日銀、緩和副作用に配慮 株や国債「市場支配」意識

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『日銀が19日の金融政策決定会合で決めた政策修正は、8年間に及ぶ大規模緩和で生じた副作用への配慮が色濃くにじんだ。上場投資信託(ETF)の購入を柔軟にしたり、長期金利の変動幅を事実上広げたりして緩和の持続力は高めたが、肝心の2%の物価目標の達成は遠い。資産市場における日銀の存在感が過度に高まり、緩和策をやめられなくなっている実態も浮かぶ。

日銀は2013年4月から大規模な金融緩和策を始めた。黒田東彦総裁…

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黒田東彦総裁は「2年で2%の物価上昇目標を念頭に、必要な措置はすべて取った」と宣言し、国債やETFなどを大量に買う異例の政策を決めた。長短金利操作などの政策変更を経つつ緩和策を続けたが、8年たっても2%目標達成の道筋はみえない。足元の消費者物価は新型コロナウイルス禍の影響もありマイナス圏に沈む。

それでも日銀が大規模緩和を続行するのは、物価の押し上げ効果を見込むというよりも自らの市場での存在感が高まりすぎ、安易に「出口」に向かえなくなっている面がある。日銀の国債保有比率は13年3月末の13%から昨年末に45%まで高まった。コロナ対応の財政出動で公的債務残高は一段と積み上がり、日銀が超低金利政策を続けて財政不安を防ぐ構図も強まっている。

国債市場は「日銀支配」で値動きが乏しくなり、金融機関の収益機会の喪失といった副作用が出ている。日銀が今回の政策修正で長期金利の誘導策で認める変動幅を見直し、プラスマイナス0.25%程度と若干広げたのも、市場機能の一段の低下を食い止める狙いがある。だが、多少の金利変動を認めても効果には限界がある。

日銀のETF購入も難路に入っている。開始から10年以上がたち、ETFの保有残高は時価で約50兆円に膨らんだ。東京証券取引所の時価総額の約7%を占める。「物言わぬ株主」の日銀の存在が企業の経営監視の緩みにつながるといった批判が出ている。

こうした副作用を意識し、日銀は政策修正で原則年6兆円としていたETF購入額の目安を削除した。これまでは株高局面でも「緩和の後退」と受け取られるETF購入の大幅減に動きづらかった。今後は市場が混乱した場面でのみ買うなどよりメリハリをつけた対応が可能になる。

ただ、黒田総裁は19日の記者会見で「ETFの買い入れを減らそうとか、(売却による)出口を考えているわけでは全くない」と語った。株式市場への影響の大きさを考慮し、日銀が自ら出口戦略を語れない状況に陥っている。

緩和策を続ける主目的は物価上昇ではなく、市場の安定に変質しつつある。黒田総裁は「市場の安定に向けた対応と物価目標の達成は矛盾せず、表裏一体だ」と強調した。現実には、強力な金融緩和が生んだ歴史的な株高とデフレ懸念のくすぶる物価との不均衡は広がる。

コロナ禍の影響が残るなかで経済・物価を下支えする緩和策を続けつつ、資産バブルの助長や金融システムの揺らぎなど、新たな危機の発生を抑えられるのか。黒田日銀の政策運営は一段と難しさを増した。

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