強硬な中国、変わらない 軽視できぬ軍事衝突リスク

強硬な中国、変わらない 軽視できぬ軍事衝突リスク
本社コメンテーター 秋田浩之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH245YG0U1A320C2000000/

 ※ 冷静、かつ、沈着な見立てだと思う…。

 ※ いずれ、生き残りをかけて、各国が、自国の「国家戦略」を策定・実行していく必要がある…。

 ※ その際に重要なことは、それぞれの国家の「存立の基盤」が何であるのかを抽出し、その間のプライオリティを測っておくことだろう…。

『中国をめぐる主要国の動きが急だ。米国と英国、カナダ、欧州連合(EU)は今週、ウイグル族の人権侵害に抗議し、そろって対中制裁を発表した。日本でも制裁を可能にする法律を整える動きが超党派で出ている。

とりわけ際立つのは米国の厳しい対中観だ。バイデン大統領は25日の記者会見で、習近平(シー・ジンピン)中国国家主席に対し、「激しい競争になる」と警告したことを明らかにした。

昨年7月23日付の本欄で、米中は…

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昨年7月23日付の本欄で、米中は対立が高じて、統治体制をめぐる「政治戦争」に入っており、バイデン氏が大統領になっても流れは変わらないと書いた。中国問題の元凶は共産党の独裁体制にあるという同党性悪説が、米国で出始めたからだ。この潮流が強まっている気がする。

では、主要国の対中政策はどこに向かうのか。日米欧の当局者らには現在、共産党をめぐり懐疑論と悲観論が交錯している。

前者は中国の行動を全面的に変えるのは無理だとしても多少、改めさせる余地はある。後者は共産党体制が続く限り、そのような望みは薄いという仮説だ。

どちらの前提に立つのか。主要国は早晩、この命題に向き合わなければならなくなる。それによって対中戦略が変わるからだ。

懐疑論の立場をとるなら、中国に圧力をかける一方で、対話も深め、気候変動などの協力に期待をつなぐのが望ましい。

逆に悲観論でいくならば、中国による強硬な路線は変わらないと想定し、各国による中国包囲網づくりをさらに急ぐべきだろう。

バイデン米政権内ではいま、両論がせめぎ合っている。ブリンケン米国務長官らは今月18~19日、米アラスカ州で中国側と協議したが、それでも結論には至っていないという。

バイデン米大統領は25日の記者会見で、中国に対して厳しい姿勢を改めて示した=AP

やりとりを知る元米政府高官によると、非難の応酬になった冒頭発言と異なり、その後の協議はおおむね冷静に進んだ。中国側は人権や台湾問題でかたくなな一方で、気候変動や北朝鮮、イラン、アフガニスタン問題では協力の意向を申し入れ、そのための環境を整えるよう米側に重ねて求めた。

こうした中国の態度は強硬な対外路線を再考し、米欧やアジア周辺国への態度を和らげる兆しなのだろうか。それとも、米国がこれ以上、対中強硬に傾くのを防ぐための戦術にすぎないのか……。

あえていま判断するなら、残念ながら、後者の仮説を前提にせざるを得ないだろう。

中国共産党は2035年までに中等レベルの先進国となり、50年までに米国と並ぶ世界最強国になることを目標にしている。この旗を掲げる限り、「富国強兵」の路線が弱まるとは思えない。

習主席は1月の内部講話の中で、「東昇西降」(東が昇り、西が降りる)と力説したとされる。米国と協調するどころか、米国から覇権を奪うことに執念を燃やしている。

米誌フォーリン・ポリシー(電子版)は3月11日、共産党の中国と米国が協調的に共存することは難しく、厳しい米中対立が長期にわたって続くという共著論文を掲載し、話題を呼んだ。

中国共産党は世界的な覇権を目指している(写真は全国人民代表大会での習近平国家主席、11日)=AP

執筆者の一人である米アメリカン・エンタープライズ研究所リサーチフェロー、ザック・クーパー氏は次のように指摘する。

「5年前までは、多くの人が中国の行動を変えることができると考えていた。しかし今日、それに疑念を抱く人が多くなっている。3月中旬の米中協議は、安定した共存関係を築ける可能性が低いことを示したと思う。私の見立てが誤りであると思いたいが、正しいのではないかと心配している」

クーパー氏は、中国との「平和共存路線」が失敗することも想定し、プランB(次善策)を用意すべきだと訴える。具体的には中国の強硬な行動に対応するため、同盟や友好国とのネットワークをさらに強めるよう説く。

共産党体制をめぐる米中の政治戦争がこのまま激しくなれば、新冷戦となり、台湾海峡や東シナ海で軍事緊張が高まる恐れもある。地理的に、日本はその最前線に立つことになる。

日本は海洋やハイテクでの覇権競争で米国と密に連携し、中国に対抗することが最優先だ。一方で米中対立が戦争につながらないよう、可能な役割を果たす努力も放棄すべきではない。中国専門家である川島真・東大教授は語る。

「少子高齢化に伴い経済成長は鈍化しつつあり、中国としても強硬一本やりでは厳しい局面に入っていく。だからこそ中国は性急に目標を達成しようとする。中国の強国路線を止めることはできないにしても、スケジュールを遅らせることはできる可能性がある。日本はあきらめずに中国に働きかけ、強硬措置を和らげさせる努力を続けるべきだ」

たとえばオバマ政権当時、中国は東シナ海に続き、南シナ海にも防空識別圏を設けることを検討したが、各国の反発に遭い、いまだに実行していない。

中国は2月、海警局に武器使用を含む強力な権限を与える海警法を施行した。川島氏は「各国が効果的に圧力をかければ、厳格な執行を遅らせることは不可能ではない」とみる。

日本には当初、バイデン政権が中国に弱腰になるのではないかと懸念する声があった。だが、日本が直面しているのは逆の展開であり、対応はさらに難しい。

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秋田 浩之
長年、外交・安全保障を取材してきた。東京を拠点とし、北京とワシントンの駐在経験も。北京では鄧小平氏死去、ワシントンではイラク戦争などに遭遇した。著書に「暗流 米中日外交三国志」「乱流 米中日安全保障三国志」。

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