北アイルランドで住民対立再燃 EU離脱不満、暴動続く

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR08DYE0Y1A400C2000000/

『【ロンドン=中島裕介】英領の北アイルランドで、プロテスタント系住民とカトリック系住民の対立が激しさを増している。一部は暴徒化し、7日には一般道路上でバスが燃やされる事態に発展した。欧州連合(EU)離脱の合意内容への不満が底流にあり、騒動が長引けば英国だけでなく欧州全域を揺さぶる政治リスクとなりかねない。

暴動は2日夜から断続的に続いており、8日も続いた。英国のジョンソン首相は同日、「(主張の)相違…

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英国のジョンソン首相は同日、「(主張の)相違解消は対話でなすべきだ」と暴動を非難した。ジョンソン氏はルイス北アイルランド担当相を現地に派遣し、解決を模索した。

北アイルランドは1960年代後半から98年の和平まで宗派対立や国境を巡る紛争が続いた経緯がある。

7日の暴動では地域の最大都市ベルファストで、カトリック系とプロテスタント系の住民が「平和の壁」とよばれる居住地域を分ける壁越しに衝突し、双方から火炎瓶などが投げ込まれた。市街地では路線バスが暴徒化した住民にハイジャックされ、路上で炎上した。
暴動はEU加盟国アイルランドとの国境にあるロンドンデリーなどでも断続的に起こり、これまでに50人以上の警官がけがを負った。まだ一般住民の重傷者や死者の報告はないものの、英BBCは「ここ数年で最悪の状況」と報じている。

一連の暴動は2日に発生した英国による北アイルランドの統治を望むプロテスタント系のデモから始まった。この勢力は英EUの合意に強い不満を抱えている。

合意では北アイルランドとアイルランドの間の国境復活や通関手続きを避けるため、同じ英国内にもかかわらず英本土から北アイルランドに入る物品の通関検査が必要になった。アイルランド島に国境を設ければ、紛争の再発や地域の不安定化につながるリスクがあるとの判断だ。

だがプロテスタント系住民は英本土との間に貿易上の「国境」が生じていることに強く反発し、一部の勢力は合意の撤回を求めている。この問題では英EU間の対立も深まっており、暴動に拍車をかけている。

南北アイルランドの統一を訴え、かつてテロ行為を手掛けたカトリック系過激派組織アイルランド共和軍(IRA)の元重鎮の葬儀に、カトリック系のシン・フェイン党幹部が参列した件も要因の一つになっているとの指摘もある。

20年6月の葬儀には約2000人が集まったが、これは新型コロナウイルスの行動規制に違反している可能性があった。この件が不起訴になったことも、プロテスタント系の怒りに火をつけたとされる。地域の警察当局はプロテスタント系の準軍事組織が暴動に関与したとみており、両者の衝突がさらに深刻化するリスクもはらんでいる。