バイデン政権も「中国への強硬姿勢は正しい」と、脱中国に挑む

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/03/post-95958_1.php

※ バイデン政権の「対中国政策」についての、論考だ…。

※ これからの、世界情勢全体、ひいては、日本国の国家戦略を考える上で、非常に参考になる内容だ…。

※ しかし、何分長い(6ページもある)…。

※ それで、オレがところどころ抽出して、まとめを付けてみた…。

※ そういうものも参考にして、自分で読んで、解析・分析してみてくれ…。

《バイデン政権の政策の切り口》

 大口献金者に報いる⇔前任者ドナルド・トランプの路線を引き継ぐ

 → 前任者の政策を基本的に踏襲するつもり

《これまでの米国の対中国政策》

 1972年、国交樹立以来の外交方針:

  → 第2次大戦後に自国の主導した国際秩序に中国を組み入れる

    とにかく「普通の国」になってもらう

 1978年、鄧小平の改革開放以降の外交方針:

  → 中国を「責任ある利害関係者」とする

    貿易と投資を拡大

 まとめ: アメリカは中国に「関与」する(※ いわゆる、「エンゲージ」政策)

      = 中国が、経済的に成長することに「関与(≒援助)」する

        → そうして、経済的に豊かになれば

         → 徐々に、「民主化」していくだろうと期待した

 《前任のトランプ政権の対中国政策》

  中国との「自由貿易的な政策」の結果

   → 安価な中国製品によって

     → 中西部の工業地帯:大打撃を受ける

      → ・ 関税の大幅引き上げ

        ・中国による米ハイテク産業への投資を制限

        ・中国系有力企業のアメリカ市場及び主要同盟国の市場からの、締め出し

 《冷戦期のソ連よりも、手強いと思われる点》

  ・経済力が、巨大

  ・技術力も、高い

  ・20年後には、「世界最大の経済大国」になる可能性がある

  ・人工知能(AI)から量子コンピューターに至るまでの主要技術セクターで世界をリードする意思を公然と表明している

  ・中国は人民解放軍の拡大・現代化を進め、国防総省によれば、インド太平洋地域では「(アメリカと)ほぼ拮抗する」までになっている。

《バイデン政権の基本大方針》

 ・アメリカは「(中国と)究極の競争をするが、

 ・紛争をやる必要はない」。

 ・「国際社会のルールにのっとる」とも述べ、トランプ流の手法からは距離を置いた。

《バイデン政権の難しい点》

 ・前政権の姿勢を原則として踏襲しつつ、選挙で支持してくれた大口献金者にも配慮しなければならない

 ・民主党支持者には、過去4年間を帳消しにしたい人もいる。彼らは政府が中国の「平和な台頭」を語った日々を懐かしがる。米中で閣僚レベルの懇談会を年2回開くというジョージ・W・ブッシュ政権で始まった米中戦略経済対話のような関係を回復したい。オバマ政権も、その対話路線を継続した。それは共和党も民主党もそろってバラ色のレンズで中国を見つめていた時代だ。

 ・バイデン陣営への大口献金者といえばウォール街、多国籍企業の経営幹部、IT大手、ハリウッドの映画界などだろう。例えば、JPモルガンとバンク・オブ・アメリカでは合計7000人以上が大統領選で寄付をしているが、その8割以上がバイデン支持で、総額20万ドルを超えた。グーグルでは6900人、うち97%がバイデン支持だった。アマゾンは1万人で80%、ディズニーは4100人で84%という具合だ。

