中国に「懸念、明確に提示」 台湾・尖閣巡り米国務長官

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『ブリンケン米国務長官は17日、中国による沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵入や台湾への圧力などについて18日に米アラスカ州で開く対面の米中協議で「懸念を明確な言葉で提示したい」と表明した。協議を「戦略対話」と位置づける中国に対し、米国が否定するなど隔たりもあらわになっており、双方のさや当てが激しくなっている。

「中国は尖閣諸島を含む東シナ海、南シナ海、台湾で攻撃的に行動している」。ブリンケン氏は日本メディアとのオンライン記者会見で、こう懸念をあらわにした。米中協議に向けて「罰せられることなく好き勝手に振る舞えると中国が思わないように明確にする」と力説し、強権路線を修正するよう求める考えを示した。

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ブリンケン氏は日韓歴訪の帰路にアラスカに立ち寄る形で米中協議に出席する。首都ワシントンからサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が加わる。中国は外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員と王毅(ワン・イー)国務委員兼外相がわざわざアラスカに出向く。

米政治サイトのポリティコによると、協議は18日から2日間になる可能性があり、3時間の協議を合計で3回開く案を検討しているという。米政府高官によると、新疆ウイグルや香港の人権弾圧、威圧的な経済慣行なども議題になる。

米国は同盟国である日韓両国の意見も踏まえ、新たな対中戦略をとりまとめる過程にある。米中協議での中国側の姿勢もその重要な判断材料となる。

バイデン政権で初めてとなる対面式での米中協議で米国が求めるのは、中国が強権路線を改める具体的な行動だ。「中国は米中関係に変化をもたらしたいと言うが、私たちが必要としているのは言葉ではなく行動だ」。米政府高官は16日、こんな認識を示した。

過去には習近平(シー・ジンピン)国家主席が南シナ海について「軍事拠点にする意図はない」と語ったこともあるが、軍事拠点化がやむことはなかった。今回は共同文書を出す予定もなく、同盟国などともあらかじめ綿密に調整してなんらかの合意をめざすことを前提とした協議ではないのは明白だ。

「米国は香港市民の権利や自由のために声を上げる同盟・友好国とともにある」。ブリンケン氏は16日、香港の自治侵害に関わったとして全国人民代表大会(全人代)常務委員会の副委員長14人を含む24人を新たに特定し、制裁対象としたと公表した。

米国で2020年に成立した香港自治法に基づく措置で、米中協議を前に香港問題で警告を発した格好だ。習指導部が「核心的利益」と位置づける香港問題で中国の妥協はないと見越す米国に対中圧力を緩める気配はない。

中国側は外務省の趙立堅副報道局長が17日の記者会見で、日米両政府が16日の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同発表で、台湾や香港に言及したことについて「日米がグルになって中国の内政に干渉した証しだ」と非難した。すでに米日両政府に申し入れしたという。

中国はアラスカでの協議を「ハイレベル戦略対話」と名付けており、定期開催にしたい意向をにじませる。しかしブリンケン氏は「これは戦略対話ではない。現時点では、こうした取り組みを続けてやるつもりはない」と表明し、対話が中国ペースの時間稼ぎに陥る事態を警戒する。

(杉浦恵里、ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主)

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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別の視点 ブリンケン国務長官は日本、韓国と2+2を行ったが、中国の問題に関して踏みこんだ発言をしたのは日米会談であり、米韓ではそれほど中国が大きなアジェンダにはならなかった。その意味では、対中外交の軸には日米とQuadがあり、米韓は北朝鮮問題に限定的なものになるというニュアンスが強くなった気がする。今日、米中外交トップ会談が行われるが、当日中にブリンケン国務長官はワシントンDCに帰ることになっており、中国に一方的に懸念を伝え、行動変容を求めるという姿勢を貫くことになるのだろう。この会談の前に中国への制裁を強化するというのも、そうしたメッセージの一つ。

2021年3月18日 6:39いいね
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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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ひとこと解説 中国は全人代で海警法を「習近平強軍思想の徹底」と位置づけました。その海警法に加え、中国が「核心的利益」とみなす台湾・香港にまで日米2プラス2が踏み込んだのが「日米がグルになって中国の内政に干渉した」という感情的な発言につながっています。体制のメンツに関わる問題で弱腰の姿勢は見せられません。

一方で、記事にあるようにアラスカでの米中協議を「戦略対話」と呼ぶなど米国との決定的な対立は望んでいない。バイデン政権も中国とはイシューごとに是々非々で臨もうというスタンスなら、現在の応酬は、野球で言えば、まずは最重要問題でインハイの速球を投げて相手をのけ反らせ、次のボールを生かす神経戦ともとれます。

2021年3月18日 7:49いいね
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