[FT]国の介入 支持する米国民 コロナ禍で変化あらわに

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 ※ これは、ちょっと注目しておいた方がいい記事だ…。

 ※ 「社会」や「組織」の変化というものは、外部から強いられて生じるよりも、むしろ、内部の構成員の「意識・認識の変化」によって生じるものだ…。

 ※ あれほど、「個人の尊重」「個人の判断・見解の尊重」にこだわった、米国人の意識が、コロナによって「政府の介入」を肯定・受容するように変化したとしたら、重大変化だ…。

 ※ それが、どの程度継続するものなのか、どういう「深度」で浸透していくものなのか、注視して行く必要がある…。

『新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、世界各国に対する固定観念を覆している。理性を重視し、細菌学を主導してきたフランスで、ワクチン反対派が大群をなしている。自由主義を尊ぶ英国人が、世界と比較しても過酷と言えるロックダウン(都市封鎖)に甘んじている。

ドイツは滑らかな走りをみせる高級車アウディを具現化したような国というイメージを多くの人が持っているかもしれない。しかし、同国のワクチン接…

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しかし、同国のワクチン接種ペースは遅々としており、そうしたイメージからは程遠い。だが、コロナ禍で最も大きく印象が変わったのは米国だろう。なにしろ政府による介入を渇望するようになったのだから。

巨額投入を党派問わず支持

バイデン米大統領の経済対策法案「米国救済計画」に対する支持の強さは歴史的といっても過言ではない。確かに、法案は2月27日に米下院で僅差で可決された。しかし、世論調査によると、法案は76%の米国人が支持しており、しかも民主党、共和党のいずれでも賛成派が多数を占める。米国が社会的に分断されている国であるという通説からかけ離れている。

新型コロナ対策のための経済対策はトランプ前政権時にも2回実施され、ここ1年で3回目となる今回の支出は1.9兆ドル(約200兆円)にも及ぶ。しかも、米国経済が成長していて、バイデン政権は正当でないと、誤って疑っている人がいるにもかかわらず法案は通過した。大盤振る舞いを懸念する声は至るところでみかけられるが、庶民は気にかけていない。

世論調査をみると、支出を増やすという総論に賛成するだけでなく、最低賃金の引き上げといった、具体的な内容への支持も強い。最低賃金引き上げは、法案を上院で可決させるために除外され実現が危うくなっているが、新型コロナの経済対策と同じくらい重要な経済改革だと受け止められているのだ。

共和党の一部議員は、救済計画が米国に左傾化をもたらす「トロイの木馬」だと語っている。しかし、中身が歓迎されているのであればこのたとえ方は適切だとは言えない。実際、リバタリアン(自由至上主義者)の楽園とみられることもあるフロリダ州でさえ、昨年11月の住民投票で時給15ドルへの最低賃金引き上げを可決している。

金融危機時と比較すると顕著

パンデミックは、裏付ける証拠が断片的にしかなかったある潮流を浮き彫りにした。米国は今世紀のどこかの段階で、福祉国家を目指すとまでは言わないとしても、国民が緩やかに社会民主主義を志向するようになったのだ。

表面でそのようにみえないのは米国の面倒な立法制度、とりわけ、多数支配にあらがおうとする上院の仕組みによるところが大きい。庶民が「社会主義」や欧州流の制度に根深い嫌悪感を抱いているからではない。

誤解がないように言っておくと、米国民はデンマークのような手厚い福祉制度は求めていない。米国民の願望に関するアンケートで、経済格差の縮小の優先順位は低い。高い税率に対する許容度も低い。

だが、米国の有権者の4割が必ず共和党に投票するような状況であるにもかかわらず、そうした有権者は共和党が掲げる西部開拓時代さながらの個人主義は支持していない。米国はかつて先進国のなかで思想的に例外だったかもしれないが、今は度合いが異なるだけだ。

こうした変化は、前回米政府が経済を下支えした時のことを思い出すと感じ取れる。2008年の世界金融危機後の景気刺激策は、可決されても大して喜ばれなかった。実際、法案が可決された月に、大きな政府は災いを招くとして保守派「ティーパーティー(茶会)」運動が立ち上がった。

当時と心情的に違う理由は、割と簡単に説明できる。今は、最も保守的な有権者でさえ、パンデミックはすべての人が被害者で罪を問われるべき人はいない災難だと認識している。金融危機の前に、サブプライムローン(低所得者向け住宅融資)を通じてフロリダ州タンパ郊外に住宅を買ったがローンを払えなくなった人のように、惨事の責任を押し付けられる対象はいない。

現在の国の財政介入に対する許容度は、08~09年当時より高いだけではない。介入の是非よりどれだけ投入するか、その度合いが焦点となっている。エコノミストらは法案で計上された予算が多すぎたかどうかを議論しているものの、バイデン氏が国民の支持を失わずにあとどれくらい盛り込めたかが最大の論点だ。あるいは満場一致に近いような賛同を得ている企業や家計に対する州政府への金銭的支援に、先々、終止符を打つのがどれほど難しくなるかが議論されている。

米国はパンデミックによって社会民主主義を望むようになったわけではない。今や有権者層の最大セグメントになり、資本主義に幻滅してきたミレニアル世代(1981~96年生まれ)は常に志向してきた。10年の医療保険制度改革法(オバマケア)成立の頃にもそうした傾向はみられた。同法は導入当初は不人気だったが、10年代が終わる頃には、法に手を加えることのほうが不人気になっていた。

コロナ禍のこの1年間で、そうした数十年間のトレンドの積み重ねが露呈した。その結果、米国は自由市場を尊ぶ伝説の異端児ではなく、国の介入については、平均的な経済協力開発機構(OECD)加盟国のようにみえる国へと変貌を遂げた。

消え去ったある種の米国例外主義

米作家のゴア・ヴィダルが「神話なくして国家なし」と語ったように、各国は正確とは言えない自国の国家像を抱いてもいい。だが、国の統治を目指す政党は、国民を冷静にみつめなければならない。

共和党は何十年も前から、経済的な個人主義について米国は他の国とは明確に違うとうたってきた。保護主義を打ち出したり、軍の膨大な予算を通じて企業を支援してきたりした事実を差し引いてもなお、米国の個人主義は欺瞞(ぎまん)に満ちていた。現在は明らかに虚構だとわかるようになっている。

パンデミックが米国をどう変えるかについては、多くの人が今後持論を展開するだろう。一方で、実際どうなったかという問いに対する答えは簡単で、同時に衝撃的でもある。政府介入を嫌う国、という神話が過去1年間で消え去り、それとともに、ある種の米国例外主義も消え去ったのだ。

By Janan Ganesh

(2021年3月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

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ジャナン・ガネシュ
Janan Ganesh 英国生まれ。英誌エコノミストで政治担当記者を5年した後、FTに。主に英政治に関するコラムを執筆してきたが、2018年6月に米ワシントンに移り、米政治についての論評を毎週担当。著書に英元財務大臣ジョージ・オズボーンについて著した「The Austerity Chancellor」などがある。

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