《大口献金者及びその思惑》

  ・ ウォール街

  ・ 多国籍企業の経営幹部

  ・ IT大手

  ・ ハリウッドの映画界

   → これらの業界は、みんな「巨大な中国市場」の恩恵を受ける立場にある…。

     「 米中で閣僚レベルの懇談会を年2回開くというジョージ・W・ブッシュ政権で始まった米中戦略経済対話のような関係を回復したい」と思っている…。

『以前から中国進出に強い関心を抱いてきた各社は、「究極の競争」なるものがどう定義されるかに注目している。「誰も穏和な戦略的関与の時期に戻れるなんて甘いことは考えていない」と指摘するのはランド研究所の東アジアを専門とする政治学者スコット・ハロルドだ。「しかしトランプよりは対決的でなくなるよう、圧力が確かにかかる」』

 ということで、

 ・ 「トランプよりは対決的でなくなるよう、圧力が確かにかか」り続けると予想される…。

《トランプ政権末期の置きみやげの問題》

 その1:ウイグル問題は、「ジェノサイド」に該当するのか

『トランプ政権は末期に厄介な問題の火に油を注いだ。バイデンの就任前日の1月19日、当時のマイク・ポンペオ国務長官は中国のウイグル人弾圧を「ジェノサイド(集団虐殺)と人道に対する罪」と断言している。』

『これで米中関係は天安門事件以来で最悪の事態となった。バイデンの外交チームを支えるジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、カート・キャンベル国家安全保障委員会(NSC)インド太平洋調整官、および国務長官のブリンケンは、あのタイミングでのポンペオの発言に激怒したと伝えられる。』

『ウイグル人の強制収容が国際法上のジェノサイドに相当するか否かについては、国際社会でも意見が割れている。バイデン政権は独自の判断を下すつもりでいたが、ポンペオに先を越された。これをすぐにひっくり返せば、中国に対し「弱腰」だと非難されかねない。それでブリンケンは就任早々、やむなくポンペオ発言に同意する旨を述べた。』

『その発言は民主党の主要な支持層の一部で微妙な反応を招いた。数十年前から親中国の企業各社は歴代の米政権に対して、人権問題を棚上げするようにとロビー活動を続けてきた。人権に敏感なオバマ政権になっても、当時のヒラリー・クリントン国務長官は、中国との緊急性の高い問題を考慮するに当たって「人権問題が障害となることはない」と公言していた。

だが時代は変わった。あるウォール街の大手投資銀行のロビイストは本誌にこう語った。「(バイデンが)どの程度まで人権を重視するつもりかは不明だが、以前より重く見るだろうということは誰の目にも明らかになってきた」。ちなみにサリバンやブリンケン、キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表など、対中政策の要となる人物の多くはオバマ政権でも働いた経験がある。

あのポンペオ発言を撤回しない限り、バイデン政権は「ジェノサイド」という語に縛られる。ウォール街のあるロビイストは匿名を条件にこう言った。「他国の政府を『ジェノサイド』で告発した以上、何もしないではいられない。追加の経済制裁を科すのか? それでも中国の報復はないと思うのか? それではトランプ時代と同じではないか?」』

 ・「ジェノサイド」と認定するかどうかは、「微妙な」「機微に触れる」問題…。

 ・実は、米国内でも、「固まっている」わけではない状態…。

 ・バイデン政権は、「弱腰」批判を恐れて、一応、前政権の方針を引き継ぐ姿勢は見せた…。

 ・しかし、大口献金者陣営は、「数十年前から」 人権問題を棚上げするようにとロビー活動を続けてきたし、これからも続けるだろう…。

(※ ここは、日本の国家戦略にとっても重要…。

下手に「ジェノサイド認定」に乗っかると、梯子を外される危険がある…。外されないまでも、微妙に「人権棚上げの方向に、修正される」危険が常にある…。)

『新型コロナウイルスはどこから来たかという問題も、トランプ政権の残した厄介な置き土産の1つだ。ポンペオはやはり退任間際に、あれが武漢ウイルス研究所から流出した可能性に改めて言及し、19年秋の段階で同研究所職員の数名がよく似た症状を示していたと語っている。

