[FT]ロシアが「国家インターネット」で米SNSに対抗

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『ロシアの通信監督当局は最近、ツイッターの通信速度を制限し始めた。この動きはシリコンバレーに対するロシア政府の対決姿勢の表れであり、西側ハイテク企業への依存度が低い「ソブリン(国家)インターネット」に向けた新たなインフラを運用するテストになった。

外国のSNS(交流サイト)はロシア最大の反対意見発信の場となっている。服役中の野党活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の支持者が2021年1月、外国SNSを使っ…

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服役中の野党活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の支持者が2021年1月、外国SNSを使って全国規模の抗議デモを組織化した後は、こうしたSNSに対する統制の強化が大統領府にとって一段と喫緊の課題になった。

ロシア政府は、「違法な活動を促した」3168件の投稿を17年までさかのぼって削除しなければツイッターの使用を禁止すると迫った。こうした警告が出されたのは、プーチン大統領が、インターネットが「公式な法的ルールと社会の道徳律に従わない」なら社会は「内側から崩壊する」と語った後のことだ。

通信監督当局は5日、ツイッターが問題となっている投稿1900件を削除したとして、使用禁止の脅しを撤回した。そして同社に法律を完全順守させるために5月半ばまで通信速度の制限を延長すると表明した。

ツイッター側は、ロシア当局と「建設的な会話」を先週交わし、そのなかで「いかなる不法行為目的や違法な活動の推進にツイッターが利用されることを当社は許さないということを改めて主張した」と表明した。同社はインターネットの遮断と公の会話を封じようとする国家主導の取り組みを批判している。
対抗措置にはリスクも

巨大ハイテク企業への対抗措置にはそれなりのリスクが伴う。3月のツイッターの速度制限では、そのドミノ効果で、開始から数時間内にロシアの大統領府や議会のほか、検閲を担う通信監督当局ロスコムナドゾル自体を含む複数の政府機関のウェブサイトが接続不能になり、外国のインターネットインフラへの依存が浮き彫りになった。

国家インターネット(実質的に完全にロシアのサーバーだけで運営されている並行ウェブ)は、巻き添え被害を出すリスクを伴わずに禁止コンテンツへのアクセスを選択的に制限する技術を持つとされる。ロシアの検閲担当者は、18年に通信アプリ「テレグラム」の使用を禁止しようとして悲惨な目に遭った試みから教訓を学んだと話している。当時は禁止措置の影響で1600万以上の無関係なサイトがダウンする一方、なお容易にアクセスできたテレグラムが利用者数を1000万人から3000万人に伸ばした。

ツイッターに対する制限措置は、「ディープ・パケット・インスペクション(DPI)」として知られる技術によって国家インターネットを利用した初の主要ケースだ。理論上、数千もの無関係なサイトに影響を与えずに個別ページをフィルターにかける能力を検閲担当者に与える仕組みだ。

ドイツ外交政策協会(本部ベルリン)のアリョーナ・エピファノワ研究員は「たとえまだ完全にはコントロールできないとしても、インターネットインフラすべてを掌握できたことは、国家にとって一歩前進だ。『このウェブサイトを遮断してもらえますか』と(企業に)求めるような、アドホック(その場しのぎ)なコンテンツ管理だけではない。今では、当局がこうした制御レバーを手にしている」と指摘する。
ロシアのネットサービス大手、メール・ドット・ルーの本社(2019年6月、モスクワ)=ロイター

当初の結果は、システムに不備がある可能性を示唆している。通信速度の制限は、ツイッターが短縮版ウェブアドレスに採用している「t.co」という文字列をドメイン名に使っている複数のウェブサイトにも影響したようだ。

「ツイッターは世界中のコンテンツ配信ネットワーク用にさまざまなサーバーを使っているため、彼ら(ロシア当局)はまだ、ツイッターが使うすべてのサーバーをコントロールできていない」とエピファノワ氏は言う。

ロシア政府が16年に米リンクトインに対して実行したようになSNSの全面禁止をちらつかせても、シリコンバレーの巨大企業はデータのローカリゼーション(現地化)と禁止コンテンツに関するロシアの法律に従ってこなかった。

また、米国のフェイスブックやグーグルは、ロシアが地元ハイテク企業にかけたような圧力に弱くない。ロシアの検索エンジン「ヤンデックス」は、米国を拠点とする投資家が経営権を握ろうとした場合に会社のガバナンス(統治)に対する事実上の拒否権を大統領府に与えた。動画配信プラットフォーム「ivi(イビ)」は、ロシアの議員が同じような考えから娯楽系サイトの外国からの資金調達の制限に動いたのを受けて、新規株式公開の計画を棚上げにしたと報じられている。

ナワリヌイ氏が国営テレビ局より数百万人も多い登録者を誇っているユーチューブなどのプラットフォームで強固な足場を築くことができないため、ロシアの議員は、大統領府寄りのメディアを「差別」するサイトを禁止すると明言している。

「西側のメディアと社会は、まるで我々がすべてをブロックするかのように、非常に政治的バイアスがかかった形でこの問題を描こうとしている。だが、実際には、ここでは我々が被害者なのだ」。ロシア下院の議員で、外国ハイテク企業を規制する包括的法案を準備しているアントン・ゴレルキン氏はインタビューでこう語った。「外国企業はここで働き、何十億も稼ぐが、税金も払わなければ、妥当このうえない我々の要求にも協力しない」
シリコンバレーの屈服を期待

ロシアは新技術に裏付けられた禁止の脅しで、シリコンバレーもついにロシアの法を順守せざるをえなくなると期待している。

ゴレルキン氏は、自身が起草した新法に米アップルが従ったことを引き合いに出す。スマートフォンメーカーに対し、ロシア製アプリ一式をプレインストールすることを義務付ける内容だ。アプリにはグーグルの電子メールやクラウドストレージと競合するヤンデックスのサービスのほか、「ICQ」のような忘れ去られたインスタントメッセンジャーを含む。

「ロシアは競争が非常に激しい市場だ。西側の主要企業がいずれどこかの段階でロシア市場撤退を決めたとしても、何も破滅的なことは起きない。市場はほかのプレーヤーの間で分割されるだろう」

ロシアはヤンデックスの検索エンジンと「Mail.ru(メール・ドット・ルー)」のSNSを擁し、シリコンバレーと競う強力な地元企業を抱えている数少ない国の1つだが、こうした企業は西側に支配され続けている市場において例外的な存在だ。

しかし、もし国家インターネットにより、西側サイトへのアクセスが十分厄介になれば、期待通りの効果を得られるかもしれないと、米プリンストン大学の情報技術政策センター(CITP)の博士研究員、セルゲイ・サノビッチ氏は話す。

「ただし、ロシア政府が尊重する市場原理が1つあり、それは、消費者は常に正しいということだ。この点が彼らをソ連時代の前任者と区別し、むしろ中国人に似せている」

同氏はさらにこう続けた。

「彼らはこの原理を可能な限り最もシニカルな形で解釈している。重要なのは平均的な消費者だけで、それなりに楽しめて、非常にアクセスが容易である限り、こうした消費者は与えられるものを何でも消費する、と考えている」

「情報があふれ返っているために、あるプラットフォームにアクセスする障壁が極めて低ければ、自分たちがコントロールする別のプラットフォームにとって多大な後押しになることを正しく理解している」

By Max Seddon

(2021年4月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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