米国、ミャンマー国軍へ制裁強化 一般国民にも影響

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『【ヤンゴン=新田裕一、バンコク=村松洋兵】米国がミャンマー国軍への制裁を強めた。29日には投資・貿易の2国間協定の協議停止を発表し、優遇関税の見直しにも言及した。デモ隊らへの弾圧をエスカレートさせる国軍に圧力をかけるため、一般の国民にも影響がおよぶ制裁をせざるを得なくなってきた。

ミャンマー国軍や警察はデモ隊だけでなく、民家内の市民や子供にも無差別に発砲している。民間団体の政治犯支援協会によると、…

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民間団体の政治犯支援協会によると、市民弾圧による死者数は29日時点で510人となった。

米国は国軍への圧力を強めた。米通商代表部(USTR)の声明によると、2013年に署名した「貿易・投資枠組み協定」に関わる取り組みを、民主的に選ばれた政府が戻るまで停止する。協定は政府間協議の開催などを定めている。

USTRはミャンマーからの輸入品を対象にした特恵関税制度の見直しも表明した。約5000品目の関税を免除し、柱となる縫製産業などの成長を後押ししてきた。20年12月末に一旦失効したため米議会で継続させる制度を議論しているが、ミャンマーは対象外になる可能性が出てきた。

米国は段階的に制裁を科してきたが、当初は国軍に的を絞った。2月中旬、まずミン・アウン・フライン国軍総司令官ら軍関係者10人と現地企業3社を制裁対象リスト(SDNリスト)に加えた。米国内の資産を凍結し、米国企業との取引を禁止した。その後も他の国軍関係者や家族らを対象に加えたが、彼らが米国内に持つ資産はほとんどないとみられ、実効性は疑問視された。

3月下旬には、2つの国軍系企業、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)とミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)を制裁対象に加えた。両社は金融や携帯通信、港湾などの事業を展開し、国連調査団が19年にまとめた報告書によると約150社の関連企業を抱える。国軍の資金源を断つ狙いだった。

それでも国軍の弾圧は止まらないため、今回は貿易・投資分野も制裁対象に加えた。2国間協定や特恵関税のほかに、ミャンマーの主要な輸出品目である天然ガス産業も候補に挙がる。同国の人権状況を調査している国連のアンドリュース特別報告者(米元下院議員)は、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)を制裁対象に加えるべきだと提言している。

かつての軍事政権時代は、国軍に近い大手財閥も制裁対象だった。最終的には米国企業によるミャンマーへの新規投資や金融取引、貿易の禁止まで踏み込んだ。

ミャンマーは半世紀に及ぶ軍政期を経て、2011年に民政移管した。民主化と並行して、金融制度やビジネス法制の整備など、近代的な資本主義経済の基盤づくりを急いで進めた。日米欧など各国の政府・企業は、新投資法や新会社法の制定、資本市場の育成、労働・環境基準の整備などを競って支援した。そうした経済の近代化も大きく逆行しかねない。

米欧の制裁強化は、ミャンマーで事業展開する外資企業にも大きな影響を及ぼす。英フィナンシャル・タイムズは23日、国際的な人権・環境保護団体が米シェブロンやトタルに対し、MOGEにロイヤルティー(使用料)などの支払いを停止するように求めたと報じた。

日本勢ではキリンホールディングスがMEHLとの合弁でビール生産を手掛ける。MEHL側の持ち分比率が49%のため米国の制裁対象外だが、現地では激しい不買運動が行われ、スーパーの商品棚から姿を消した。25日をめどに稼働再開を予定していた工場の状況は「保安上の理由からコメントは控えたい」(キリン広報)としている。