中国船220隻が集結、8つ目の人工島を建設か?

中国船220隻が集結、8つ目の人工島を建設か?
武装海上民兵が乗船、完全に舐められたバイデン政権
2021.3.25(木)
北村 淳
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64629

『(北村 淳:軍事社会学者)

 フィリピン政府は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内の環礁周辺海域に中国船220隻が集結している状況を国際社会に向けて発表し、ロレンザーナ国防相が中国側にただちに撤退するよう求めた。

 フィリピン当局によると、蝟集(いしゅう)している中国船は漁業活動などは行っておらず、船の特徴などから明らかに武装海上民兵の船であるという。

南シナ海のウィットサン礁海域に集結している中国船(写真:フィリピン政府・西フィリピン海国家機動部隊)

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各国が領有権を主張するユニオン堆

 多数の中国海上民兵船が集結しているのは、南シナ海・南沙諸島を形成するユニオン堆(たい)と呼ばれている環礁群の中で最も大きい環礁(満潮時は水没する暗礁)のウィットサン礁である。この環礁はフィリピン沿岸から200海里以内に位置しており、フィリピン政府によるとフィリピンの排他的経済水域内ということになる。

ウィットサン礁の位置
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ジョンソンサウス礁で中国、ベトナムが軍事衝…

しかし、ウィットサン礁をはじめとするユニオン堆に対しては、フィリピン、中国、ベトナム、台湾がそれぞれ領有権を主張している。

 ユニオン堆はたしかにフィリピン沿岸海域から200海里内に位置しているため、フィリピン政府は自国の排他的経済水域に位置していると主張している。だが、フィリピンはユニオン堆を形成している環礁を1つも実効支配していない。

 一方、ベトナムはユニオン堆内のシンコウ島、コリンズ礁、ランズダウン礁、そしてグリアソン礁に小規模な守備隊を派遣したり定期的にパトロールすることによって実効支配態勢を維持している。

 また、中国はジョンソンサウス礁(赤瓜礁)、ヒューズ礁(東門礁)そしてウィットサン礁(牛軛礁)を実効支配している。ウィットサン礁に対しては、漁船群や巡視船が頻繁に姿を見せることによる実効支配であるが、ジョンソンサウス礁とヒューズ礁に対する実効支配は、本コラムでも繰り返し指摘しているとおり、人工島の建設による「誰の目にも明らかな形」での強力な実効支配態勢を確立している。

ジョンソンサウス礁で中国、ベトナムが軍事衝突
 かつてユニオン堆の領有権紛争によって、ベトナム海軍と中国海軍は軍事衝突まで引き起こしたことがある。

 1980年代後半には、ベトナムがユニオン…

1980年代後半には、ベトナムがユニオン堆のいくつかの環礁を占拠し実効支配態勢を固めていた。ところが1988年3月、ベトナム側の説明によると中国海軍が小艦隊をユニオン堆海域に派遣し、ベトナム側を挑発し始めた。そのため、3月14日、ベトナム当局はユニオン堆の実効支配を護るために揚陸艦と2隻の武装貨物船に上陸部隊を積載してユニオン堆に急行させた。

 そしてジョンソンサウス礁にベトナム軍工兵部隊が上陸を開始すると、急接近してきた中国艦隊から中国軍部隊も上陸を開始し、3隻の中国海軍フリゲートがベトナム武装貨物船に攻撃を開始した。軽武装のベトナム貨物船2隻は撃沈されてしまった。

 もっとも中国側によると、中国海軍は、ベトナムと領有権紛争中のジョンソンサウス礁、コリンズ礁ならびにランズダウン礁にベトナム艦船が接近してくるのを発見した。3月14日、ジョンソンサウス礁に国旗を掲揚しようとしたベトナム軍将兵と、やはり国旗を掲揚しようとしていた中国軍将兵の間で、国旗掲揚を巡る衝突が生じた。

 すると、ベトナム武装貨物船が発砲してきたため、やむを得ず反撃を開始し、ベトナム船を撃沈した。その後、コリンズ礁に上陸しているベトナム兵に中国フリゲートが退去命令を発したが、ベトナム船から攻撃してきたため応戦して撃沈したのだという。

 いずれにせよ、1988年3月14日に、ジョンソンサウス礁周辺海域でベトナム海軍と中国海軍が戦闘を交え、ベトナム側が大きな損害を受けて敗北するという軍事衝突が発生したのである。

 その結果、中国はユニオン堆のジョンソンサウス礁とヒューズ礁に加えて、ユニオン堆以外の南沙諸島に点在しているファイアリークロス礁(永暑礁)、ガベン礁(南薫礁)、クアテロン礁(華陽礁)、そしてスービ礁(渚碧礁)を占拠した。

ユニオン堆の形勢図(2021年3月時点)
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第4の軍事滑走路が誕生してしまうのか…

ただし、その当時は海軍力がいまだに弱体であった中国は、それら占拠した環礁に本格的な永久建造物を設置したり航空施設を建設することはできなかった。しかしそれから4半世紀を経た現在、このときに占拠した環礁は全て人工島に生まれ変わり、本格的軍用滑走路まで設置され、中国軍の前身海洋基地群が誕生しているのである。

第4の軍事滑走路が誕生してしまうのか

 今回、220隻もの中国海上民兵船が集結しているウィットサン礁はユニオン堆最大の環礁である。大きな環礁とはいえ、人工島化しなければ陸上施設は建設できない。だが、中国は南沙諸島ですでに7つもの環礁を人工島化して海洋基地群を生み出していることを忘れてはならない。ウィットサン礁を人工島に生まれ変わらせると、3000メートル級の滑走路を設置することができるのだ。

 ウィットサン礁は、すでに滑走路が建設されているミスチーフ礁とファイアリークロス礁のほぼ中間に位置しており、それぞれの航空施設からおよそ150kmの距離だ。そして、やはり滑走路が設置されているスービ礁の南方およそ150kmに位置している。そのため、もし中国がウィットサン礁を人工島に改造してしまい、南沙諸島にもう1つの航空拠点を設置したならば、中国による南シナ海の軍事的コントロールはますます強固なものとなるのである。 』