宣言延長、首相が世論にらみ急旋回 五輪・衆院選控え

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『菅義偉首相は3日、1都3県への緊急事態宣言を延長する方針を表明した。当初は7日までの宣言期限までで解除する考えだったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止を求める世論をみて急旋回した。東京五輪・パラリンピックや衆院選を控え、政権運営上の安全策を選んだ。

3日夕、首相は東京都など1都3県の感染状況について報告を受けてつぶやいた。「下がり方が鈍い」

東京、神奈川、埼玉、千葉の6指標はいずれも最も悪い「ス…

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菅義偉首相は3日、1都3県への緊急事態宣言を延長する方針を表明した。当初は7日までの宣言期限までで解除する考えだったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止を求める世論をみて急旋回した。東京五輪・パラリンピックや衆院選を控え、政権運営上の安全策を選んだ。

3日夕、首相は東京都など1都3県の感染状況について報告を受けてつぶやいた。「下がり方が鈍い」

東京、神奈川、埼玉、千葉の6指標はいずれも最も悪い「ステージ4」から脱却していた。だが千葉の病床使用率はステージ4の基準である50%に近い。各地の新規感染者数の減少ペースも鈍っていた。

緊急事態宣言は3月7日まででも2カ月近くになる。首相のもとには対象地域から疲弊の声が届いていた。経済再生を重視する首相にとっては、早期の経済再開が最優先の選択肢だった。

2月26日、大阪府や愛知県など6府県の宣言を解除すると決めた際も、首相は1都3県を条件付きで3月7日に解除すると表明する案を検討していた。専門家の反対で断念したが経済再開にこだわった。

今回の判断でも最後まで迷った。延長を表明した後、周囲には「事業者のことを思うと2週間が限界だ」と話している。首相官邸内でも感染再拡大を懸念して「延長時期は3月末までとすべきだ」との意見があったが、首相は「短期延長」の道を選んだ。

東京都の小池百合子知事らが延長を求める事情もあった。小池氏は2日夜、3県知事と連絡をとり、2週間程度の延長を政府に要請するよう働きかけた。首相が3日夜、先に延長を表明しなければ、国VS知事の構図が表面化する可能性もあった。

1月に始まった今回の宣言は、小池氏ら1都3県の知事が要請した後に発令した。内々に宣言する意向を固めていた首相の機先を制する形で小池氏が動き、首相は「後手に回った」と言われた。

今回も解除か延長かの瀬戸際で登場した小池氏が「延長を主導した」と批判される可能性はあった。

首相を後押ししたのは世論の情勢だ。日本経済新聞社が2月26~28日に実施した世論調査は宣言の「再延長」を求める回答が8割を超えた。まず感染の収束を求める声の大きさが浮き彫りになっていた。

首相の判断は今年の政治日程を見据えた結果ともいえる。専門家からは十分に収束しないままに解除すれば、5~6月以降に感染が再拡大する「第4波」がある、と警戒の声もあがっていた。

新型コロナ対策の「切り札」と位置づけるワクチンの接種日程は当初より遅れている。65歳以上の高齢者が本格化するのは4月下旬以降、一般の人は夏以降とみられている。7月に開会式を控える東京五輪、10月までにある衆院選を前に感染が再拡大すれば政権は危機を迎える。

与党内には「小池リスク」を指摘する声もあがっていた。小池氏が2日「(感染状況の改善が)間に合わないという分析がある」と延長論を展開すると、与党幹部は「小池氏はまた政局だ」と話した。

小池氏は地域政党「都民ファーストの会」の特別顧問を務める。7月に都議選、秋までに衆院選がある「選挙イヤー」で対立軸をつくろうとしているとの観測も浮上していた。首相の延長判断は政局面でも安全策を採った形となった。

小池氏は3日夜、都庁で記者団に「延長という考えは基本的に都の考えと一致するもの」と話した。一部では「同夜に延長を直談判するため官邸を訪ねる」との話も流れたが、首相との会談はなかった。

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緊急事態宣言が発令中の1都3県の新型コロナウイルスの感染状況を示す指標は政府が解除の目安とする「ステージ4」を脱却しているが、感染水準がなお高いことや、国内で感染が相次ぐ変異ウイルスへの懸念が宣言延長の判断の背景にあるとみられる。

「感染者数の減少が鈍化し、夜間の人流の再上昇もみられる。リバウンドを起こさず、減少傾向を続けることが重要」。新型コロナ対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は3日の会合で1都3県の感染状況をこう評価した。

内閣官房の資料によると、2日時点で病床使用率や療養者数、新規感染者数など感染状況を示す6指標は1都3県はいずれも2番目に深刻な「ステージ3」以下の水準に改善している。
一つ一つの指標を比べると、2月末に先行解除した6府県より1都3県の状況は厳しい。人口10万人当たりの1週間の新規感染者数は解除時の6府県は1桁台にまで下がっていたが、東京や千葉は13~14人だ。

人口10万人当たりの療養者数も東京22人、千葉24人と「ステージ4」(25人以上)をわずかに下回る水準だ。政府の分科会は解除の判断に当たって「ステージ4」からの脱却に加え、「ステージ2」への改善が見込めることを求めており、こうした点も重視したとみられる。

新規感染者数の減少ペースの鈍化も指摘される。3日のアドバイザリーボードでも感染者1人が何人に感染させたかを示す「実効再生産数」は1都3県は0.9程度としており、横ばいを示す1に近づきつつある。対策の緩みを指摘する声もあるが、専門家からは「明確な理由は分からない。今のまま宣言を続けてもこれ以上減らない可能性もある」との声も上がる。

国内で感染が相次ぐ変異ウイルスへの懸念もある。この日のアドバイザリーボードでも半分近くの時間を変異ウイルスの議論に割いたという。国内で感染が確認されている変異ウイルスの多くは英国型だ。英国では実効再生産数を0.4~0.7引き上げるとの報告もある。

変異ウイルスを封じ込められず、既存のウイルスから置き換わった場合は緊急事態宣言でも封じ込められない可能性がある。専門家の中にはできる限り感染者数を抑え込んで保健所が変異ウイルスへの対応に専念できる環境作りを求める声が強い。

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