持する考えを示した。

インドネシアのルトノ外相は訪中直前、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)のため日本を訪れ、中国の海洋進出を念頭に防衛協力強化を確認した。マレーシアのヒシャムディン外相もブリンケン米国務長官と電話で南シナ海問題などを協議した。

4カ国はいずれも国軍のクーデターに批判的で、静観するタイやベトナムなどと立場が分かれる。首脳会議を前にミャンマー国軍に影響力を持つ中国の後ろ盾を得たことを示し、会議の主導権を握りたい思惑がある。中国は優位な立場を利用して各国を招待し、米国などをけん制したとみられる。

ロシアも米欧のミャンマーへの介入を排除する動きを強める。国連では同じ安全保障理事会の常任理事国の中国と共同歩調をとり法的拘束力のある決議に反対している。ラブロフ外相は3月末、ルトノ氏と電話し、ミャンマー情勢に関してASEANの外交努力を支持する考えを示した。ルトノ氏がツイッターで明らかにした。

中ロはミャンマー国軍が3月末に開いた軍事パレードにも参加した。ロシアが派遣したフォミン国防次官は参加8カ国の出席者の中で最高位だった。日本などはクーデターを追認したとして国際社会の批判を招きかねず、参加を見送っていた。

ロシアとミャンマーは2016年に軍事協力協定を結び、ミャンマーはロシアにとって主要な装備品の輸出国となっている。国際軍事協力担当のフォミン氏の派遣を通じてクーデター後も同国への武器輸出を維持・強化する狙いがある。

一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は軍事パレード参加に関連し「ミャンマーとは長年、建設的な関係を築いている。同国で起こっている悲劇的な出来事の承認を意味しない」と国軍によるデモ弾圧に懸念を示した。タス通信が伝えた。

ロシア政治が専門の防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長は「国軍の武力行使を容認しない立場をとることで、米欧との間で仲介役を果たし、外交的な影響力拡大を図ろうとしている」と指摘する。中東や北朝鮮をめぐる国際社会との駆け引きでもみられるロシア外交の典型例だという。

軍事パレードには民主主義国のインドも参加した。アジア外交に詳しいインドネシア国立パジャジャラン大のトゥク・レザシャ講師はインドの代表派遣は国境問題で対立する中国を意識した可能性が高いと指摘する。

「インドは対中国の文脈でASEANとの関係を強化しており、中国が出席する関連の国際会議などには常に参加しようとしている」(トゥク氏)。インドはミャンマーと1600㌔㍍以上にわたって国境が接し、対立は避けたいのが本音だ。

(ジャカルタ=地曳航也、北京=羽田野主、小川知世) 

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