WHO(世界保健機関)の調査団が武漢に入ったのは今年1月14日のこと。周知のとおり、トランプはWHOの「中国びいき」に反発して脱退を通告したが、バイデンは就任直後に脱退を撤回している。アメリカが国際機関に復帰する姿勢を示す象徴的な動きの1つだった。

ところがその後、WHOは醜態をさらし、バイデン政権を困らせた。WHOの調査団は重要なデータを目にすることもできずに「調査」を終え、ウイルスが武漢研究所から流出した可能性を否定し、一方で輸入品の冷凍食品を介してウイルスが輸入された可能性も否定した。

WHOの拙速な調査と、その後の記者会見は大失敗だった。サリバンは、バイデン政権がWHOの結論を疑問視しており、感染発生の経緯に関するさらなるデータの提供を中国側に求めるとの声明を出した。これではポンペオ時代と変わらない。バイデン自身も、WHOの調査について問われた時は素っ気なく「必要なのは事実だ」と答えている。』

 《その2:新型コロナウイルスは、どこから来たのか問題》

 ・WHOの発表は、合理性を欠いており、この問題に決着がついたとは言えない。

 ・そうだとすると、何らかの「手打ち」を行うことの、「妨げ」であり続ける…。

『今はこの2つの論争の陰に隠れているが、もっと深刻な問題がある。まずは中国とのデカップリング(経済関係の切り離し)をどこまで続けるかという問題だ。

トランプは在任中、経済面の中国離れを進めていた。新型コロナの流行をきっかけに、マスクのような個人用防護具を中国で製造せず、国内生産に戻すよう(3M社などの)米企業に要求した。だが多国籍企業を中国から引き離す取り組みはほとんど実を結ばず、効果もなかった。

厳しい対中姿勢を維持

連邦議会は19年に、中国製の機器やソフトウエアを調達網から排除するようアメリカの軍事・通信会社に求める法律を成立させた。しかし中国製機器の除外は政府の想定した以上に困難で、思惑どおりには進んでいない。また、中国排除はさまざまな重要産業に損失をもたらす。米コンサルティング会社ローディアム・グループの最近の調査では、中国市場を失えば、アメリカの半導体産業の年間売り上げは少なくとも540億ドルも減少すると推定されている。』

『多くの企業は、中国におけるサプライチェーンの構築に何年も費やしており、それを放棄することにはかなりの抵抗感がある。匿名で取材に応じた通信業界のある幹部は、「これらの中国製部品や機器がアメリカの企業にどこまで浸透しているかを十分に理解できるほど事態を観察していた人はいない」とぼやく。

多国籍企業の間には、民主党政権による路線修正に期待する向きもあるが、それは甘い。バイデンは2月24日に、半導体や高性能充電池などを含む基幹産業におけるサプライチェーンの見直しを求める大統領令に署名している。その発表に当たり、日本や韓国と足並みをそろえ、調達先を中国以外の国へ移すよう関連企業を説得すると述べている。

中国からのデカップリングに関して、トランプ政権が同盟国に協力を求めたことはない。だがバイデン政権が協力を求めれば、日韓両国の政府は応じる。しかし両国の産業界が応じる保証はない。両国経済はアメリカ以上に、中国市場と密接に絡み合っているからだ。米企業の撤退は外国のライバル企業を利するだけだとの指摘もある。しかし少なくとも今のところ、バイデン政権が米企業への圧力を緩める兆しはない。

トランプが課した2500億ドル相当の中国製品に対する追加関税も、当面は維持される。トランプは20年1月に中国政府と包括的な貿易協定の第1段階に合意し、中国が米国産品の輸入を増やすという条件で、関税引き下げか撤廃を約束した。あれから1年、アメリカの対中輸出が目立って増えた証拠はない。バイデン政権は中国に合意を遵守させる方法を検討中で、関税の撤廃は議題にも上らない。「何の見返りもなしで関税撤廃はできない」と、前出のNSC高官は言っていた。』

《さらなる難題》

 難題(その1):

