中国企業封じ込め、逆効果 ウィリアム・ブラットン氏

中国企業封じ込め、逆効果 ウィリアム・ブラットン氏
元HSBCアジア太平洋株式調査責任者
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH296KW0Z20C21A3000000/

『欧米の通信機器メーカーなどは2000年代の初めごろ、中国大手の華為技術(ファーウェイ)を軽んじ、慢心しているようにみえた。欧米企業は、自社の卓越した技術により何十年も優位性を維持できるととらえていたが、致命的な誤りだった。欧米はいまになって必死にファーウェイの影響力を抑えようとしているが、中国の技術力を過小評価するとどうなるかという一つの答えだろう。

欧米勢は様々な業界で、中国市場へのアクセスを確…

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欧米勢は様々な業界で、中国市場へのアクセスを確保する代償として(技術移転などにより)技術的優位性を手放した。結果として、競争力のある中国のライバル企業を育成することになった。欧米が対中国で、圧倒的な優位性を維持する産業は急速に減っている。

半導体や医薬品、ロボット、ジェットエンジンなどの分野で中国が相対的に弱いことが、欧米の知識の蓄積に太刀打ちできない証拠とされてきた。だが欧米が明確な優位性を誇れる産業が少なくなっているのは、中国がどれほど急速な進歩を遂げてきたかを示す。

中国の産業はいま、技術革新の最先端にあるといえる。例えばフィンテックについて、欧米の銀行は技術面などで中国に後れをとり、苦戦を強いられるとの声がある。中国の技術は人工知能(AI)や量子コンピューターから電気自動車(EV)、電子商取引まで欧米と比べて遜色がないか、勝っているものもあるようだ。

欧米勢がリードしている産業に関しても、優位性がどの程度なのかはっきりしない。議論の余地はあるものの、中国が、欧米と同水準に達することはないと考えるのは無謀だ。欧米が、中国の技術開発への熱意や能力を恒久的に制限できるという考え方は、誤っている。

宇宙開発計画をみてみよう。米国は、米航空宇宙局(NASA)と中国側の協力関係を厳しく制限しているようだ。だが中国の宇宙開発は前進している。中国は火星に探査機を着陸させ、独自の宇宙ステーションを完成させる計画を示す。米国の宇宙開発での主導的地位に対する脅威となる。

経営資源と技術支援の観点から言えば、技術革新は規模が大きいほうが恩恵を受ける。欧米企業の中国での収益機会を失わせる制限を課せば、規模のメリットは中国へと傾く恐れがある。国内総生産(GDP)世界2位の中国が米国を抜いて世界最大の経済大国となり、長期にわたって欧米諸国よりも高い成長率を維持すれば、優位性はますます高まるだろう。

中国は欧米からの制限の動きを受け、技術的な独立性と優位性を確保する必要があるという信念をさらに強くすると予想される。中国は従来の国際的な基準や枠組みから逸脱し、中国と西側の技術の分離は加速するだろう。中国の技術的な台頭を抑えようとする欧米の試みは、かえって中国が優位性を確保するのを早めてしまう。

(バイデン米政権が続けるファーウェイの事実上の禁輸措置のような)中国の技術革新を封じ込めようとする努力は、長期的には成功しそうにない。短期的には有効かもしれないが、資源や人材、能力、決意を考えれば中国が軌道を外れることはないだろう。世界的な技術の分離を加速させる西側の行動は、他のアジア諸国にとっては大きな問題となり、欧米と中国のどちらかを選ぶことを余儀なくされる可能性がある。選択は地政学的、経済的にも重大な意味を持つことになる。

関連英文はNikkei Asiaサイト(https://s.nikkei.com/3ff9gP2)に

続く東アジア式技術革新

中国の自由を欠いた政治経済体制の下では、既存概念を覆す独創的な新技術は生まれにくいかもしれないが、国外で開発された技術を応用することは可能だ。中国は軍事、宇宙産業をロシアの技術を継承し発展させた。モバイル決済などネット産業では米国の新技術やビジネスモデルを参考に、中国社会に合うように改良を重ね、産業化を加速させた。

イノベーション(技術革新)は新技術の開発が重要だが、どのように新技術を自国産業に応用するかも問われる。日本は欧米で開発された製品を改良し、生産方法を改善することで成長してきており、中国も似た道を歩む。科学や経営の情報が行き交う時代に技術移転を遮るのは不可能に近い。東アジア式イノベーションが続くのを前提に中国企業と向かい合うべきだろう。(編集委員 村山宏)