米英カナダも対中制裁 ウイグル問題でEUと足並み

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『米国、英国、カナダは22日、中国での少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害にあたるとして、中国政府当局者らへの制裁をそろって発表した。欧州連合(EU)に続く制裁で、主要国が足並みをそろえた。米欧と中国の対立が一段と鋭くなる一方、日本の対応も焦点となりそうだ。

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【ワシントン=中村亮】米財務省は22日、中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与したとして中国政府当局者2人に制裁を科したと発表した。人権をめぐり激しい応酬となった先週の米中高官協議直後に制裁を発動し、ウイグル問題で譲らない姿勢を鮮明にした。

ブリンケン国務長官は声明で「国際的に非難が広がるなかで中国がウイグル自治区でジェノサイド(民族大量虐殺)や人道に対する罪を続けている」と強く批判した。「我々は世界中の同盟国と連携し、中国による犯罪行為の即時停止と犠牲者のための正義を訴えていく」と強調した。

米財務省は、ウイグル自治区の公安トップを務める陳明国氏を制裁対象に指定した。同区の治安対策などを担う組織「新疆生産建設兵団」の共産党委員会書記、王君正氏にも制裁を科した。

財務省は声明で「少数民族に対する深刻な人権侵害に関与し、それは恣意的な拘束や厳しい身体的虐待を含むとされる」と指摘。「残虐行為がウイグル自治区で起きるかぎり、中国当局は報いを受ける」と説明し、追加制裁を辞さない構えを見せた。制裁対象になると米国にある資産が凍結され、米企業との取引も禁じられる。

18~19日に米アラスカ州で開いた米中高官協議では、ブリンケン氏が中国によるウイグル族への弾圧について「深い懸念」を示した。これに対し、中国の外交を統括する楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員は「内政干渉には断固として反対する」と猛反発していた。

米英カナダ外相、共同声明で人権侵害を非難
一方、英外務省は22日、カナダの外相、米国務長官との3外相による新疆ウイグル自治区の人権問題に関する共同声明も発表した。声明では「中国政府自身の文書や衛星写真、目撃者の証言などから(人権侵害の)証拠は圧倒的だ」と制裁の正当性を訴えた。人権侵害の具体例として宗教の自由への制限や強制労働、強制不妊手術などを挙げた。

中国政府に対しては「国連からの独立した研究者やジャーナリスト、外交官を含む国際社会が新疆ウイグル自治区へ妨害なくアクセスできること」を要求。「我々は中国の人権侵害にスポットライトを当てるために、引き続き協力する」と強調した。

英は中国当局者4人に制裁、外相「米欧団結の合図」
【ロンドン=中島裕介】英国のラーブ外相は22日の議会下院の演説で、中国当局の少数民族ウイグル族への扱いが人権侵害にあたるとして、中国当局者に制裁を科すと表明した。同日に同じ趣旨の制裁を決めた欧州連合(EU)や先に制裁を実施している米国と足並みをそろえ、中国の人権侵害に包囲網を敷く。

ラーブ外相は中国の人権問題に対する制裁を決断した(写真は16日、英議会にて)=ロイター

制裁は新疆ウイグル自治区の幹部など中国当局者4人と同地区の治安対策や警察を担当する1団体を対象にした。発表と同時に発動し、英国内での資産の凍結や英国内への渡航の禁止を科す。英国はEU離脱に伴い、2020年7月から国際的な人権侵害案件の加害者に独自の制裁を科す制度を設けている。

ラーブ外相は22日の声明で「多数の拘禁と強制不妊手術の報告を含む新疆ウイグル自治区での様々な人権侵害の証拠は無視できない」と指摘。「国際的なパートナーと協力して、的を絞った制裁を科した」と語った。

英外務省は「米国やカナダ、EUによる集中的な外交の一環として制裁を科した」と説明した。国際連携については「北京(中国政府)によるこの地域での差別的な行動を終わらせることで団結している明確な合図だ」とも強調した。

英国は15年に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主要7カ国(G7)で最初に参加するなど、最近まで中国と蜜月関係にあった。だが新型コロナウイルスの初動への疑念や香港問題をきっかけに、中国への批判的な見方が急速に高まっていた。

ジョンソン政権は16日に公表した外交・安全保障の方針で中国の人権問題には毅然と対応する一方、経済や気候変動問題での連携を続ける意向を示した。与党・保守党内では対中強硬派がこれを「弱腰だ」と批判している。一部の議員は議会で審議中の貿易法案に、「ジェノサイド(民族大量虐殺)」が認定された国との通商関係を見直す条項を追加しようとしている。

カナダも発表、「当局者の責任追及」

【ニューヨーク=白岩ひおな】カナダ外務省は22日、中国で少数民族ウイグル族の「重大かつ組織的な人権侵害」が行われているとして、中国の当局者らに制裁を科すと発表した。米国、英国および欧州連合(EU)と連携し、新疆ウイグル自治区の公安当局幹部ら4人と1団体に制裁措置を講じる。

カナダのガルノー外相は「中国による少数民族の抑圧に終止符を打つ」と表明した=ロイター
人権侵害に関与したとみられる4人に資産凍結と渡航禁止の制裁を科すほか、同地区の治安維持や警察機能を担う新疆生産建設兵団公安局を制裁の対象とする。

カナダ外務省は中国が同地区で宗教や民族を理由に100万人以上を恣意的に監禁し「政治的再教育や強制労働、拷問、強制的な不妊手術などの組織的な人権侵害」を行った証拠が多数あると指摘した。中国は人権侵害を否定している。

ガルノー外相は「深刻な人権侵害に強い懸念を抱いている。イスラム系少数民族への組織的な抑圧に終止符を打ち、当局者の責任の追及を求める」と述べた。中国に対し国際機関による調査などを念頭に、独立した専門家による視察などの受け入れを求めていくとした。
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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点 中国の人権問題への西側政府の毅然とした行動が目立ちますが、企業はどうでしょうか。本日日経電子版オピニオン面で翻訳を掲載したThe Economistの「中国と対峙するための条件」によると、グローバル企業は中国での事業について「非常に満足」(独シーメンス)、「目を見張るばかり」(米アップル)、「素晴らしい」(米スターバックス)などと手放しなほめようです。企業の中国賞賛は利益重視の株主向けですが、仮に自社につながる中国内の供給網に人権を軽視する行為が見つかった場合は、声をあげなければなりません。

2021年3月23日 8:27いいね
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滝田洋一のアバター
滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 米欧が足並みをそろえた中国批判。日本はどうする、と人ごとのように言う前に、英BBCによる一連の報道をご覧ください。
2021年2月5日には「ウイグル女性、収容所での組織的レイプをBBCに証言」と伝えています(日本語版、以下同)。「中国の『思想改革』収容所」(19年6月19日)、「中国政府、ウイグル族を『洗脳』 公文書が流出」(19年11月25日)を見ても、地道な実態追及が行われてきたのが分かります。
「中国の収容所、ウイグル族のモデルが内部を撮影」(20年8月5日)など、内部の様子が白日の下にさらされだしたのです。もちろん中国当局は反論しています。どちらに説得力があるか。比較してみてください。

2021年3月23日 8:26いいね
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