  ・中国との「デカップリング」(経済関係の切り離し)をどこまで続けるか

   ・マスクのような個人用防護具

   ・中国製の機器やソフトウエア

   ・中国製部品や機器

   → 半導体や高性能充電池などを含む基幹産業におけるサプライチェーンの見直しを求める

 難題(その2):

  ・死活的に重要なのは国防・安全保障政策の見直し

 ・中国はアメリカを西太平洋から追い出し、南シナ海を実力で支配しようとしている

 ・アジア太平洋地域に配置する兵力を増やさねばならない

 ・中国の軍事力に対抗する技術(極超音速ミサイルを撃ち落とす防衛システムなど)への投資も増やす必要がある

 ・トランプはその両方を議会に求めたが、実際にはどちらも実現しなかった。

 ・新型コロナ対策で巨額の支出を迫られるなか、アメリカの財政赤字が空前のレベルに達するのは必至だ。

 ・事情通の関係者によると、国防当局が恐れているのは、今後2、3年にわたって予算削減の圧力がかかる事態だ。

 ・この関係者は冗談めかして、バイデンによる「アジアへの旋回(ピボット)」も(オバマ時代と同様)掛け声倒れに終わるのではないかと心配していると語った。

 ・オバマの「ピボット」は大々的に宣伝されたが、結局アジアに再配置された部隊はほんの一握りだった(しかもその大部分はオーストラリアに派遣された)。

(※ ここら辺も、日本の国家戦略に関係してくるだろう…。

 誰が考えても、政策の方向性は、「同盟国」、しかも「最も利害関係を有する国家」の安全保障関係予算の増大を「要請」する…、というものになる他ないだろう…。

 トランプ政権下で、NATO諸国が「GDPの2%までの支出」を迫られたことが、想起される…。)

『2021年3月31日(水)19時30分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

<バイデンを支持する業界は米中関係の改善に期待するが、政権内には早くもトランプ路線を踏襲する兆候が>

民主党の政権奪還に貢献してくれた大口献金者に報いるべきか、それとも前任者ドナルド・トランプの路線を引き継ぐべきか。そんな選択を迫られたら、ジョー・バイデン新米大統領はどう出るか。答えは明白……と言いたいところだが、さにあらず。少なくとも外交上の最重要課題である対中政策に関して、バイデンは前任者の政策を基本的に踏襲するつもりのようだ。

新国務長官のアントニー・ブリンケンは1月に行われた上院外交委員会の指名承認公聴会で、「中国に対して強硬姿勢を取った点では、トランプ大統領は正しかったと考える」と明言した。衝撃的な発言だが、彼はすぐにこう付け加えた。「トランプが多くの分野で採用した手法には全く同意できないが、原理原則は正しかったし、わが国の外交政策に有益だったと私は思っている」

この4年間でアメリカの外交政策が大きく転換したのは事実であり、それを牽引したのがトランプであることも事実だ。

1972年にリチャード・ニクソン大統領(当時)が中国との外交関係を樹立して以来、アメリカは一貫して、第2次大戦後に自国の主導した国際秩序に中国を組み入れ、とにかく「普通の国」になってもらうことを目指してきた。中国の最高実力者だった鄧小平が78年に中国経済の開放に舵を切ると、アメリカは中国を(元国務副長官ロバート・ゼーリックの言葉を借りるなら)「責任ある利害関係者」としたい一心で、貿易と投資を拡大してきた。

そうしてロナルド・レーガンからバラク・オバマまで、歴代政権は実質的に同じ路線を歩んできた。アメリカは中国に「関与」する。それが基本で、その要が経済だった。

そこへ登場したのがトランプだ。アメリカ中西部の工業地帯が中国からの安価な輸入品によって大打撃を受けていたことも追い風となって大統領選に勝利したトランプは、中国が「わが国の雇用を奪う」ことはもう許さないと宣言した。そして外交関係者や多国籍企業の願いもむなしく、中国政府との自由貿易という現状をぶち壊し、中国からの輸入品への関税を大幅に引き上げ、中国による米ハイテク産業への投資を制限し、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)などの中国系有力企業を国内市場だけでなく、主要な同盟国の市場からも締め出そうとした。

