[FT]バイデン政権の経済対策が目指す格差の是正

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『バイデン米大統領が掲げた1兆9000億ドル(約210兆円)の経済対策法案は主に、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で打撃を受けた米経済の回復の加速を目指している。だがこの法案には、世界一の経済大国である米国での経済格差を縮めるという第2の目的がある。

米政府による巨額の新規財政出動には、低・中所得世帯を直接対象とした大規模な所得移転が含まれる。バイデン政権にとっては、所得格差と貧困と…

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バイデン政権にとっては、所得格差と貧困という、根深いうえに新型コロナでさらに悪化した問題の是正に向けた試みの第一歩となる。

バイデン氏は貧富の差がさらに広がる「K字回復」がトランプ政権下で進んだと批判した2020年の大統領選挙以来、より強くバランスの取れた経済の創出への取り組みを政策の中心に据えている。

だが08年の世界金融危機以来、民主党の政治家や左派エコノミストは経済格差の縮小を目標に掲げながらも実現できないでいる。

「問題をこの場で食い止める」

大統領経済諮問委員会(CEA)のヘザー・ブーシェイ委員は、「今回の経済対策は、景気回復に向かうなかで著しい格差が生じないように、問題を今この場で食い止めることを目指して設計されている」とフィナンシャル・タイムズ(FT)に語った。

「このパンデミックは我が国の経済と社会に影響を及ぼしてきたが、最上層にいる人の多くはびくともしない一方、底辺の人々は深刻な貧困と苦境にあえいでいる」

バイデン氏の経済対策は、危機の衝撃を吸収するだけの所得や資産を持たない米市民を幅広く直接救済することに重点が置かれている。対して企業や市場に対する支援は限定的だ。

年収7万5000ドル未満の個人1人につき1400ドルの現金が直接支給される。ただし年収がそれ以上の場合は急勾配で減額され、8万ドル以上は支給対象外となるため、上位1%の世帯には支払われない。

子育て世帯への税額控除は子どもの貧困を5割減らす見通しで、失業給付を週300ドル加算する特例措置も9月まで延長される。学校の再開やワクチン接種に対する追加の財政措置は、両方とも遅れている低所得地域に対しては特に役立つと期待される。20年の民主党の大統領予備選でバイデン氏と候補指名を争った左派のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)でさえ今回の経済対策を歓迎している。

対人間隔を確保するため一部テーブルを使用できないようにした飲食店(2020年11月、カリフォルニア州)=AP

サンダース氏は6日、経済対策法案に賛成票を投じ、「この国の現代史上、勤労家庭の利益となる最も重要な法律だ」と述べた。「米国民は困窮している。この包括的なプランは直面する無数の危機に取り組む上で大いに役立つだろう」

目玉の支援策が21年から22年にかけて徐々に期限が切れるため、バイデン氏の経済対策の効果は一時的なものにとどまる。そのため、不均衡縮小には米経済の抜本的な構造改革がまだ大幅に足りないと政治家やエコノミストは口をそろえる。

バイデン氏は大統領選挙期間中、富裕層や企業への増税を含めた一連の経済格差是正策を公約に掲げたが、政権がインフラ支出を中心に据える予定の次回経済対策でこうした対策をどれだけ押し出すかは不透明だ。バイデン氏の選挙公約では教育・子育てや低所得コミュニティーへの大型投資も掲げていたが、これには人種間格差を含む固定化された不平等に歯止めをかけるという意図も込められている。

「コロナ前に戻る 」

元米連邦準備理事会(FRB)エコノミストのクラウディア・サーム氏は、「(この経済政策法案は)新型コロナのせいでこれ以上格差が広がらないようにすることが主な目的だ」と述べる。「我々はまず(コロナ感染拡大前の)20年2月に戻らなければならない。建設事業はそこから可能だ。格差が少なく、強固なセーフティーネットがあり、子どもたちをはじめ全ての米国民に多くの機会が開かれたより良い場所に橋を架ける。それが次の経済対策だ」

世論調査ではバイデン氏の経済対策に対する支持率は高いものの、共和党議員はこの対策がプラスの影響をもたらすという主張を一切受け入れていない。

ミッチ・マコネル共和党上院院内総務は6日、「これほど無計画で、これほど厳密さの欠けたやり方に上院が2兆ドルを支出したことは今までにない」と述べ、バイデン氏の経済対策を「我が国にとって莫大な機会損失」だと呼んだ。

また、FRBが目標とする平均2%を大幅に超えるインフレを不要に引き起こす恐れがあるうえ、現段階の景気状況では過剰な対策だと懸念するエコノミストもいる。

米アリゾナ大学の経済学者プライス・フィッシュバック氏は、「これだけの予算を今、間違った時期に支出しようとしているように思える。米国はすでに回復期に入った」と話す。「民主党がしているのは、社会福祉制度を欧州並みに合わせようという試みだ」

だが、政府の景気対策は大規模でなければならず、もし利益が幅広く行き渡らなければ無意味になるということに、バイデン政権はほとんど疑いを持っていない。

「過去10年間、我々はグレート・リセッション(08年の金融危機に端を発した景気後退)から多くを学んだ。その一つが、景気後退を芽のうちに摘み取らず必要なことをしようと努力しなければ、傷は何カ月も、場合によっては一生残るということだ」とCEAのブーシェイ氏は語る。「パンデミックの直撃以降、不平等が我々の社会と経済の至る所にもろさを生み出したのを見てきた。そして、それが全員を一層脆弱にしたのだ」

By James Politi

(2021年3月8日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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