市場との対話試されるパウエル議長(NY特急便)

市場との対話試されるパウエル議長(NY特急便)
米州総局 伴百江
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1703S0X10C21A3000000/

『16日の米株式相場は反落。ダウ工業株30種平均は前日比127ドル安と8営業日ぶりに下落した。17日まで開催されている米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策当局の景気へのスタンスを見極めたいとして、市場では売買を手控えるムードが強まった。なかでも市場関係者が注目しているのは、米連邦準備理事会(FRB)が近い将来の利上げのヒントを示すかどうかだ。

1年前のちょうどこの日。新型コロナウイルスの感染が全米を襲い、ニューヨーク州はレストランの営業停止などの経済封鎖に踏み切った。金融市場ではウイルスの猛威を恐れ、株式は投げ売りの様相を呈した。

2020年3月16日の相場は、ダウ平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数の主要指数が前日比12%前後の暴落に見舞われ、証券取引所ではサーキットブレーカー(全ての株式売買を一時中断する措置)が作動した。まだ在宅勤務の始まっていなかった筆者も、オフィスで株式相場がずるずると下落していくさまを息をのんで見守ったことがつい最近のように思い出される。

あれから1年。回復した主要指数は最高値圏で推移する。コロナのワクチンが徐々に浸透し始めて、収容人数の限定はあるものの、レストランの店内飲食や映画館は再開した。ブロードウェーの劇場も4月には再開する予定だ。バイデン政権による1.9兆ドルの経済刺激策が始動し、米国民には3度めの小切手が届き始めている。

景気回復を先取りした株式相場の過熱と緩和マネーの市場への流入を反映した金融市場では、インフレの芽が出始めている。

今回のFOMCでは、FRBがコロナから1年後の経済と金融市場をどうとらえるか、利上げのタイミングはいつかに市場の関心が集中している。FOMCメンバーの金利見通しを示す「ドットチャート」は前回までの会合では、23年末まで利上げはないという見方だった。

市場関係者の間では今回の会合でFOMCメンバーがこの見通しを変え、23年中にドットの中央値がこれまでの0.125%から0.375%程度に上がるとみる向きと、前回と同様に変わらないとみる向きに分かれている。

米資産運用会社ニューヨーク・ライフ・インベストメンツのエコノミスト、ローレン・グッドウィン氏はドットチャートは前回と変わらないと予想するが、「賃金インフレ圧力が高まれば利上げ予想は変わる」とみている。今回の経済刺激策で配布される小切手の経済効果は3、4月の小売売上高に反映するとみられている。グッドウィン氏はさらに、「州・地方自治体の救済と民間企業の景気回復に伴い、これまでレイオフした130万人の公務員が再雇用された場合、雇用情勢の改善で市場参加者はFRBの利上げ見通しを強める可能性がある」と指摘する。

米国野村証券では「仮にドットの見通しが引き上げられた場合、パウエルFRB議長は利上げを前倒しでやることはないと強調する必要がある」(シニアエコノミストの雨宮愛知氏)と指摘する。市場関係者が金利の急上昇を懸念して、金融市場に波乱が広がることを避けるためだ。

コロナから1年たった今回のFOMCではこれまで以上に、パウエル議長の市場との対話が試されるといえそうだ。(ニューヨーク=伴百江)』

図表で見る米連邦公開市場委員会(FOMC)
http://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/rngs/USA-FEDFUNDS-LJA/01005028054/index.html