バイデンを支持する多くの業界は今、時計の針をトランプ政権前に戻したいと願っている。ウォール街もシリコンバレーもハリウッドも、拡大を続ける巨大な中国市場と縁を切りたくはない。だが現時点で、彼らの祈りが通じる可能性は高くない。

かつてのソ連よりずっと難敵

ブリンケンは指名承認公聴会で、中国との関係を「今世紀で最大の外交上の難題」だと率直に認めた。ではブリンケンは、そしてバイデン政権はその難題にどう取り組んでいくつもりなのだろうか。』

『政権内外の多くの関係者への取材で明らかになったのは、現時点では決まっていないという事実だ。ある国防総省高官の言葉を借りれば、まだ「この作業は進行中」なのだ。

無理もない。今の中国に立ち向かうことを考えれば、旧ソ連と対峙した冷戦などは楽なものだったと思えてくる。中国の経済力は当時のソ連とは比較にならないほど巨大だし、技術力も高い。EUは昨年12月、バイデン政権移行チームの制止を振り切って、中国政府との投資協定の大筋合意を取りまとめた。なぜなら中国はあと20年もすれば世界最大の経済大国となるだろうし、人工知能(AI)から量子コンピューターに至るまでの主要技術セクターで世界をリードする意思を公然と表明しているからだ。

一方で中国は人民解放軍の拡大・現代化を進め、国防総省によれば、インド太平洋地域では「(アメリカと)ほぼ拮抗する」までになっている。冷戦絶頂期のソ連に比べると中国の持つ核弾頭数ははるかに少なく、核の脅威はそれほど深刻ではないだろう。だが経済的に成功し、技術面でも優れ、世界制覇の野心を抱いている中国はかつてのソ連以上に手ごわい相手だ。

国防総省は既に、アメリカが軍事力で中国の後塵を拝する事態を懸念している。前統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォードは在任時、議会で「軌道修正しなければ、あと数年で中国に対するわが国の優位性は質的にも量的にも失われる」と述べた。オバマ政権で国防次官を務めたミシェル・フロノイも、「米軍がまだ備えていない新しい技術や能力に多額の投資を行っていく必要がある」と指摘している。

極超音速ミサイルに対する防衛網(もしも台湾をめぐる紛争が起きれば死活的に重要だ)の構築や、AI兵器の戦闘能力をどこまで向上させるかなど、問題は多々ある。上院軍事委員会のスタッフディレクターを務めた軍事評論家クリスチャン・ブローズによれば、これからのインテリジェント・マシン(AIなどの技術を搭載した機械)には戦場での敵味方識別能力を含め、殺人以外のほとんどの行為が求められる。

バイデン自身の言を借りれば、アメリカは「(中国と)究極の競争をするが、紛争をやる必要はない」。バイデンは「国際社会のルールにのっとる」とも述べ、トランプ流の手法からは距離を置いた。しかし新大統領は、こと対中政策に関しては難しい立場にある。前政権の姿勢を原則として踏襲しつつ、選挙で支持してくれた大口献金者にも配慮しなければならないからだ。

民主党支持者には、過去4年間を帳消しにしたい人もいる。彼らは政府が中国の「平和な台頭」を語った日々を懐かしがる。米中で閣僚レベルの懇談会を年2回開くというジョージ・W・ブッシュ政権で始まった米中戦略経済対話のような関係を回復したい。オバマ政権も、その対話路線を継続した。それは共和党も民主党もそろってバラ色のレンズで中国を見つめていた時代だ。

