ワクチン輸出、中国が席巻 外交や経済で攻勢も

ワクチン輸出、中国が席巻 外交や経済で攻勢も
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新型コロナウイルスのワクチン不足が世界的に強まるなか、中国が輸出攻勢をかけている。中国製を承認・契約した国・地域は70に達した。国際往来再開を促す「ワクチンパスポート」でも中国は先手を打つ。自国の調達を最優先する先進国を尻目に、中国が外交・経済の両面で新興・途上国への影響力を一段と強める可能性がある。

中国政府の公式サイトや国連児童基金(ユニセフ)のデータなどをもとに中国製ワクチンの供給先を集計し…

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中国政府の公式サイトや国連児童基金(ユニセフ)のデータなどをもとに中国製ワクチンの供給先を集計したところ、少なくとも70カ国・地域が承認や契約をしたことが分かった。寄付を受けた国・地域は37にのぼる。マスク供給や医師派遣を含めると、中国のコロナ支援は100カ国以上に広がる。広域経済圏構想「一帯一路」沿線だけでなく、中南米の非署名国にも影響力を高めている。

英医療調査会社エアフィニティによると、中国は3月末までに1億1500万回分のワクチンを輸出した。インドはライセンス生産するアストラゼネカ製など6300万回分、英国や日本に輸出する欧州連合(EU)は5800万回分にとどまる。生産量も中国は約2億3千万回分と、米欧やインドを引き離す。

「中国はパンデミック(世界的流行)直後からワクチンに投資してきた」(エアフィニティのラスムス・ベック・ハンセン最高経営責任者=CEO)。中国は先駆けてワクチンの原材料生産を拡大。国内感染者が少なく海外供給を優先できる利点もある。国内では大都市での接種を優先し、人口2100万人超の北京市では900万人が接種した。全国では人口100人あたり8回程度にとどまるものの、輸出への反発は少ない。

高所得国がワクチン確保に躍起となっていることも新興・途上国の中国依存に拍車をかける要因となっている。米デューク大学によると、英米など先進国は接種回数を加味した接種可能人数で人口の2倍以上のワクチンを契約する。EUの契約数は全世界の2割強にあたる10億人分以上に達する。中国製やロシア製が中低所得国の限られた選択肢となった面もある。

ワクチン輸出の遅れで、中国製に乗り換える動きもある。インドは国内供給を優先するため、国内生産するアストラゼネカ製の輸出中断を決めた。インドから供給を受けていたネパールはその後、中国から80万回分の寄付を受けた。EUではハンガリーが中国製を承認。同ワクチンを接種したオルバン首相は「恐れるべきでない」と呼びかけた。

中国製ワクチンには外交カードの側面もちらつく。南米ガイアナは中国の寄付表明を受けた後に台湾と対外事務所開設の合意を破棄。米調査会社ロジウム・グループのアナリスト、マシュー・ミンジー氏は「ワクチン供給を中国だけに頼れば外交リスクを抱えるおそれがある」と語る。

国際往来の再開が待たれるなか、中国は自由な渡航を促す「ワクチンパスポート」の導入でも先手を打つ。接種歴を示す「国際旅行健康証明」の発行や、中国製ワクチンを接種した外国人の入国手続き簡素化を相次ぎ発表。中国製を承認していない先進各国にとって、接種歴を相互承認するかが大きな課題となる。

EUでは欧州医薬品庁(EMA)が審査・勧告したワクチンの接種者に限り、EU規模の移動を認める構え。中国製は審査の段階に入っていない。中国製ワクチンを活用した「ワクチンパスポート」が世界に広がれば昨年春以来、世界でほぼ止まってきたビジネスや観光などの人の往来再開で中国が大きく先行。欧米などはこれに取り残されるおそれもでてくる。

(西野杏菜、北京=川手伊織、ブリュッセル=竹内康雄)

ワクチンパスポート 自由な移動・渡航へ布石

新型コロナウイルスのワクチンの接種歴やPCR検査の結果などを証明するもの。経済の正常化に向けて、国内での行動制限緩和や海外との自由な渡航を促すことを目的に各国で導入や議論が進んでいる。イスラエルではスポーツジムや飲食店の利用時に接種証明の提示が必要で、米ニューヨーク州もイベント中心に運用を始めた。欧州連合(EU)は今夏までに「デジタルグリーン証明書」の導入を目指しており、域内での自由な移動を再開したい考えだ。

国境を越えた自由な往来を目指すためには、接種したワクチンの相互承認が必要となる。中国は世界に先駆けて「国際旅行健康証明」を導入したが、先進国のほとんどで中国
製ワクチンは承認されていない。中国外務省が相互承認に向けた交渉を進めており、自由な渡航ルール作りに先手を打った形だ。

ワクチンパスポートには倫理上の懸念もくすぶる。妊娠やアレルギーなどの何らかの事情でワクチンの接種を控える人や、接種の優先順位が低い若年層への差別につながりかねないとの声も多い。日本は国内での導入は予定していないものの、海外渡航する際に接種証明が求められる場合を想定し、発行を検討している。

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