スペインで表現の自由巡り論争 デモで略奪も

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『【パリ=白石透冴】スペインでラップ歌手の男がテロを肯定する発信をした罪などで収監され、表現の自由を巡る論争が起きている。テロ対策強化を求める声は強いが、行きすぎた取り締まりとの指摘もある。2月中旬には釈放を求めるデモが連日起き、警官隊との衝突や略奪に発展した。

スペインの裁判所は12日、ラップ歌手パブロ・ハセル受刑者が罰金を支払わなかったとして、刑期を2年9カ月から4年1カ月に延長した。同受刑者は2014~16年のツイートや歌でスペイン国王を「マフィア」、警官を「移民を拷問している。これが民主主義だ」などと罵ったことが不敬罪やテロを肯定した罪に当たるとして禁錮刑の判決を受け、2月に拘束されていた。

直後から出身地に近い北東部バルセロナを中心に抗議の声が高まり、数千人が参加するデモが連日発生した。2月下旬には参加者が「表現の自由を」などと叫んで歩き、警官隊に物を投げつけたり、ゴミ箱に放火したりした。デモは首都マドリードなどでもあり、服飾店などでの略奪事件も多数起きた。映画監督など芸術関係者約200人も受刑者への支持を表明した。

議論の一つは、他人に危害が及ぶ恐れがはっきりしない場合に、表現だけを根拠に処罰するのが妥当かという点だ。同受刑者は政府に批判的な発信を繰り返していたが、テロ組織などとの明確なつながりは見つかっていない。

英国やフランスでもテロの肯定を取り締まる法制があるが、表現の自由と両立しないとの指摘もなされる。一方でSNS(交流サイト)がテロ思想の拡大に使われる例も多く、線引きは悩ましい問題だ。スペイン紙パイスによると、同国政府は明確な危険がある場合のみ処罰の対象とするなどの法改正の検討を始めた。

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明白かつ現在の危険
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『沿革
シェンク対合衆国事件

「明白かつ現在の危険」の基準は、1919年のシェンク対アメリカ合衆国事件(Schenck v. United States, 249 U.S. 47 (1919))の連邦最高裁判決において、ホームズ裁判官(Oliver Wendell Holmes)が定式化した。

シェンク対合衆国事件とは、第一次世界大戦中、徴兵制度に反対するパンフレットを配布した社会主義者チャールズ・シェンク(Charles Schenck)が、防諜法違反の嫌疑で起訴された刑事事件。シェンクは、防諜法がアメリカ合衆国憲法修正第1条の保障する言論の自由を侵害し、違憲無効であると主張した。連邦最高裁はこの主張を退け、当該言論の内容が違法行為を引き起こす「明白かつ現在の危険」を有するときは、その表現行為を刑罰によって制約しうると判示した。

表現の自由は、民主主義社会において重要な人権であることから、連邦最高裁はその後、この原則を慎重厳格に適用した。しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発すると、「表現の自由の濫用は国家的利益を損ねる」という主張が起こり、表現の自由の規制に対する厳格な態度が批判されるようになった。

ブランデンバーグ対オハイオ州事件

1969年、ブランデンバーグ対オハイオ州事件(Brandenburg v. Ohio, 395 U.S. 444 (1969))の判決において、「明白かつ現在の危険」の基準の新しい定式化といえるブランデンバーグの基準(ブランデンバーグ・テスト)が示された。

ブランデンバーグの基準とは、「唱導が差し迫った非合法な行為を扇動し、若しくは生ぜしめることに向けられ、かつ、かかる行為を扇動し、若しくは生ぜしめる蓋然性がある場合を除き、唱導を禁止できない」とする原則である。 』

『「明白かつ現在の危険」の基準

「明白かつ現在の危険」の基準は、表現内容を直接規制する場合に限定して用いられるべき、最も厳格な違憲審査基準である。この基準は、次の3要件に分析される。

1、近い将来、実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白であること
2、実質的害悪が重大であり時間的に切迫していること
3、当該規制手段が害悪を避けるのに必要不可欠であること

この3要件を満たしたと認められる場合には、当該表現行為を規制することができる。1と2の要件は「重大な害悪の発生に明白な蓋然性があり時間的に切迫していること」とまとめることができる。

この基準は、シェンク対合衆国事件判決においては、表現行為を禁止する法令(本件では防諜法)を解釈適用する際に、特定の表現行為が禁止に牴触するか否か判断するための基準であった。しかし、その後、法令そのものの合憲性判定基準として用いられるようになった。 』