民意に応える政権運営とは

バイデン陣営への大口献金者といえばウォール街、多国籍企業の経営幹部、IT大手、ハリウッドの映画界などだろう。例えば、JPモルガンとバンク・オブ・アメリカでは合計7000人以上が大統領選で寄付をしているが、その8割以上がバイデン支持で、総額20万ドルを超えた。グーグルでは6900人、うち97%がバイデン支持だった。アマゾンは1万人で80%、ディズニーは4100人で84%という具合だ。』

『「民意を反映する政治センター」によると、テレビ、音楽、映画業界はバイデン陣営に合計1900万ドルを寄付したが、トランプ陣営への献金は1000万ドルにとどまったという。

以前から中国進出に強い関心を抱いてきた各社は、「究極の競争」なるものがどう定義されるかに注目している。「誰も穏和な戦略的関与の時期に戻れるなんて甘いことは考えていない」と指摘するのはランド研究所の東アジアを専門とする政治学者スコット・ハロルドだ。「しかしトランプよりは対決的でなくなるよう、圧力が確かにかかる」

調整努力は容易でないということは既に明白だ。トランプ政権は末期に厄介な問題の火に油を注いだ。バイデンの就任前日の1月19日、当時のマイク・ポンペオ国務長官は中国のウイグル人弾圧を「ジェノサイド(集団虐殺)と人道に対する罪」と断言している。

、2017年に北京で歓迎セレモニーに参加するトランプと習近平 THOMAS PETERーREUTERS

これで米中関係は天安門事件以来で最悪の事態となった。バイデンの外交チームを支えるジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、カート・キャンベル国家安全保障委員会(NSC)インド太平洋調整官、および国務長官のブリンケンは、あのタイミングでのポンペオの発言に激怒したと伝えられる。

ウイグル人の強制収容が国際法上のジェノサイドに相当するか否かについては、国際社会でも意見が割れている。バイデン政権は独自の判断を下すつもりでいたが、ポンペオに先を越された。これをすぐにひっくり返せば、中国に対し「弱腰」だと非難されかねない。それでブリンケンは就任早々、やむなくポンペオ発言に同意する旨を述べた。

脱中国化のハードルは高い

その発言は民主党の主要な支持層の一部で微妙な反応を招いた。数十年前から親中国の企業各社は歴代の米政権に対して、人権問題を棚上げするようにとロビー活動を続けてきた。人権に敏感なオバマ政権になっても、当時のヒラリー・クリントン国務長官は、中国との緊急性の高い問題を考慮するに当たって「人権問題が障害となることはない」と公言していた。

だが時代は変わった。あるウォール街の大手投資銀行のロビイストは本誌にこう語った。「(バイデンが)どの程度まで人権を重視するつもりかは不明だが、以前より重く見るだろうということは誰の目にも明らかになってきた」。ちなみにサリバンやブリンケン、キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表など、対中政策の要となる人物の多くはオバマ政権でも働いた経験がある。

あのポンペオ発言を撤回しない限り、バイデン政権は「ジェノサイド」という語に縛られる。ウォール街のあるロビイストは匿名を条件にこう言った。「他国の政府を『ジェノサイド』で告発した以上、何もしないではいられない。追加の経済制裁を科すのか? それでも中国の報復はないと思うのか? それではトランプ時代と同じではないか?」』

『この疑問をぶつけると、バイデン政権のNSC高官は言ったものだ。「そんなことは全て、こちらも考慮に入れている」と。

新型コロナウイルスはどこから来たかという問題も、トランプ政権の残した厄介な置き土産の1つだ。ポンペオはやはり退任間際に、あれが武漢ウイルス研究所から流出した可能性に改めて言及し、19年秋の段階で同研究所職員の数名がよく似た症状を示していたと語っている。

WHO(世界保健機関)の調査団が武漢に入ったのは今年1月14日のこと。周知のとおり、トランプはWHOの「中国びいき」に反発して脱退を通告したが、バイデンは就任直後に脱退を撤回している。アメリカが国際機関に復帰する姿勢を示す象徴的な動きの1つだった。

