米通商方針、中国のウイグル族強制労働の抑制「最優先」

米通商方針、中国のウイグル族強制労働の抑制「最優先」
脱炭素へ「国境調整」検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01CXF0R00C21A3000000/

『【ワシントン=鳳山太成】米通商代表部(USTR)は1日、バイデン政権の通商政策報告書を議会に提出した。中国の人権侵害問題に「最優先で対処する」と記載した。少数民族ウイグル族の強制労働による製品の貿易を規制するため、あらゆる措置を検討する考えを示した。温暖化ガスを大量排出してつくられた輸入品への課税を含む「炭素国境調整」措置の採用も検討課題にあげた。

通商政策の基本方針を示す同報告書はUSTRが毎年作成している。同盟国との連携や労働者、気候変動などを優先課題に挙げ、トランプ前政権からの政策転換を訴えた。「炭素国境調整」措置の導入はバイデン大統領が公約に掲げてきた。

報告書は「民族や宗教の少数派を狙い撃ちにした中国政府の強制労働制度による幅広い人権侵害」に最優先で取り組むと説明した。「米国人や世界の消費者は、強制労働でつくられた製品を求めていない」と指摘し、関与するグローバル企業にも説明責任を求める姿勢を示した。

中国には「米国の技術優位を脅かしたりサプライチェーン(供給網)を弱体化させたりと、威圧的で不公正な貿易慣行がある」と主張した。トランプ前政権の「ばらばらの手法」ではなく「包括的な戦略とより体系的な手法」が必要だと明記した。

ウイグル族の弾圧問題については、トランプ前政権も中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁じた。バイデン政権は対中政策で人権問題を一段と前面に押し出す構えをみせている。バイデン氏は2月、電話協議で中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席にウイグル問題への懸念を伝えた。

中国政府はウイグル族を施設に収容する措置を「再教育」と定義し、人権侵害への関与は否定している。バイデン政権では、人権が米中対立の火種となりそうだ。

バイデン米大統領がUSTR代表に指名したキャサリン・タイ氏=ロイター

通商政策では、地球環境問題も優先すると記した。中国を含む貿易相手国に高い環境基準の順守を求めるなど、温暖化ガスの排出削減を迫る手法として貿易を活用する。

バイデン氏は環境基準を満たさない国から輸入する製品に、税や数量制限などの炭素国境調整を課すと明言してきた。欧州連合(EU)も同様の措置を導入する方針で、貿易ルールとの整合性が今後の議論になる。

同盟国との協調も重視する。トランプ前政権が日本など同盟国にも追加関税を課した鉄鋼・アルミニウムの問題については、中国が主因となっている過剰生産問題に対処するため「友好国や同盟国と協力を模索する」と表明した。関税の扱いには触れなかった。

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

今村卓のアバター
今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
コメントメニュー

分析・考察 中間層・労働者を第一に「より良き再建」を掲げるバイデン政権。通商政策でも、米国の高賃金の仕事の創出を阻む外国の不公正な貿易慣行を許さない方針を示しました。中国のウイグル族強制労働による製品の貿易は、人権という米国の普遍的価値観からも、最優先で対処としたのは理解できます。

問題は通商政策の効力です。トランプ前政権が発動した綿製品の輸入禁止、人権抑圧理由での中国企業・研究機関への輸出規制の効果は限られているのが現実です。今後予想される禁輸強化や同盟国との連携などで効果が上がるかどうか。不十分との見方が広がれば、議会などからバイデン政権に通商政策を超えた強硬手段を求める声が強まるでしょう。
2021年3月2日 13:05いいね
7

深尾三四郎のアバター
深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
コメントメニュー

今後の展望 バイデン政権は倫理的調達の報告品目に一次産品を加えようとしている。
オバマ政権時代の2010年、当時副大統領のバイデン氏が成立させたのがドッド・フランク法。同法では、コンゴ民主共和国及び周辺国で採掘される、スズ・タンタル・タングステン・金を「紛争鉱物」とし、これらを製品に使う上場企業に対して、調達情報を米国証券取引委員会に開示させる規則が盛り込まれている。欧州委員会も本年1月1日、紛争鉱物規則を施行した。
今後、サプライチェーンでのデューデリジェンスを、新疆ウイグルで世界の2割が生産される綿花など一次産品にも求める動きが出てくる。EUや英国と組んで、米国は国際協調体制の構築を急ぐだろう。
2021年3月2日 11:32 (2021年3月2日 11:38更新)
いいね
13

中山淳史のアバター
中山淳史
日本経済新聞社 本社コメンテーター
コメントメニュー

別の視点 報告書に注目すべきなのは企業かもしれません。香港の昨年のデモでは、国家安全法を支持した金融機関に対してデモ参加者や世界から批判が集まり、アップルやティファニーには逆に、デモ参加者寄りだと中国政府から批判の声が上がりました。企業の一挙手一投足、あるいは経営者の一言一言が世界を大きく揺さぶるわけですが、それでも面倒には巻き込まれまいと、何も言わない、何もしないでは済まされないのがグローバル企業の宿命です。日本企業は存在感が薄いと言われますが、各国・地域に寄り添って、主張すべき時はする。そうした覚悟と日頃からの情勢分析、世界観の醸成が求められます。
2021年3月2日 14:32いいね
1

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
コメントメニュー

ひとこと解説 労働者を中心に据え、環境や気候変動に配慮し、人種間の公平を重視する。報告書の序文を数ページ読むだけでも、通商政策の重点がトランプ前政権の時代から様変わりとなった印象を受けます。

300ページほどの報告書で「中国(China)」を検索すると約430件がヒットし、「日本」(143件)の3倍です。中国の人権侵害や不公正貿易慣行などへの批判的な姿勢に大きな違いはありませんが、どんなアプローチをとるのか。利害が必ずしも一致しない同盟国や友好国との連携が円滑に進められるのかどうかが、これから具体的に問われてきます。
2021年3月2日 10:35いいね
7

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

有料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07

無料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07#free

ログインする
https://www.nikkei.com/login