[FT]債券下落が予見する世界

[FT]債券下落が予見する世界
米国債が安全避難先である時代は過去に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM110H70R10C21A3000000/

『(本稿の筆者チュシュカ・マハラジ氏は、米JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マルチアセット・ストラテジスト。)

年明けからの債券下落に、今後の展望を思って身が引き締まる思いをしている投資家も少なくないだろう。

マーケットは大きな転換期に入った。ここ9カ月間は中央銀行による異例の金融緩和が最大の材料だったが、これからの1年は経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に関心が移る。その過渡期…

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その過渡期にあって、債券相場は調整局面に入る。

金融政策、財政政策の組み合わせが変化するなかで、米国債は安全確実な資金の振り向け先とは言えなくなってきた=ロイター
調整は既に始まっている。債券全体のボラティリティー(変動率)が上昇し、米長期国債の価格は年初来で12%あまり下落した。米国の大規模な財政出動が、債券相場の大きな下押し要因になっている。

利回りの急上昇に相場調整の無秩序さを感じる向きもあるかもしれない。だが、忘れてはならないのは、その上昇は経済成長の見通しが上方修正されたことを織り込んでいるということだ。これは好ましいことだ。

しかも、現状で金融市場がタイトだとは言い難い。インフレ要因を除いて算出した米10年債の実質利回りは依然かなりのマイナス域にある。リスク志向の変化に敏感な資産のほとんどは不安定な債券相場には動じていない。バリュー(割安)株は堅調で、小型株も過去最高値に近い水準で取引されている。

「恐怖指数」とも呼ばれ、投資家心理を測るとされる米株の変動性指数(VIX)ですら、非常に低い水準にとどまっている。仮に金融市場がタイト化し始めれば、中央銀行が市場の混乱を抑えるために口先介入し、過渡期のボラティリティー(変動率)は緩和されるだろう。

とはいえ、債券投資家にとって、この数週間には、単に大変な時期ということを超えた意味がある。直近の相場動向は、コアな債券投資家が今後直面する課題をタイムリーに浮き彫りにしているのだ。世界の景気が次のサイクルに入ろうとする中、これまでと違ったリスクが台頭している。継続的な財政出動、インフレリスクの高まり、金融政策による下支えの縮小といった見通しが相まって、国債が資金の安全な避難先としての役割を果たすことが難しくなっている。

投資家は既にこれに気づき、動き始めている。JPモルガン・アセット・マネジメントの顧客1500人あまりを対象とした最近の調査では、回答者の60%超が、先進国の国債の運用比率を下げている、もしくは、ボラティリティーに対してより積極的な対応策を取っている、と答えた。

まず、先進国の国債は今買っても利回りが低いため、市場のストレスが増大した時に利回りが低下(価格は上昇)して投資ポートフォリオの減価を防ぐ余地が限られる。

そのうえ、ポリシーミックス(政策の組み合わせ)も変化している。経済対策として財政政策の役割が拡大する一方で、金融政策の側はインフレ見通しの高まりを重視して慎重になっている。この状況が、債券利回りの低下に歯止めとなっている。

景気過熱へのヘッジにならない

端的に言えば、未曽有の景気刺激策やインフレ再燃で経済成長が加速し、中銀が流動性を支えてきた手を緩める可能性が高くなっている。投資家の間では、おそらく、経済の回復が不十分に終わるリスクよりも、景気が過熱するリスクへの警戒感の方がより強いと思われる。国債での運用比率が高ければ、懸念される景気過熱へのヘッジは不十分になる。

今のところ、世界各国の中銀が急激に引き締めに転じる可能性は低そうだ。だが、極めて緩和的な金融政策が相場に織り込まれた今の状態では、微妙な見直しも債券市場に大きな変動を引き起こしかねない。わずか数週間で米2年債と米10年債の利回りに2倍の差が生じたことは、このマーケットの敏感さを的確なタイミングで警告している。

投資家はこの新たなリスクにどう対処すべきだろうか。景気の力強い回復を前提にした株式のポジション形成は合理的だ。インフレに連動する資産への投資配分を増やし、成長の加速にかけるのも適切だろう。流動性の低い資産への投資を受容できる投資家にとっては、インフレに見合った現金収入を得られるインフラや不動産などの実物資産が魅力的な投資対象になる。

2020年3月に市場で起きた大きな変動は、これらの資産にとって実質的に初めての本格的な試練となった。グリーンエネルギー関連や、IT(情報技術)を駆使した物流ソリューションへの投資が逆風に耐える強さを示したことは特筆に値する。

JPモルガン・アセット・マネジメントがさまざまな資産の長期的なリターンを調べた年次調査によると、米国の主要な不動産は今後10~15年以上にわたって年平均5.9%の運用益が見込まれる。その80%強は良質で安定した定期収入からもたらされる。不動産投資のレバレッジ(借り入れへの依存度)は金融危機の時に比べてはるかに低く、投資家はこうした安定収入に一段と引き寄せられる、と我々は予測している。

市場の中心材料が、金融政策による下支えから経済のファンダメンタルズに移れば、国債は従来のような安全資産としての役割を果たすことができなくなる。このリスクが視野に入ってきた今、投資家にとって、ポートフォリオの安全源の多様化を進める以外に道はないだろう。

By Thushka Maharaj

(2021年3月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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