ところがその後、WHOは醜態をさらし、バイデン政権を困らせた。WHOの調査団は重要なデータを目にすることもできずに「調査」を終え、ウイルスが武漢研究所から流出した可能性を否定し、一方で輸入品の冷凍食品を介してウイルスが輸入された可能性も否定した。

WHOの拙速な調査と、その後の記者会見は大失敗だった。サリバンは、バイデン政権がWHOの結論を疑問視しており、感染発生の経緯に関するさらなるデータの提供を中国側に求めるとの声明を出した。これではポンペオ時代と変わらない。バイデン自身も、WHOの調査について問われた時は素っ気なく「必要なのは事実だ」と答えている。

今はこの2つの論争の陰に隠れているが、もっと深刻な問題がある。まずは中国とのデカップリング(経済関係の切り離し)をどこまで続けるかという問題だ。

トランプは在任中、経済面の中国離れを進めていた。新型コロナの流行をきっかけに、マスクのような個人用防護具を中国で製造せず、国内生産に戻すよう(3M社などの)米企業に要求した。だが多国籍企業を中国から引き離す取り組みはほとんど実を結ばず、効果もなかった。

厳しい対中姿勢を維持

連邦議会は19年に、中国製の機器やソフトウエアを調達網から排除するようアメリカの軍事・通信会社に求める法律を成立させた。しかし中国製機器の除外は政府の想定した以上に困難で、思惑どおりには進んでいない。また、中国排除はさまざまな重要産業に損失をもたらす。米コンサルティング会社ローディアム・グループの最近の調査では、中国市場を失えば、アメリカの半導体産業の年間売り上げは少なくとも540億ドルも減少すると推定されている。』

『多くの企業は、中国におけるサプライチェーンの構築に何年も費やしており、それを放棄することにはかなりの抵抗感がある。匿名で取材に応じた通信業界のある幹部は、「これらの中国製部品や機器がアメリカの企業にどこまで浸透しているかを十分に理解できるほど事態を観察していた人はいない」とぼやく。

多国籍企業の間には、民主党政権による路線修正に期待する向きもあるが、それは甘い。バイデンは2月24日に、半導体や高性能充電池などを含む基幹産業におけるサプライチェーンの見直しを求める大統領令に署名している。その発表に当たり、日本や韓国と足並みをそろえ、調達先を中国以外の国へ移すよう関連企業を説得すると述べている。

中国からのデカップリングに関して、トランプ政権が同盟国に協力を求めたことはない。だがバイデン政権が協力を求めれば、日韓両国の政府は応じる。しかし両国の産業界が応じる保証はない。両国経済はアメリカ以上に、中国市場と密接に絡み合っているからだ。米企業の撤退は外国のライバル企業を利するだけだとの指摘もある。しかし少なくとも今のところ、バイデン政権が米企業への圧力を緩める兆しはない。

トランプが課した2500億ドル相当の中国製品に対する追加関税も、当面は維持される。トランプは20年1月に中国政府と包括的な貿易協定の第1段階に合意し、中国が米国産品の輸入を増やすという条件で、関税引き下げか撤廃を約束した。あれから1年、アメリカの対中輸出が目立って増えた証拠はない。バイデン政権は中国に合意を遵守させる方法を検討中で、関税の撤廃は議題にも上らない。「何の見返りもなしで関税撤廃はできない」と、前出のNSC高官は言っていた。

もう1つ、バイデン政権の中国政策で死活的に重要なのは国防・安全保障政策の見直しだが、現時点で目新しい展開はない。

軍人出身のロイド・オースティン国防長官は、バイデン政権も前政権と同様に、中国をアメリカにとって軍事的・地政学的に最大の脅威と見なす方向だと語っている。中国はアメリカを西太平洋から追い出し、南シナ海を実力で支配しようとしているという前政権の見方を、バイデン政権も共有しているようだ。

