米、対中抑止で日本重視 日米2プラス2 台湾有事視野

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『日米両政府は16日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。ブリンケン国務長官とオースティン国防長官は日本との同盟を重視する考えを繰り返し強調した。中国の台頭を受けて日本の戦略的な重要性は高まる。中国は米国への警戒を強めており、日本を挟み二大国がにらみ合う。

「同盟を再確認するだけではなく実行するために日本に来ている」。ブリンケン氏は2プラス2の冒頭で訴えた。オースティン氏も「一緒に自由で開…

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オースティン氏も「一緒に自由で開かれたインド太平洋を守りたい」と続いた。

両氏が最初の外国訪問先に日本を選んだ背景には中国への意識がある。成果文書でも中国の行動について「既存の国際秩序と合致しない」と厳しい表現で批判した。

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直近4回の2プラス2の文書は中国を明示していない。2013年の協議の際は地域の安定や繁栄のため中国に「責任ある建設的な役割」を求める内容だった。この8年の変化は米国の中国観の変容を浮き彫りにする。

ブリンケン氏の初の外国訪問先には欧州も選択肢に浮上していたが見送りとなった。「インド太平洋地域は世界の地政学の中心になっている」。ブリンケン氏は協議後の共同記者会見でこう指摘した。

バイデン大統領は最初に対面で会談する海外の首脳に菅義偉首相を選んだ。日本政府高官によると、米政権に働きかけたのはバイデン政権で新設したインド太平洋調整官に就いたキャンベル氏。「日本を一番に会わせる」と調整に奔走した。

日本への厚遇は期待の表れでもある。バイデン政権はアジア太平洋での中距離ミサイルの配備、中国に頼らない半導体などのサプライチェーン(供給網)の構築で日本の役割拡大を望んでいる。

米国が中国の尖閣周辺での領海侵入に厳しい姿勢を示す視線の先には台湾がある。「台湾への脅威はこれから6年以内に明らかになるだろう」。インド太平洋軍のデービッドソン司令官は9日の上院軍事委員会での証言で中国による台湾侵攻の可能性を訴えた。

海警法の施行は台湾海峡の緊張も一段と高める。「台湾有事に備えて日米がどう協力するのか、綿密な擦り合わせの必要性が増している」。米カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員はこう指摘する。

台湾有事となれば台湾に最も近い沖縄の米軍基地が重要な役割を果たす。米国が東シナ海に積極的に関与する姿勢をみせるのは、こうした差し迫った事情もある。

日本はバイデン政権の発足前後から、米国の意識が東アジアに向くよう働きかけた。

「『自由で開かれたインド太平洋』はトランプ前政権だけのものじゃない。普遍的な価値観だ」。日本政府は事務レベルで接触する際、米側に繰り返しこう説いた。バイデン政権はボトムアップ型の意思決定をするとみて様々な場で伝えた。

オーストラリア、インドを含めた4カ国の「Quad(クアッド)」はその中核をなす枠組みだとも説明した。外務省幹部は「バイデン政権のアジア戦略を一緒につくってきた」と強調する。

一連の働きかけは12日の日米豪印の首脳による初のオンライン協議に結びついた。「自由で開かれたインド太平洋のための共通のビジョンの下で結束している」。「日米豪印の精神」と題した共同声明は4カ国で価値観を共有し、中国に対峙する姿勢を示した。

中国は米国の動きへ警戒を強める。

中国外務省の趙立堅副報道局長は16日の記者会見で日米2プラス2に関し「第三者を相手にしたり、利益を損ねたりしてはならない」と反発した。15日には日米豪印の首脳協議について「排他的なサークルを作るのをやめるべきだ」と批判した。

楊潔篪(ヤン・ジエチー)中国共産党政治局員は18日、王毅(ワン・イー)国務委員兼外相とそろって米アラスカ州まで出向き、日韓訪問後のブリンケン氏に会う。中国の外交トップがわざわざアラスカまで米高官に会いにいくのは異例の形式で、中国の焦りの表れとの分析がある。

中国側にはバイデン政権ならば米国との緊張緩和の糸口をつかめるとの期待があった。その思惑が外れ、米国の出方が読みづらくなっている。

中国外務省は今回の対話を「中米ハイレベル戦略対話」と呼ぶ。米側は戦略対話との呼称や継続性を否定している。それにもかかわらず、こうした名称を使う中国の姿勢からは米国との対話の枠組みがないことへの不安が透ける。

トランプ前政権で米中間の政官のあらゆる対話が途切れた。話し合いを続けて米国の要求をかわしながら対立を回避するのが中国の基本戦略だ。

2月に尖閣諸島周辺の領海に海警局の船が侵入したのは計6日だった。16年8月以来の高い水準だ。中国人民大学の時殷弘教授は「菅政権が米国との軍事協力を大幅に強化し、中国に対抗していることに中国政府が大きな不満を持っていることの表れだ」と解説する。

(ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主、加藤晶也)

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説
この記事のタイトル通りで、「台湾有事」は今ワシントンで最も懸念されているシナリオである。フィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官の上院公聴会での「今後6年以内に中国が台湾を攻撃する可能性がある」との発言も話題を呼んでいる。
中国が実際にどのような政策を展開しているかは別として、アメリカの安全保障戦略はこのような最悪のシナリオに備えて動いている。
2021年3月17日 8:47