中国、イラン核合意で揺さぶり 米の復帰に影 中東・東欧にくさび、ワクチン・投資武器に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM295MU0Z20C21A3000000/

『中国の外相と国防相による異例の中東、東欧同時訪問が3月31日、終わった。人権や民主主義を重視するバイデン政権に対抗し、中国は権威主義グループの結束を強め揺さぶりをかける。イランとの関係強化は米主導の中東安定策や核拡散防止の行方にも影を落とす。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は24日から6日間の日程でサウジアラビア、トルコ、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーンの中東6カ国…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り1231文字

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

春割で申し込む
https://www.nikkei.com/promotion/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM11C1B011032021000000&n_cid=DSPRM1AR08_promo

無料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07#free

ログインする
https://www.nikkei.com/login

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は24日から6日間の日程でサウジアラビア、トルコ、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーンの中東6カ国を訪問した。魏鳳和国務委員兼国防相も24日からハンガリー、セルビア、ギリシャ、北マケドニアの東欧4カ国を訪問した。両氏は新型コロナウイルスの中国製ワクチン協力と投資を武器に両地域に切り込んだ。

今回の外遊での最大の成果はイランとの経済・安全保障に関する25年間の戦略協定の締結だ。地元メディアなどによると中国がイランに計4000億ドル(約44兆円)を投資する。イランには中国の影響力拡大への懸念も大きいが、米制裁の影響が強まるなか、原油の割引販売などで譲歩したもようだ。

中東の安定は2015年に成立した「イラン核合意」の行方が最大の焦点だ。18年に当時のトランプ米政権が一方的に離脱した後、バイデン政権は核合意への復帰をめざしている。イランが「制裁解除が先決」を求めるのに対し、米側は「イランがまず合意義務に回帰すべきだ」と譲らず、先行きは見通せない。その中でさらに状況を難しくするのが中国の動きだ。

「核合意は自由に離脱したり復帰したりできるものではない。米国はイランに対する一方的な制裁を早期に撤回すべきだ」。王氏は27日、イランのロウハニ大統領との会談でこう話した。

協定を結んだ中国はロシアとともにイランの主張を支持しており、結果的に核合意への米国復帰は一段と遠のく可能性が大きい。中国やロシアを後ろ盾にイランは交渉で一段と強硬な姿勢に傾斜しそうだ。すでに骨抜きが進む核合意は数年で形骸化しかねない。イラン核合意が崩壊すれば、不安定な中東で核開発ドミノが起きるリスクが大きくなる。中東における米国の影響力低下による空白を、中国が着々と埋めているようにもみえる。

米欧が非難を強める新疆ウイグル自治区の人権問題でも中東と東欧が追随しないようにくぎをさした。中国外務省の発表によるとウイグル問題で中国批判の急先鋒(せんぽう)だったトルコのエルドアン大統領は25日の王氏との会談で「私自身も中国製ワクチンを公開で接種し、安全性と有効性を示した。引き続き中国と協力を深めたい」と語った。

魏氏は26日に1999年5月に米軍を主体とする北大西洋条約機構(NATO)軍が「誤爆」したとされる在ベオグラード中国大使館の慰霊碑を訪れ献花した。中国では「故意」と受け止める見方の多い、屈辱の地だ。「香港、台湾、新疆など核心的利益に関わる中国の立場を断固支持する」。中国友好国のセルビアのブチッチ大統領は魏氏にこう発言した。

もっとも、イランへの接近を含めて中国の中東政策は機会主義的な色合いが濃い。中東の長期的な和平を中国が主導する道筋はみえず、今後も不安定な状況が続くのは避けられない。

米欧への対抗軸づくりもどこまで進んだかはまだ見通せない。ウイグル問題など中国の核心的利益を「支持」すると明言したのはサウジアラビアやセルビアなど一部にとどまる。米中対立に巻き込まれる事態を懸念する国も多く、米中のはざまで「いいとこ取り」をしたいのが本音ともみられる。

(岐部秀光、北京=羽田野主)