中国軍による台湾侵攻を未然に防ぐため、この地域に十分な戦闘力と人員を配置しておくこともアメリカ政府の既定方針だ。匿名を条件に取材に応じたホワイトハウスのある関係者も、先日バイデンが中国の習近平(シー・チンピン)国家主席と2時間にわたる電話会談を行った際、「台湾問題にかなりの時間を費やしており、台湾が本当の火種であることを大統領はよく理解している」と述べている。

そうであれば、アジア太平洋地域に配置する兵力を増やさねばならないし、中国の軍事力に対抗する技術(極超音速ミサイルを撃ち落とす防衛システムなど)への投資も増やす必要がある。トランプはその両方を議会に求めたが、実際にはどちらも実現しなかった。』

『新大統領も頭が痛い。新型コロナ対策で巨額の支出を迫られるなか、アメリカの財政赤字が空前のレベルに達するのは必至だ。事情通の関係者によると、国防当局が恐れているのは、今後2、3年にわたって予算削減の圧力がかかる事態だ。この関係者は冗談めかして、バイデンによる「アジアへの旋回(ピボット)」も(オバマ時代と同様)掛け声倒れに終わるのではないかと心配していると語った。オバマの「ピボット」は大々的に宣伝されたが、結局アジアに再配置された部隊はほんの一握りだった(しかもその大部分はオーストラリアに派遣された)。

どうやら、トランプ政権の中国に対する厳しい姿勢は正しかったというブリンケンの発言は本気だったらしい。貿易面でも軍事面でも、バイデンのアプローチは今のところ前政権と変わりない。

気候変動問題への協力の代償として、中国が何を求めてくるかは未知数だ JASON LEEーREUTERS

中国政策を見定めるシグナル

テクニカルな問題を別にすれば、新政権がトランプ政権と異なる点は2つ。まずは中国と貿易面で対峙する上でも軍事面で有効な抑止力を維持する上でも、同盟諸国との協力を重視すること。もう1つは、他のあらゆる分野で関係が緊張していても、気候変動に関しては中国との協力を進めるという点だ。

世界で最も多くの二酸化炭素を排出している中国を口説き落とすという目標は悪くない。しかし、中国が説得に応じると信ずる根拠は何もない。気候変動問題担当大統領特使のジョン・ケリーは、世界はこの問題でアメリカがリーダーシップを発揮することを渇望していると述べた。しかし実際のところ、中国は気候変動に関するアメリカの「リーダーシップ」など少しも期待していない。

だが民主党内では、この問題が非常に重要な意味を持っている。バイデンは支持者を満足させるために、カナダの油田と米メキシコ湾岸の製油所を結ぶキーストーンXLパイプラインの建設認可を取り消し、労働組合員の怒りを買うこともいとわなかった。それを考えると、中国はこの問題を利用して欲しいものを手に入れようとするかもしれない。あちこちで排出量の削減を約束したり、「グリーン」エネルギーの研究プロジェクトに加わる代わりに、関税の撤廃や経済戦争の段階的緩和を求めてくる可能性も否定できない。

では、バイデンの中国政策を見定める重要なシグナルは何か? まずは、中国がアメリカ製品やサービスの輸入を増やさなかった場合に、トランプ時代の高関税を無期限に維持するかどうか。また現在進行中の国防計画見直しによってアメリカの東アジアにおける兵力の配置等がどのように変化するか。脱退したTPP(環太平洋経済連携協定)への復帰を試みるかどうかも焦点となる。

こと中国に関する限り、バイデンは夢を追うよりも現実を直視する覚悟だ。たとえ、その現実がトランプ色に染まっているとしても。

【関連記事】
バイデンが中国とロシアにケンカ外交をふっかけた理由
中国は「第三次大戦を準備している」 』