[FT]中南米 コロナで貧困が10年前に逆戻りの危機

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『国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC) は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて貧困者と失業者が急増している中南米が10年以上前の状況に逆戻りしかねないと警鐘を鳴らした。

ECLACのアリシア・バルセナ事務局長 は、同地域で「持続不可能な」水準にまで広がった格差を解消するには早急に新しい福祉体制を確立する必要があると述べた。

国連地域委員会が「変革」を呼びかけ

「(新型コロナ前の)かつ…

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「(新型コロナ前の)かつての状況には戻りたくない。これからは平等と持続可能性を軸に復興を図り、大きな変革を果たしていかなければならない」 。同事務局長は4日、チリの首都サンティアゴで開いた記者会見で発言した。

中南米は新型コロナの感染が拡大する以前から、超低成長と社会の硬直が続く「失われた10年」に苦しんでいた。今では、人口が世界のわずか8.4%にすぎない同地域で新型コロナの死者数が世界の27.8%を占め、途上国・地域で最悪の状況になっている。大勢の犠牲者を出した2020年には、地域全体の実質域内総生産(GDP)が平均7.7%減少したともみられている 。

新型コロナの感染拡大が社会に及ぼした影響に関するECLACの報告書によると、中南米で極度の貧困生活を強いられている人は7800万人に急増し20年ぶりの高水準に達した。貧困層は2億900万人と、域内人口の3分の1を超える。10人に8人が「貧困に対して脆弱」な状況におかれているという。

中南米の各国政府は新型コロナに伴う甚大な影響を軽減するため、860億ドル(約9兆2800億円)規模の支援策を実施した。バルセナ事務局長は支援が不十分だと指摘し、あらゆる人に最低限の所得水準を保障する「ユニバーサル・ベーシックインカム」を緊急導入する方向に向かうべきだと訴えた。

ECLACは中南米が世界で最も格差が広がっている地域とみており、新型コロナ禍で域内の状況はさらに悪化している。富裕層は海岸沿いに立つマンションや郊外の一軒家、都市部の広々とした邸宅、海外の別荘からリモートワークをする一方、貧困層のほとんどは人口密度の高い都心部で生活費を稼ぐために現場で働き続けなければならない。

同地域の20年の失業率は10.7%と、前年から2.6ポイント悪化した。その影響が万人に等しく広がっているとは限らない。

大きな影響を受けた女性と子ども

バルセナ氏は「新型コロナ禍で最も影響を受けたのが女性であることはまぎれもない事実で、女性の労働市場への参加という点では10年後退した」と指摘する。若年層や非公式経済就業者への打撃も大きい。

世界銀行が4日に公表した調査報告書でも、中南米の女性が新型コロナ禍で職を失う可能性は男性より44%高いと試算されている。一部で再雇用が進んでも、男女差は解消されていない。

子どもへの影響も深刻だ。国連児童基金(ユニセフ)が4日に公表したデータによると、中南米・カリブ地域では新型コロナによる休校が世界で最も長期化し、児童・生徒の6割近くがまるまる1学年、学校に通えない状況という。

ユニセフの中南米・カリブ地域事務所代表のジーン・ゴウフ氏は「中南米・カリブ地域では、子どもや親、社会全体が受けた被害は世界のどの地域よりも悲惨で広範囲にわたっている」と述べた。

比較的恵まれた子どもは自宅からオンラインで授業を受けることもできるが、インターネットに接続できない貧困家庭の子どもはそれもできない。ECLACのデータによると、所得水準が下位20%の世帯では、コロンビアで80%、メキシコで89%がインターネットに接続できないという。

しかも、同地域ではワクチン接種も進んでいない。各国とも総じてワクチンが不足しているためで、同地域は22年に入ってもしばらくは集団免疫を獲得できないとみられており、さらに遅れるとの試算もある。

メキシコは先頭に立って、世界での平等なワクチン配布を求めている。ロペスオブラドール大統領は1日、バイデン米大統領とのオンライン協議でワクチン供与を求めたが、すぐに支援するという約束は得られていない。

By Michael Stott

(2021年3月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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