脱炭素で30年目標策定 削減幅拡大、首相が米に説明へ

脱炭素で30年目標策定 削減幅拡大、首相が米に説明へ
政府、月内に有識者会議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE1234S0S1A310C2000000/

『政府は2030年までの温暖化ガス削減の新たな目標を策定する。従来目標より削減幅を広げ、50年に排出量を実質ゼロにする脱炭素社会の実現に向けた道筋を明確にする。30年の目標を重視する米欧の動きを意識し、遅くとも主要7カ国首脳会議(G7サミット)がある6月までに固める。

米欧は中長期だけでなく、30年の数値に重きを置く。昨年、欧州連合(EU)が90年比で55%減、英国は同68%減と高い目標を掲げた。4…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り2346文字

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

有料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07

無料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07#free

ログインする
https://www.nikkei.com/login

昨年、欧州連合(EU)が90年比で55%減、英国は同68%減と高い目標を掲げた。4月には米国やカナダも30年の目途を打ち出す方向だ。

菅義偉首相が4月前半の訪米時にバイデン米大統領へ方針を説明する。1月に発足したバイデン政権は気候変動を重要政策と位置づける。

米国は4月22日に主要排出国などを集めた気候変動に関する首脳会議(サミット)を開く。英国が議長国を務める6月のG7サミットでも脱炭素が主要議題になる。

首相は9日、小泉進次郎環境相に気候変動担当を兼務させた。内閣官房には気候変動対策推進室を新設した。週内にも首相と関係閣僚が協議し、3月中に産業界の代表や専門家らによる有識者会議も立ち上げる。

日本の現時点の30年目標は、安倍晋三前政権が15年に掲げた「13年度比で26%減」だ。首相は就任直後の20年10月に50年の脱炭素社会の実現を表明しており、現行の計画のままでは達成は難しい。

具体的な目標値は今後詰める。世界の研究者による組織「クライメート・アクション・トラッカー」はパリ協定が掲げる気温1.5度以内の上昇抑制の目標達成には13年比60%以上の削減が必要とみる。

温暖化ガス削減のシナリオ分析に詳しい国立環境研究所の増井利彦・統合環境経済研究室長は「日本もEUの90年比55%削減のような思い切った数字を検討すべきだ」と話す。

政府内で米国との同盟強化に共同歩調は欠かせないとの意見が強まっている。首相は18日の記者会見で、日米首脳会談を巡り「気候変動などの様々な課題で連携するとお互いに確認しあいたい」と語った。

日本は当初、11月に英国で開く第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて示す方針だったが前倒しする。政府はエネルギー基本計画の改定に合わせ、夏までに30年度の再生可能エネルギーなど電源構成比率をまとめる。

現時点の計画では30年度の再生エネ比率は22~24%で、上乗せする必要が生じる。水素やアンモニアといった新たなエネルギーの導入や、石炭など化石燃料の削減も前倒しが欠かせない。

企業も追加の対応を迫られる。電力を全て再生エネで賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」に加盟する300社弱をみると、欧米企業は8割超が30年を達成時期にしているのに対し、日本企業は7割が50年だ。

米アップルは自ら太陽光発電所の建設に関わり、すでに自社事業の電力を100%再生エネにした。30年には供給網を含めた排出量実質ゼロを目指しており、部品を供給する企業に再生エネなどによる製造を促す。

米マイクロソフトは再生エネと植林、二酸化炭素除去の技術を組み合わせ、30年までに自社の排出量を上回る削減をめざす。

自動車産業は欧州勢を中心に急速な電気自動車(EV)シフトに動く。高級車大手のボルボ・カー(スウェーデン)は30年までに新車販売をすべてEVにする計画だ。

日本勢も日産自動車やホンダなどが排出量実質ゼロを掲げる。いずれも50年に設定しており、どこまで前倒しできるかが課題になる。

首相官邸が経済産業省や環境省など複数府省にまたがる課題の調整を主導する。

経産省などは根拠が固まらない段階で早期に国際社会に数値を示すのに慎重だった。電源構成比率を定める「エネルギーミックス」をまとめ、30年の具体的な目標の設定に取りかかる段取りを描いていた。

