黒田氏発言、米株上昇を誘発

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD00003_Z00C21A3000000/

『週末に1兆9000億ドル規模の追加コロナウイルス対策に議会通過の見通しが立ち、8日のニューヨーク(NY)市場寄り付き前には10年債利回りが1.6%を再突破していた。米ダウ工業株30種平均の時間外取引でもマイナス圏で推移していた。

そこに著名投資家デビッド・テッパー氏がメディア経由で発言。「大きなリスクは除去された。今、株価に弱気にはなれない」と強気の見解を述べた。

その理由として、日本人機関投資家が米国債買いに走り、10年債利回りも現水準で安定方向に向かう可能性を指摘した。

特に「長期金利変動幅を大きく拡大することが必要とも思っていない」との黒田東彦日銀総裁による衆院財務金融委員会での発言を重視。日本の生保など機関投資家は、今後、米国債購入に動かざるを得ない。為替ヘッジコストも含め、彼らにとって非常に魅力あるイールド(利回り)になるからだ、と述べた。

このカリスマ発言は、ウォール街でも、ただちに話題になった。

テッパー氏の発言で株価が動いた事例は少なくない。

特に週明けで長期金利上昇により市場が方向感を模索中のタイミングでのカリスマ発言なので、格好の買い材料となった。ダウ工業株30種平均もマイナス圏からプラス圏に転換。その後、上昇して306ドル高で引けた。

日本人の視点では、米国のカリスマ投資家が週明けの日本市場をフォローしていることは興味深い。テレビの司会者が「ジャパン、ジャパン」と連呼するなかで、他の出演者が「ジャパン??」とキツネにつままれたごとき表情を示していたことも印象に残った。

なお、市場の中期的関心は次に控えるバイデン政権のインフラ・グリーンエネルギー関連「景気刺激策」に徐々にシフトしている。まだ、実質的に白紙に近い状態だが、1兆ドル規模の追加財政出動となる可能性もあり、ドル金利への影響も懸念される。民主党はコロナ救済案を単独強行採決したので、今回の景気刺激策は極力共和党と話し合いの姿勢を見せている。それゆえ時間はかかりそうだ。

仮に、さらに1兆ドル財政投入が追加された場合、それでもテッパー氏の予言どおり米10年金利が基本的に安定化の方向で収れんするのか。そのレベルは1.5%なのか、1.8%なのか。2%ともなれば、さすがに米連邦準備理事会(FRB)も動かざるを得まい。

そして、日本の機関投資家が荒れるドル金利の平定役となるのか。カリスマのご託宣が試される時期が来そうだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
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