温暖化ガス、30年目標のハードル高く 4割超の削減必要

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『脱炭素に向けた議論が日本でも本格的に動き出した。2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするためには、30年時点で40%を大きく超える削減目標が必要だ。達成には、再生可能エネルギーの拡大や排出量取引制度の導入、技術投資などを急ぐ必要がある。

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31日に首相官邸で初会合を開いた政府の有識者会合の最大の焦点は「NDC」と呼ばれる30年の国別削減目標だ。日本の現時点の30年目標は13年度比で26%減とな…

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日本の現時点の30年目標は13年度比で26%減となる。50年に、森林による吸収分などと相殺して実質的な排出量を実質ゼロにするには、30年時点で4割を超す削減幅が必要だ。

パリ協定では気候変動の影響を抑えるため、気温上昇を1.5度以内に抑える目標を掲げる。国連はそのためには50年時点の脱炭素だけでなく、世界の温暖化ガス排出量を30年に10年比で45%減にする必要があるとした。

先進国として多くの温暖化ガスを既に排出してきた日本は、さらなる対策が求められるため、世界の研究者による組織「クライメート・アクション・トラッカー」は、日本は13年比60%以上の削減が必要とした。

削減には再生エネの大幅な拡大が欠かせない。現状での国の30年時点の導入目標は約2割だ。太陽光発電の拡大によって、20年時点でほぼ達成しているものの、4割を超える英独から見劣りする。経済同友会は30年に40%、再生エネ導入に積極的な大手企業が集まる日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は約50%を目指すべきだと指摘している。

経済同友会は「日本はさらに再生エネを導入する潜在能力がある」と主張する。世界で製造過程における再生エネの使用を求める企業は増えている。JCLPなどは現状の日本では再生エネの電源を調達することは困難で、将来的にサプライチェーン(供給網)から除外されかねないとして大幅な拡大を求めた。

足かせになっているのは送配電網だ。再生エネに関する政府の会合では、中小の業者が送配電網につなぐ際に高額の費用を大手電力から求められるケースなどが相次いでいると報告された。太陽光発電などの高コスト構造の温床といわれる仕組みを変えるため、国は規制やルールを見直し、大量導入を促さなければならない。

技術開発も欠かせない。ビルの壁面や自動車の屋根など立地の制約を受けない新型の太陽電池の早期の商用化には支援がいる。水素や二酸化炭素を回収・利用(CCU)の技術の研究開発も継続して必要だ。再エネと蓄電池と組み合わせ、電力を有効活用するネットワークの構築もカギだ。

欧米は脱炭素の開発投資に積極的だ。米バイデン政権は4年間で2兆ドル(約200兆円)、欧州連合(EU)も10年間で官民合計で1兆ユーロ(約120兆円)の目標を掲げた。日本も2兆円の基金を立ち上げるが金額では見劣りする印象も否めない。

名古屋大の天野浩教授らによると日本の脱炭素には50年までに計165兆円の投資が必要という。世界で約3000兆円に上るというESG投資や国内企業の現預金約240兆円の誘導が不可欠だ。

炭素排出に価格付けを行うカーボンプライシングの導入も有効な手段だ。すでに本格的に導入した欧州では温暖化ガスの削減に実効性が上がっている。欧州委員会によると、EU域内排出量取引制度の対象となるすべての事業者の温暖化ガス排出量が、19年は18年と比較して8.7%減ったという。社会の変革に有用な手段であることは証明されている。

環境政策に詳しい早稲田大学の大塚直教授は「カーボンプライシングはすぐにでもやらないといけない。消費行動や企業の技術開発など、社会を脱炭素の方向に動かす推進力になる」と語る。

国際協調も重要だ。脱炭素は途上国にも大きな負担になる。温暖化ガス削減の国際枠組みである「パリ協定」は先進国、途上国の区別なく削減を求めている。しかしインドなど今後、排出の大幅増が見込まれる途上国、新興国への技術支援も日本など先進国には必須となる。国内企業の競争力の向上につなげるための国の支援も欠かせない。官邸主導の30年に向けた野心的な施策が期待される。

(気候変動エディター 塙和也)

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慎泰俊
五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
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ひとこと解説 すべての温室効果ガスをCO2換算すると、世界の排出量は年間500億トンで、その内訳は製造業が31%(特に鋼鉄やセメントなど)、27%が電力、27%が農業(特に肥料)や畜産業(特に牛)、16%が輸送・移動、7%が冷暖房となっています。

電力を自然エネルギーか原子力に変え自動車をすべてEVにすれば相当なインパクトは出ますが、他の領域でのイノベーションも必須だと思います。CO2排出量がネットでプラスである限り、気候変動は速度の違いはあれ進むからです。EV同様、脱CO2化は往々にして産業構造そのものの変化を伴うので、今すぐ始めないと間に合いません。

2021年4月1日 8:53いいね
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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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別の視点 国内雇用の維持・拡大を脱炭素戦略の目標・目的とするのが排出削減量よりも重要だと考える。

自国の再エネ発電量が少ない日本企業は、再エネ利用を求めるグローバル顧客のサプライチェーンから弾き出されないために、再エネの調達がしやすい海外へ工場を移管することを検討せざるを得なくなる。産業の空洞化を回避し、中小企業を含めた国内雇用を維持するためには、再エネの導入を加速する必要がある。

排出量取引で獲得したカーボンクレジットの売却益の一部を消費者に還元する仕組みを企業が作れば、カーボンプライシングが消費者の脱炭素への行動変容を促し、企業収益(富)の分散が消費を喚起する。結果、雇用創出につなげることもできる。

2021年4月1日 6:01いいね
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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点 国際エネルギー機関(IEA)は昨年10月、2020年版の世界エネルギー見通し(WEO)を公表しました。今後の動向については、いくつかのシナリオで分析。そのうち「現在、各国が公表している(温暖化防止への)政策や目標を全面的に反映(総動員)した」シナリオでは30年まで石油需要の拡大が続き、そこから頭打ちになるものの、40年まで日量1億バレル強の消費が続きます。現在、公表されている政策や目標ではパリ協定の目標達成からほど遠いことが分かります。

2021年4月1日 7:30いいね
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