加藤勝信官房長官は一連の国際会議に向け「30年の削減目標を示す時期も決めていく必要がある」と説く。「水素、洋上風力などの最大限の導入をはじめ、エネルギー供給のあり方や地方の脱炭素化を幅広く議論したい」とも話した。

30年目標、再生エネ上積み焦点 「40%以上」に賛否

新しい温暖化ガス削減目標の設定では、発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年度までにどこまで上積みできるかが大きな焦点になる。発電部門は日本の二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める。原子力も含めた「脱炭素電源」の比率を高めることが、削減目標の深掘りには欠かせない。

今夏にも新しい電源構成を策定する経済産業省は22日までに、再生エネ比率の新目標について経済団体や事業者にヒアリングを実施した。経済同友会は30年に40%、再生エネ導入に積極的な大手企業が集まる日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は最低で約50%を目指すべきだと主張。足元の18%や今の政府目標である22~24%から大幅な上積みを求めた。

40~50%に引き上げる道のりはまだ見通せない。課題の一つが設置場所の制約。森林を除いた平地などの単位面積あたりの再生エネ発電量をみると日本はすでに世界最大になっている。

12年に始まった再生エネ電力を固定価格で買い取る制度(FIT)のもとで狭い国土に急速に導入した結果、事業者と地元住民との摩擦も目立つ。条例で設置を禁止する自治体も増え、新規案件の障害になっているとの声が事業者からあがる。ヒアリングで同友会は「(40%を目指す上での手段は)検討している最中」などとし、有識者から「裏付けがあってこその目標提示だ」などと指摘が出た。

家計や企業の負担も課題だ。FITの買い取り費用は20年度見込みで既に3・8兆円に上り、標準的な家庭で月800円弱を負担する。意欲的な再生エネ目標を示す経済団体側も一層の負担増には消極的だ。

ここ数年の導入量から見積もると、再生エネの比率はこのままだと「30年に3割に届くかどうか」(経産省幹部)という。

上積みには政府全体で普及を後押しすることが重要になる。農地の転用では農林水産省、環境アセスメントの効率化では環境省の役割が大きい。特に重要なのが住宅・建築物を所管する国土交通省だ。家庭部門は日本の排出量の15%を占める。住宅の省エネや再生エネ設備の設置を促す取り組みの強化が必要になる。

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

深尾三四郎のアバター
深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
コメントメニュー

ひとこと解説 新産業育成と雇用創出の観点で脱炭素を推進できるか。
欧米での脱炭素政策では、雇用創出力の高い新産業としての再エネの育成に重きが置かれている。企業でのコスト負担を和らげるためのインセンティブとして、カーボンプライシングを導入しながら、環境投資への炭素税収の還元やカーボンクレジットの獲得機会を提供している。日本での脱炭素の議論はコストに目が行きがちで、特にそれは自動車産業で顕著だ。脱炭素を加速するためには、自動車政策と発電政策をセットにし、EV化で生まれる新しいエコシステム全体での雇用創出を見据えながら、カーボンプライシングの導入議論を加速すべきだ。まずは企業や省庁での縦割りの打破が必要となる。

2021年3月23日 7:28 (2021年3月23日 8:21更新)
いいね
9

高村ゆかりのアバター
高村ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター 教授
コメントメニュー

ひとこと解説 深尾さんのコメントに深く同意。日本の温室効果ガス排出量の約85%がエネルギー起源のCO2であることを考えると、2030年の温暖化目標は、2030年のエネルギーのあり方をどう描くかが鍵を握る。エネルギーインフラの整備・転換にかかる時間を考えると2030年の姿が透けて見えるのは確かだが、現状からの手堅い積み上げだけではなく、2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギーと産業の構造転換を促す、そのための政策を動員する国の意思を示す目標設定が必要だろう。洋上風力の野心的な目標設定が、内外の企業の参入を促し、次世代の産業化の動きをつくっているようにである

2021年3月23日 8:21いいね
4