安保関連の土地取引制限法案、実効性は? 有識者に聞く

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『政府は26日、安全保障上で重要な土地の取引を調査・規制する新法案を閣議決定した。自衛隊の基地周辺や領海の基線となる国境離島で外国資本などが土地を買収し電波妨害や盗聴するのを防ぐ。私権制限への懸念を踏まえ、規制は個人情報保護に留意し「必要最小限度のもの」と明記した。

今国会で成立させ、2022年4月の運用開始をめざす。

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法案は自衛隊や海上保安庁の施設、原子力発電所など重要インフラからほぼ1キロメートルを「注視区域」に指定する。自衛隊司令部の近くや国境離島はより重要性の高い「特別注視区域」とみなす。

国が住民基本台帳などで所有者名や国籍といった最新情報と利用実態をつかみやすくする。重要施設への電波妨害や、ライフラインを遮断するおそれがあれば利用中止を勧告・命令する。従わなければ懲役2年以下か罰金200万円以下を科す。

特別注視区域の規制はより厳しい。所有権が移る場合、氏名や利用目的の事前届け出を義務付ける。届け出がなかったり虚偽の報告だったりすれば罰則の対象になる。

公明党は私権制限の拡大を懸念する立場で「自由な土地取引を阻害しかねない」と主張した。政府は対象区域に「経済的社会的観点から留意」と修正した。市街地など所有者の変化が頻繁な地域を除外できる。

海保施設や重要インフラの周辺は特別注視区域と法案で明記しなかった。離島の漁港も対象から外れる見通しだ。

兼原信克・同志社大特別客員教授「実態把握、経済安保に不可欠」

日本企業への出資などを規制する外為法は土地の売買を対象としていない。新法案で国内の土地取引を調査し規制できるようになれば穴埋めができる。

外資による土地買収は増えている。経済安全保障の観点からも、取引の実態把握は必要だ。これまでは国に権限がなかった。自治体の管理する住民基本台帳などを閲覧できるようになれば実態をつかみやすくなる。

法案が日本人と外国人を等しく扱う「内外無差別」の原則を守るのも評価できる。警戒すべき土地買収は外資だけでない。外資が背後にいる国内企業も安保上の脅威になり得る。

日本で自由な土地取引は規制できないしすべきではない。法案は規制について「最小限度」と明記した。市街地などを対象から外せるようにしたのは妥当な判断だ。

平野秀樹・姫路大特任教授「規制対象が限定的、実効性に不安」

外資の土地取引規制の法整備は大事な一歩だが実効性で不安な部分がある。

主な対象は防衛施設の周辺や国境離島の土地取引だ。中国資本による買収が相次ぐ森林や農地は事前届け出を義務付ける特別注視区域として想定していないという。

安保は防衛や領土にとどまらず、エネルギーや水、食糧、鉱物資源、医療物資と幅広い。法案に基づく調査や規制の対象が限定的になるなら効果に疑問符がつく。国土の利用実態がつかめぬまま、不当に使われ続けるリスクが残る。

日本のように地籍調査が不十分で、広大な所有者不明の土地を抱える先進国は珍しい。政府は法施行後、対象区域の指定や調査のあり方を改めて示す。市街地の画一的な除外など規制の対象や内容が過剰に制限され、実効性が骨抜きにされないよう注視したい。