[FT]独与党、メルケルなきメルケリズムの道(社説)

[FT]独与党、メルケルなきメルケリズムの道(社説)
新党首は中道路線を維持するも看板不在で求心力低下は必至
FT
2021年1月19日 13:15 [有料会員限定]
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM190BO0Z10C21A1000000/

『ドイツで「ポスト・メルケル」の時代が、二度目の幕を開けた。当初、後継者候補として与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首に選ばれたメルケル首相側近のアンネグレート・クランプカレンバウアー氏が就任1年余りで辞任、新たな人物がメルケル氏の後継候補となった。16日の党首選で、メルケル首相に近く、その中道路線の継承を約束するアルミン・ラシェット氏が新党首に選ばれた。

CDUは、最有力の対抗馬だったフリードリ…

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CDUは、最有力の対抗馬だったフリードリヒ・メルツ氏の下で保守化にかじを切るより、従来路線を維持することに賭けた。独西部ノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州で首相を務めるラシェット氏は、メルケル氏に連邦議会選で4回連続の勝利をもたらしたオープンな中道路線を共有している。9月26日の連邦議会選を前にCDUの世論調査での支持率は高い。だが、程なく同党はその最強の人材であるメルケル氏不在の運営を迫られることになる。

ラシェット氏はメルケル氏の後を継ぐ次期首相の最有力候補ではあるが、その将来の地位が約束されているとは言えない。CDUが同党の姉妹政党でバイエルン州を地盤とするキリスト教社会同盟(CSU)と共同で首相候補を擁立するのは3月。全国的な選挙戦を勝ち抜ける手腕と知名度がラシェット氏にあるか疑問視する向きは多い。ラシェット氏がチャンスをものにするためには、早急に自らの存在を知らしめる必要がある。バイエルン州のトップとしてはるかに高い人気を誇るCSUのマルクス・ゼーダー氏に、首相候補の座をさらわれる可能性もある。

深刻な党内分裂

ラシェット氏にとって最優先の課題は党内の結束だが、これは容易ではない。党首選での自身の得票率は53%で、メルツ氏が47%を獲得しており、党内に保守路線の鮮明化を求める勢力は相当大きい。メルツ氏は2018年の党首選で敗北した後、鳴りを潜めていたが、今回は今後の党運営に影響力を行使する決意を見せている。16日の落選後、経済相として入閣できるようラシェット氏に求めた。メルケル氏は断った。

2つ目の課題は、メルケル氏が舞台を去ろうとする中でCDUの支持率を維持することだ。3月には南西部バーデン・ビュルテンベルク州と西部ラインラント・プファルツ州で、重要な州議会選挙が控えている。同時並行してラシェット氏は、NRW州で新型コロナウイルスの感染対応を率いる責任がある。昨年は初めのうち指導力をあまり発揮できず、その後はより厳格なロックダウン(都市封鎖)を呼び掛けて世論の支持を得たメルケル氏に追随した。現状では、ワクチン普及の成否が待ったなしで政治生命の明暗をはっきりさせる。

最後に、ラシェット氏はCDUの政策綱領を改め、メルケル政権が残した課題に対処する必要がある。国内インフラの老朽化、デジタル技術の遅れ、積極性に欠ける気候変動対策目標などが上げられる。石炭産業を支持し、中国やロシアに寛容なラシェット氏のスタンスは、連邦議会選後にCDUの連立パートナーになるとみられる緑の党との連携の障害になりかねない。ただメルツ氏よりは、ラシェット氏のような穏健派の方が、緑の党と協力できる余地は大きい。

CDU、ドイツ、そして欧州にとっては、メルツ氏がトップに立たない方がよいだろう。経済や社会に関するメルツ氏の見解は、過去の時代にとらわれている。欧州連合(EU)におおむね好意的とはいえ、メルツ氏陣営が連邦議会選でEUに懐疑的な極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」から支持者を取り込もうと緊縮的な財政・金融政策に傾斜すれば、厄介な事態を招きかねない。フランスびいきのラシェット氏なら、メルケル氏の慎重な欧州主義を受け継ぎつつ、こじれた独仏関係を修復できる可能性がある。

だがその前に、ラシェット氏は党員と国民の信頼を獲得しなければならない。彼は党大会で16日、ドイツ人の多くがまず選好するのはメルケル氏であり、CDUはその次だという不都合な真実を知らしめた。メルケル氏抜きでは、CDUにも、ラシェット氏にも、明るい未来が保証されているとは言えない。

(2021年1月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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