アルメニア情勢緊張、首相進退めぐり対立表面化

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『【モスクワ=小川知世】アゼルバイジャンとの紛争で2020年に事実上敗北したアルメニアで内政の緊張が高まっている。パシニャン首相の辞任を要求した軍参謀総長の解任を大統領が認めず、政府内の対立が表面化した。野党は抗議を継続し、首相への退陣圧力を強めている。混乱が続けば、紛争の和平交渉がさらに停滞する恐れもある。

パシニャン氏の辞任要求は2月25日に参謀総長ら約40人の軍高官が発表した。同氏は「クーデターの試み」と反発して参謀総長の解任を提案したが、サルキシャン大統領は憲法に反するとして27日に解任案への署名を拒否した。

パシニャン氏は辞任は「国民が決める」と主張し、軍の要求に応じない構えだ。大統領による参謀総長の解任拒否は「事態の解決に役立たない」と非難し、1日までに改めて解任案を提出した。同日、首都エレバンで集会を開き、混乱の収拾へ支持を訴える。

アルメニアはアゼルバイジャン領のナゴルノカラバフをめぐる紛争で、実効支配地域の大半を引き渡す内容で20年11月に停戦合意した。停戦後、パシニャン氏の辞任を訴えてきた野党側は軍の動きに勢いづいている。辞任まで抗議を続けると宣言し、インタファクス通信によると1日に辞任を訴えて数十人が一時政府庁舎に押し入った。

パシニャン首相は支持者を前にクーデターの試みを認めないと強調した(2月25日、エレバン)=AP

膠着状態の打開は見通せない。アルメニアでは15年の憲法改正で大統領から首相へ権限が大幅に移譲された。議会では与党連合が6割の議席を占める。民間企業が2月中旬に発表した世論調査ではパシニャン氏の支持がほかの政治家を上回った。仮に首相の弾劾協議や前倒し議会選を実施しても、野党側の勝ち目は薄いとの見方がある。

軍からの辞任要求を引き起こしたのは紛争についてのパシニャン氏の発言だった。同氏はロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が紛争で十分に機能しなかったと2月下旬に主張した。これに疑義を示した軍高官が24日に解任され、軍部の猛反発を招いた。

背景には新旧の政治勢力の攻防がある。パシニャン氏は18年の民主化デモを率いて首相に就任した。軍を中心に同氏に批判的な勢力が残り、事実上の降伏ととれる停戦合意を結んだことで不満が増幅した。停戦後、大統領は内閣総辞職は避けられないとの見解を示していた。パシニャン氏に権力の座を追われた元大統領らも首相辞任を訴え、自分たちの影響力回復をうかがう。

アルメニアと軍事同盟を結ぶロシアのプーチン大統領もパシニャン氏とは距離を置く。プーチン氏はパシニャン氏との電話協議で事態収拾を促したが、政権への明確な支持は示さなかった。対ロ関係に悪影響を及ぼさない限りは「内政問題」との立場をとる構えだ。

混乱が激化すれば地域の安定に逆風となる懸念もある。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は2月26日、「アルメニアの状況にかかわらず、停戦合意の履行を期待している」と強調した。27日には両国とロシアの副首相が紛争地域の輸送網の復旧などを協議した。1日にもビデオ会議を開き、実施計画をまとめる。

仲介役のロシアは停戦合意が順守されていると主張する。だが捕虜交換の対象などでアゼルバイジャンとアルメニアの間では見解が食い違う。アルメニア系住民が独立を主張してきたナゴルノカラバフの地位をめぐる交渉の見通しも不透明なままだ。

ソ連末期から続くナゴルノカラバフをめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの紛争は20年9月に再燃した。11月の停戦合意までに双方で5600人以上が死亡し、1994年の停戦合意以降、最大の衝突となった。停戦合意に基づき、ロシアは現地に平和維持部隊を展開している。

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