米欧と中国、制裁の応酬 ウイグル問題が通商波及も

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『中国の少数民族ウイグル族の人権問題を巡る米欧と中国の対立が通商にも波及する可能性が出てきた。約30年ぶりの対中制裁に踏み切った欧州連合(EU)では、中国と大筋合意した投資協定の批准に不透明感が強まる。米欧では民間企業にウイグル関連取引の停止や削減を求める動きが広がる。グローバルに展開する日本企業も対応を迫られ始めた。

米欧は22日、ウイグル族の人権侵害を巡って中国政府当局者らへの制裁を相次いで発表…

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米欧は22日、ウイグル族の人権侵害を巡って中国政府当局者らへの制裁を相次いで発表した。EUと英国、カナダは新疆ウイグル自治区の公安トップら4人と同自治区の治安対策などを担う1団体に対して資産凍結や渡航禁止などの制裁を決定。米国も同自治区の公安トップら2人の資産凍結などの制裁を決めた。

中国は対抗措置としてEUへの制裁を決定。欧州議員ら10人の個人とEU関連の4団体に中国への渡航を禁じた。「中国の制裁は受け入れられず、重大な結果をもたらすだろう」。欧州議会のサッソリ議長は22日、猛反発し、制裁対象となった議員らと一緒に写った写真をツイッターに投稿した。

欧州議会ではEUと中国の包括投資協定の審議が進む。20年末に大筋合意した同協定の批准には欧州議会の「同意」が必要だ。議会第2会派の欧州社会・進歩連盟(S&D、中道左派)は22日、「投資協定の議論を始めるには欧州議員への制裁解除が条件だ」との声明をさっそく発表した。ウイグル問題を巡る対立激化で批准に暗雲が漂う。

米欧は自国産業の供給網(サプライチェーン)に新疆ウイグル自治区での強制労働による製品が流通しないよう監視も強めている。人権を巡る中国との対立激化は民間企業の供給網にも影響をもたらす。

同自治区は衣料品や電子製品の産地で、米議会はナイキやアディダスなどが強制労働で生産された製品を調達した疑いがあると指摘したこともある。米国ではすでにトランプ前政権下の2020年12月に「新疆生産建設兵団」が生産した綿製品の輸入を禁じる命令を出した。

英国とカナダも1月、自国企業がウイグル自治区での人権侵害に加担しないようにする新ルールを発表した。ラーブ英外相は「故意または不注意で、ウイグル人への人権侵害から利益を得られないようにする必要がある」と企業に警鐘を鳴らす。

英国は中堅以上の企業に対し人権侵害に加担しないためにとった対策を示すよう義務付け、怠った場合には罰金を科す方針だ。強制労働に関わった疑いのある企業は公共調達から外す。ドイツも中国を名指ししていないものの、調達先で強制労働などの人権侵害がないか企業に管理強化を求める法案を3日に閣議決定した。

20年3月にはオーストラリアのシンクタンク、豪戦略政策研究所(ASPI)が、ウイグル族の強制労働への関与が疑われる工場と取引のある企業約80社のリストを公表。国際人権団体などがリスト掲載企業に取引停止を求めるキャンペーンを始めた。

仏ラコステやスウェーデン・へネス・アンド・マウリッツ(H&M)などが相次ぎ現地企業との取引停止を発表。米ナイキなども取引先で人権侵害が起きていないかの調査に乗り出した。

人権問題に関する法制整備が遅れてきた日本でも企業が対策を強化している。ASPIのリストに掲載された三菱電機は取引先の人権調査を強化。現時点で人権侵害は確認されていないが、問題があれば取引停止する方針だ。ファーストリテイリングも疑いのある企業との取引がないことを確認したとの声明を発表した。

(ブリュッセル=竹内康雄、ロンドン=中島裕介、雇用エディター 松井基一)

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ウイグル問題とは

 中国政府が新疆ウイグル自治区で行っているイスラム教徒の少数民族ウイグル族への弾圧を巡る問題を指す。現在の新疆ウイグル自治区にあたる地域には、かねてイスラム教徒のトルコ系ウイグル族が多数居住していた。1949年に中国人民解放軍が進駐し、55年に新疆ウイグル自治区が成立した。漢族の移住が進むにつれてウイグル族との間で対立が広がり、独立運動が活発になった。
 2009年には漢族ら1700人以上が負傷する大規模な暴動が発生し、中国当局は相次ぐ暴力事件を受けてウイグル族に対する抑圧を強化してきた。一方、19年には国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手したウイグル族の抑圧を巡る中国当局の内部文書に関する報道を受け、中国に対する欧米からの批判が強まった。

 米国務省は昨年公表した「世界の信教の自由」に関する報告書(2019年版)で「中国政府がウイグル族ら100万人以上を新疆ウイグル自治区の施設に収容し、政治的な洗脳、拷問に加え、精神的かつ肉体的な虐待を強いている」などと指摘。トランプ前政権末期の1月には、ポンペオ国務長官が中国政府による弾圧を国際法上の犯罪となる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。2月にはオランダ、カナダの議会もウイグル族の扱いをジェノサイドと認定する動議をそれぞれ可決し、米国に追随した。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/China-EU-investment-deal-caught-in-Xinjiang-sanctions-crossfire?n_cid=DSBNNAR