米、過熱覚悟の財政出動 200兆円対策を下院で可決

米、過熱覚悟の財政出動 200兆円対策を下院で可決
市場の混乱回避が課題に
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『【ワシントン=河浪武史】米下院は27日未明、1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナウイルス対策法案を、民主党単独で可決し、3月中旬の対策発動へ前進した。金融市場は巨額の財政出動による経済過熱を警戒して動揺している。その中での下院通過には、コロナ禍からの経済回復を優先させるバイデン政権の姿勢が映る。市場混乱を避けつつ、雇用や経済活動の立て直しにつなげられるかが課題となる。

バイデン大統領は政権のス…

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バイデン大統領は政権のスタートダッシュを印象づける経済対策法案を重視し、「米国の結束」を求めて超党派合意を探っていたが、与野党分断は埋まらなかった。格差是正を求める低中所得層の底上げを優先した。

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追加対策は名目国内総生産(GDP)の9%分に当たる。米経済の潜在成長率は2%弱。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日の議会公聴会で、21年の成長率が6%程度になる可能性があると指摘した。

米実質GDPはすでに危機前の97.5%まで戻っている。名目GDPの9%分の巨額対策は需要不足を大きく上回る。米議会予算局(CBO)の試算では24年までの累計需給ギャップは約7000億ドル。1.9兆ドル対策は景気を過熱させかねず、「過大でインフレリスクがある」(サマーズ元財務長官)との指摘も出てきた。

追加対策の柱は現金給付だが、既に議会は2回の給付で1人あたり1800ドルを支給済みだ。ニューヨーク連銀の調査では消費に回ったのは26%にすぎない。ゴールドマン・サックスの試算では、21年半ばまでの「過剰貯蓄」は2.4兆ドルに達するという。名目GDPの11%分にも相当し、コロナ禍が収束に向かい経済活動が強まれば、消費が一気に過熱する可能性がある。

サマーズ氏の指摘通り、既に物価には部分的に過熱感がある。1月の消費者物価指数をみると主要家電は価格が1年前から15.8%も上昇。宝石・時計も3.9%上昇するなど、家計支出は耐久財や高級品の価格を押し上げ始めている。

FRBのパウエル議長は「物価上昇は一時的で長続きしない」と繰り返す。物価の基調を左右するのは、消費の6割強を占めるサービス分野で、決め手は人件費だ。雇用回復の遅れで賃金は上昇しにくく、パウエル氏は安定的に2%のインフレ目標を維持できるまで「3年以上かかるかもしれない」と言う。

金融市場も一時的な過熱を警戒し、長期金利の上昇など波乱含みとなってきた。株価が下落に転じるなど市場に持続的な成長期待があるわけではない。ゴールドマンは21年の米成長率を7%と見込むが、23年には再び2%を切る水準まで大きく減速すると予測する。

サマーズ氏らの「財政出動は過大(Too Big)」との批判に対し、バイデン氏やイエレン財務長官は「経済対策は大胆に(Go Big)」と反論する。

背景には戦後最悪の水準にある経済格差がある。富裕層が異例の金融緩和の恩恵で潤ってきたのとは対照的に、コロナ禍で低所得層は雇用危機に直面している。バイデン政権が雇用回復へ巨額対策を急ぐ背景には、ここで経済支援の手を緩めれば米政治の分断を再加速し、禍根を残しかねないとの焦りがある。

ワクチン接種を急ぐ米国でも接種が行き届くのは「夏の終わりか秋の初め」(バイデン氏)。感染拡大が止まる「集団免疫」にめどをつけられるのは秋以降だ。

それまでは休業を強いられるサービス業などの雇用を財政で下支えし続ける必要がある。一方で財政頼みの長期化は景気過熱の懸念を通じ、市場のインフレ警戒を一段と刺激しかねない。格差是正と市場の混乱回避のバランスが問われる難しい局面に入った。