中国、最先端望遠鏡を外国人に開放 透明化へ一歩

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH29A5Z0Z20C21A1000000/

『中国が世界最大級の電波望遠鏡を31日から世界に開放する。科学分野で急速に力をつける中国は、研究施設を開放してこなかった。それが欧米などの警戒を招く原因になっていた。今回の動きを契機に世界への公開が本格化すれば、中国に対する科学界からの見方が変わるかもしれない。

地面の巨大なくぼみを生かして造った電波望遠鏡「FAST」は、直径が500メートルに達し、単独の望遠鏡としては世界最大の規模を誇る。愛称は「…

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愛称は「天眼」で、1月に本格稼働した。

この望遠鏡の観測時間の10%を世界から募った研究に割り当てる。10%は公募研究に割り当てる時間としては一般的だ。

望遠鏡をはじめとする巨大研究施設は通常、建設に参加した国の研究者でなくても公募枠に申し込み利用できる。しかし、公募枠を設けてこなかった中国では、同国の研究者と共同研究するなどしないと外国人は利用できなかった。

今回始めた公募は研究計画の価値が認められれば、外国人だけでも施設を使える。国立天文台の小林秀行教授は「考え方の大きな変更だ」と指摘する。南アフリカに国際共同で建設が始まった次世代電波望遠鏡「SKA」のプロジェクトに中国が加わったことがきっかけになったのではないかと推測する。

SKA建設を担う機構は、中国も含め10カ国で構成している。天眼を支えるアレイ受信機と呼ばれる中核技術は、SKAの中心的参加国の一つであるオーストラリアが協力した。天眼は中国単独では完成できなかった。

電波望遠鏡はチリに建設された「ALMA」などが活躍しているが、SKAはより波長の長いセンチメートル波~メートル波の電波で宇宙を観測する。性能は同種の既存の望遠鏡の10倍以上だ。

宇宙の初期構造解明や生命の起源探求、パルサーと呼ばれる天体を利用した一般相対性理論の検証など、ノーベル賞級の研究テーマでの活躍が期待されている。天眼は建設経緯からSKAの先行機としての性格を持つ。

固定式の天眼が観測できる範囲に制限はあるものの、世界最先端に変わりはない。「SKAの大きなテーマのうちいくつかは天眼で先行できる」(小林教授)。宇宙誕生時の大爆発「ビッグバン」の後に初めて誕生した星の観測などが期待できる。

ただ3月公表のガイドラインでは、公募研究の対象はパルサーが電波を出すタイミングや非常に短い時間に強力な電波を出す天体現象などに限られた。日本からの応募の動きもまだ鈍いようだ。

天文学に欠かせない望遠鏡や物理学のための加速器などは、設備も巨大になりがちだ。このため日米欧などが国際協力で資金を出し合って建設し、設備を開放して科学研究の進展に役立ててきた。これまで国内利用を優先してきた中国が研究施設を開放する動きが広がれば、海外研究者との交流が進み、情報の透明度が高まる期待もある。

科学分野に巨額の投資を続ける中国では、天眼にとどまらず次世代の加速器など、世界の先端を狙う研究施設の建設計画が進む。月探査機「嫦娥5号」が持ち帰った月のサンプルなどの宇宙探査でも、世界をリードしてきた米国と遜色ない成果を上げている。

中国科学界の開放が進み、世界と協調して先端研究を進めるようになるのか、天眼の取り組みが試金石になりそうだ。(編集委員 小玉祥司)