バフェット氏、神通力に陰り? 「現実とずれ」賛否両論 40年来の株主の見方は

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 ※ 現実世界においては、「神様」も「達人」も、存在しない…。

 ※ あるのは、「自分の頭」と「自分の人間性」…だけだ…。

『米著名投資家ウォーレン・バフェット氏(90)が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが2月末、恒例の「株主への手紙」を公開した。だが、その内容への賛否が割れている。世界や市場を揺さぶった新型コロナウイルスについて触れず、米国の未来に極めて楽観的な見方を示したことに「現実離れ」「内向き思考」などの批判や失望の声が挙がったのだ。バフェット氏の神通力が陰り始めたのか。米メディアやバフェットウオッチャーの…

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米メディアやバフェットウオッチャーの投資家らの声を追った。

薄くなる「手紙」、コロナ言及1回のみ

「コロナも政治問題も語らないバフェット氏は(現実から)ずれている」。米ブルームバーグ通信はこんな見出しで、バフェット氏の手紙の内容を巡る市場関係者の論争を報じた。

表などを除き、正味13ページと年々短くなる手紙で「Covid-19」の単語が登場したのはわずかに1回。バークシャー傘下の家具会社が「コロナのためにしばらく休業しなければならなかった」という記述だけだった。

コロナ禍の損害をカバーする傘下の保険会社の損失や、コロナがもたらした米経済への打撃、上昇を続ける株式市場などについては一切、語らなかった。メリーランド大学金融学部のデビッド・キャス教授は「米国の未来について極めて楽観的な見通しを持つバフェット氏は、コロナに触れることで、その予測から目をそらしたくなかったのではないか」と分析する。

10代のころから、バフェット氏の手紙を毎年読むのを楽しみにしてきたという、米資産運用会社バーミリオン・プライベート・ウェルス創業者のジェームズ・バーミリオン氏は「バフェット氏はあらゆる災難や世界の大事件を経験しながら会社の戦略を遂行してきた。だが今回はコロナ疲れでこの話題をあえて避けたようだ」とみる。

バフェット氏は過去の大事件や災害でどう発言してきたのか。米国や世界を震撼(しんかん)させた、2001年9月11日の米同時テロ後の「株主への手紙」では、「テロリスト/テロリズム」という言葉を10回にわたって言及。「大規模なテロがもたらす損害の可能性を見逃していた」として、傘下の保険ビジネスをリスクにさらした点を率直に反省した。今回と大違いだ。

「自社株買い」巡り、内向き志向の声
さらに市場関係者が意外感をもって受け止めたのが、自社株買いの礼賛だ。バフェット氏は手元資金について「株主還元よりも投資に使いたい」と主張してきた。だが18年以降は方針を転換し、徐々に自社株買いを増やしてきた。実際、20年10~12月期に実施した自社株買いは90億ドル(約9600億円)と2四半期連続で過去最大を記録した。

もっとも、手紙では「米国の最高経営責任者(CEO)は高値でもやみくもに自社株買いをするが、我々はその逆をやる」と指摘。安易な自社株買いへの反対姿勢を貫く。一方、保有するアップルが割高な株価水準で自社株買いを実施したことについて、手紙で「自社株買いで株数が減ったおかげで、魔法のように我々の持ち株比率が増えた」と好意的な見方を表明した。

これに対し、自社株買いで投資リターンを向上させる「内向き思考」の姿勢との批判もある。ただ、米資産運用会社オズボーン・グローバル・インベスターズのホームズ・オズボーン社長は「市場金利があまりにも低い中、米国債利回りを上回る投資リターンを確保するにはバークシャーの自社株を買うのが近道。相場全体が割高になる今、自社株買いで一定のリターンが得られる」と、バフェット氏を擁護した。

バフェット氏への批判や失望の声は、期待の高さの裏返しでもある。コロナ禍が収束せず、株式市場に波乱の雰囲気が漂うなか、人々は「賢人」の金言をいまなお必要としているようだ。

(ニューヨーク=伴百江)

40年来の株主の見方は…
「自社株買いは効率的 配当は不要」
ロバート・ジョンソン氏(クレイトン大学ハイダーカレッジ・ビジネススクール教授)

クレイトン大学のロバート・ジョンソン教授

 バークシャー・ハザウェイの地元オマハで育った私は、ウォーレン・バフェット氏の子息のピーター氏と高校が同級生だ。私が務める大学はバークシャーの本社からわずか1マイルのところにある。過去40年超にわたりバークシャーの株主でもある。

 今回の株主への手紙で触れた自社株買いについて、1984年の手紙でバフェット氏は「会社の市場価値が事業価値を下回る時には自社株買いを実施することで経営者は株主への利益還元の姿勢を示すことができる。経営者の持ち分を増やすためにやる自社株買いはもってのほかだ」と述べている。

 バフェット氏が強調しているのは、株価がどんな水準でも自社株買いを実施するということではない。昨年までに株式相場がバブル的に上昇している状況で、バークシャー株は相対的にも絶対的にも割安になったことを踏まえれば、バフェット氏が積極的に自社株の規模を拡大させているのは納得がいく。

 自社株買いに加え、バークシャーが株式を保有する会社が自社株買いをすることもバフェット氏は前向きにとらえている。例えば、2004年~08年にバークシャーが大規模に投資したコカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、アンハイザー・ブッシュ、バーリントン・ノーザン・サンタフェ、クラフトの5社は、自社株買いを活発に実施した。各社の純利益のそれぞれ34%、76%、66%、53%、55%に相当する金額を自社株買いに充てた。

 20年の年次報告書でバフェット氏はアップルが活発に自社株買いを実施したおかげでバークシャーのアップル株保有率が高まり、さらにバークシャーが過去2年半にわたり自社株買いを実施したことで、株主はアップルの資産と将来の利益の10%を間接的に保有したことになると指摘した。

 バークシャーが配当を支払わない点を批判する向きもあるが、私から見れば不当な批判だと思う。長期投資家の立場として『配当は必要ない』といいたい。余剰手元資金を使うには、配当よりも自社株買いの方が効率的だ。自社株買いでバークシャーの株保有率を引き上げてもらう方が、配当をもらって課税されるよりも有利だ。昨年1年間に私のバークシャー株の保有比率は何もしなくても5.2%拡大した。

[日経ヴェリタス2021年3月7日号]

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