中ロ共闘、新たな東西対立に 秩序乱す同盟傾斜
編集委員 坂井光
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK2573S0V20C21A3000000/
※ 「大戦略」的には、中ロをあまり「締め上げすぎて」、接近を図らせない方がいいんだが…。
※ 適当にあしらって、中ロを対立させるように持っていく方が、いいんだが…。


『中国とロシアの関係が新たな段階に入ろうとしている。これまで「便宜的なパートナー」といわれてきたが、米欧などからの圧力を受け、外相がそろって米国批判を繰り広げるなど共闘態勢を築き始めている。民主主義陣営への対抗軸として、今後先鋭化する懸念をはらむ。
Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。
3月22~23日、中国の広西チワン族自治区桂林市で中ロ外相会談が開かれた。
「米国はグルー…
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「米国はグループをつくって対抗するのをやめるべきだ」「民主主義のモデルには統一された基準はない。どれを選ぶかは主権国が持つ権利だ」――。王毅、ラブロフ両外相がことさら強調したのは米国をはじめとする西側批判だった。
それには次のような伏線があった。
▼3月12日、日米豪印の4カ国からなる「Quad(クアッド)」オンライン首脳協議。中国及びロシアを念頭にした包囲網を形成
▼17日、バイデン米大統領がプーチン・ロシア大統領を「人殺し」と発言した米テレビインタビューの放映
▼18~19日、米アラスカで米中外交トップ協議。非難の応酬に
▼22日、人権問題を巡り欧米諸国が対中制裁を決定
ロシアの内心は複雑だ。相手はもともと同じ共産党国家の弟分。1960年代には、国境紛争が起こり、武力衝突に発展したこともある。ソ連崩壊後の96年に「戦略的パートナーシップ」を表明し、2001年にはプーチン大統領が江沢民国家主席(当時)をモスクワに迎え、中ロ善隣友好協力条約に調印した。
その過程で優位性は薄れ、立場は逆転した。国際通貨基金(IMF)によると、経済成長を続ける中国の19年の国内総生産(GDP)はロシアの8倍強に拡大。一方で、ロシアは輸出入とも中国が最大の相手国となり、依存度が高まっている。
ロシアが憂慮するのは「格下」として中国に取り込まれることだ。大国意識が強いプーチン政権の原理原則は、どの国からも内政面で影響を受けないこと。メンツや尊厳が傷つけられるのは絶対に許さない。
中央アジアなど勢力圏と位置づける旧ソ連諸国の中には経済的に中国の影響下に入ったところもあり、プーチン氏は苦々しく思っているはずだ。そんな懸念をよそに中国はロシアに秋波を送る。
「ユーラシア地域において中国、ロシアのいずれとも付き合わずにすむ国はないし、ましてや2国と同時にたたかえる国はない」「中ロはクアッドに対抗できる」。中国共産党系のメディア、環球時報はこう論評する。米国が最大の脅威とみなす中国にとって背後にいる軍事大国ロシアを味方につければ心強いとの思惑がにじむ。
両国関係のベクトルは軍事的な同盟を目指すのか。今年、試金石になりうる出来事がある。
7月に中ロ善隣友好協力条約が20年という期限を迎える。3月下旬の外相会談では延長することを確認するとともに、内容も拡充する方向で一致した。両首脳が共同声明を発表する方針も明らかにした。5年前の15周年式典で習近平(シー・ジンピン)国家主席が「同盟もせず対立もせず」と位置づけた両国関係をどう表現するか注目される。
もうひとつは、ロシアが4つの軍管区持ち回りで毎年秋に実施している大規模軍事演習だ。中国人民解放軍が初めて参加したのは地理的に近い18年の「ボストーク(東)」演習。これ以降、3年続けて招待されたが、今年は欧州をにらむ「ザーパト(西)」。これに中国が参加すれば欧州を刺激するのは必至で、中ロの軍事的接近を印象づけることになる。
中ロは軍事的にも接近している(2020年6月、モスクワ赤の広場での軍事パレードに参加した中国人民解放軍の兵士ら)=ロイター
欧米型の民主主義国家を「西側(中国語で西方)」と呼び、それに対抗する陣営を自認し始めた中ロ。さらに軍事分野での「同盟」に傾けば、世界を二分する東西対立に発展する懸念がある。
プーチン大統領は昨年10月、中国との軍事同盟について問われ「理論的には十分想像できる」と含みを持たせた。本音はどこにあるのか。
ロシアの外交戦略はしたたかで、成熟している。核管理、対テロ、エネルギー、科学技術、中東問題など米欧との交渉カードは多い。西側との対話の意思を隠さず、常に関係改善の機会をうかがっている。中国との蜜月ぶりも西側との対話再開を呼びかけるポーズとの裏読みもできなくはない。
とはいえ、国内経済は低迷し、国民の不満が高まるなか、権力維持こそがプーチン政権の最優先課題だ。西側から無視され続け、追い込まれたと感じたとき、同盟締結という一線を越えることも否定できない。
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