全人代前夜、香港のドンが発した警告 北京ダイアリー

全人代前夜、香港のドンが発した警告 北京ダイアリー
中国総局長 高橋哲史
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『5日午前、全国人民代表大会(全人代)が北京の人民大会堂で開幕した。今回、最も大きな注目を集めるのが、香港の政治から民主派を完全に排除できるようにする選挙制度の見直しだ。

そのカギを握る人物が、前日の4日に同じ人民大会堂で開かれた全国政治協商会議(政協)の開幕式に姿を現した。国務院(政府)香港マカオ事務弁公室の夏宝竜主任である。

夏氏は政協の副主席も務める。主席の汪洋(ワン・ヤン)氏が開幕式で「『愛…

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主席の汪洋(ワン・ヤン)氏が開幕式で「『愛国者による香港統治』の全面的な実施を断固として支持する」と演説するようすを、すぐ後ろで見守っていた。

「愛国者による香港統治」とは、英国から香港を取り戻した鄧小平氏が唱えたスローガンである。

夏氏はこれを香港の選挙制度を見直す大義名分に変えた。「行政、立法、司法のメンバーや重要な法定機関のトップは、すべて真の愛国者によって構成されなければならない」。2月22日の講演でこう述べ、香港の選挙制度を根本から変える決意を示した。

中国で「愛国者」とは、共産党に忠誠を誓う人びとと同義である。夏氏がめざす選挙制度の見直しは、共産党を支持しない人物の立候補を完全に封じ込めるしくみの制度化にほかならない。

夏氏はもともと、習近平(シー・ジンピン)国家主席の腹心として知られる。習氏が浙江省のトップである党委員会書記だった2000年代の半ばに、副書記として仕えた。

習氏への忠誠ぶりを示すエピソードには事欠かない。浙江省のトップに上り詰めたあと、17年春に退任する際に「習近平同志の思想」を称賛した。同年10月の党大会で党規約に盛り込まれた「習近平思想」を、初めて公の場で口にしたのは夏氏だったとされる。

党のトップ25にあたる政治局入りの可能性が高いとみられていた夏氏だが、その年の党大会では実現しなかった。政協の副主席という名誉職に近いポストは、夏氏にとって満足できるものではなかったかもしれない。

それだけに、20年2月に発表となった夏氏が香港マカオ事務弁公室の主任に就く人事は驚きをもって受け止められた。

習氏は香港政策のトップに、あえて香港となんの縁もない夏氏を据えたのだろう。目的はただ一つ。香港の民主化を求め、共産党を批判する「非愛国者」の徹底的な排除である。

習氏に忠誠を尽くす夏氏は、20年6月に香港国家安全維持法を制定した。それに続く選挙制度の見直しである。香港に高度な自治を認める「一国二制度」は完全に幕を閉じようとしている。

全人代の報道官は4日夜に開いた記者会見で、香港の選挙制度の「改善」を今回の議題にすると宣言した。習氏と党への批判は一切認めない。それは夏氏が香港の民主派に向けて発した警告に聞こえた。

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高橋哲史 (たかはし・てつし)
1993年日本経済新聞社入社。返還直前の香港での2年間の駐在を含め、中華圏での取材は10年に及ぶ。2017年から2度目の北京駐在で、現在は中国総局長として変わりゆく中国の姿の取材を続けている。

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北京ダイアリーをNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Spotlight/Beijing-Diary?n_cid=DSBNNAR