米金利上昇、緩和「出口論」なき混乱 市場と対話難しく

米金利上昇、緩和「出口論」なき混乱 市場と対話難しく
金融政策・市場エディター 大塚節雄
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODB271BL0X20C21A2000000/

 ※ 今回の「米国債の金利上昇」に当たって、絡んだ「各勢力の思惑」が語られている…。

 ※ 一読しといた方がいい…。

 ※ さりとて、対策とて無い話しだが…。

『米長期金利の上昇が世界の金融市場を揺るがしている。2月の金利上昇は月間で4年ぶりの大きさとなった。米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の出口議論を封印するが、金利上昇の主役は景気回復を見越した「インフレ見通しの向上」から、FRBの金融政策の正常化を意識した「実質金利の上昇」に移りつつある。巨額の米財政出動の影響が経済の過熱を呼び、FRBが早期引き締めを迫られるシナリオを捨てきれないからだ。新型コロ…

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新型コロナウイルス後の経済の姿が見えないなか、FRBと市場との対話は難しさを増す。

米債券市場が不安定になっている。25日は7年物の新発債入札が深刻な不調に終わったのを機にパニック的な売りに見舞われ、米10年物国債利回りは一時1.6%台に急伸(債券価格は急落)し、約1年ぶりの高水準となった。26日は一転、1.41%まで低下したが、それでも2月月間の上昇幅は0.33%と16年11月(0.56%)以来の大きさとなった。

金利上昇の根っこには、ワクチン普及と議会で審議が進む大規模な財政出動による景気回復や物価上昇を織り込む動きがある。FRB高官らは「これまでのところ、良い兆候」(セントルイス連銀のブラード総裁)として、ある程度は容認する姿勢を示す。経済の正常化を織り込む自然な反応という見方だ。

米長期金利(名目金利)は投資家の物価見通しである「インフレ期待」と、物価見通しの影響を取り除いた「実質金利」に分解できる。名目金利は昨年夏以降、緩やかな上昇軌道を描いてきた。1月ごろまではそのほぼすべてをインフレ期待の上昇で説明できる。インフレ期待の向上は、投資家の経済正常化への期待を反映する。FRB高官らが指摘する通り、経済の回復に根ざした望ましい金利上昇だったというわけだ。

この間、実質金利はマイナス1%前後での歴史的な超低位の水準での推移が続いてきた。実質金利はFRBによる金融緩和の「効き具合」を端的に示す。ゼロ金利長期化の約束や大規模な国債購入を柱とするFRBの緩和が実質の長期金利を水面下に押し下げ、ドル安のほか株式や商品などのリスク投資を強力に後押ししてきた。この点からも、名目金利の上昇は経済活動やリスク市場にとって問題になってこなかったことがわかる。

2月以降に金利上昇に弾みがついた過程で、金利上昇の構図が変容し始めた。インフレ期待は2%を超えたところで頭打ち傾向が鮮明になる半面、実質金利がじりじりと上向いている。10年物の実質金利は25日にマイナス0.6%程度と昨年6月以来の水準に戻した。

経済の過熱を受け、FRBが金融政策の正常化に動く。市場でこうした思惑が強まりつつあるという解釈も成り立つ。30年物の実質金利は2月下旬にプラス水準に高まり、20年物もゼロ%近辺まで上向いている。実質マイナス金利が市場や経済を刺激する効果が薄れ始め、株式市場などを不安定にしている。

今回の金利上昇は、13年5月に当時のバーナンキFRB議長が量的緩和の縮小(テーパリング)に言及したのを機に起きた長期金利の急騰劇「テーパー・タントラム(かんしゃく)」の再来となるのか。25日の金利上昇幅は0.15%と、バーナンキ氏の発言があった当日の13年5月22日の0.10%を上回った。13年当時はその後、本格的な金利上昇局面に入り、発言前日に1.9%台だった金利水準は9月に一時3%をつけ、1%に及ぶ急騰劇を演じた。

今回も金融政策の転換を市場が織り込み始めた点では13年当時と共通する。最大の違いは、FRB自身が緩和縮小を巡る議論を封じていたなかで起きたことだ。市場には「テーパーなきタントラム」(米シティグループ)と呼ぶ声もある。

ゼロ金利の長期化の約束は当時よりも格段に強く、市場には「13年当時と異なり、金利の本格的な上昇につながる可能性はほとんどない」(米JPモルガン)との冷静な見方も多い。FRBは2%超のインフレを容認する新たな政策運営の枠組みを導入し、利上げは24年以降との見通しを示す。量的緩和の縮小についても、FRB高官は異口同音に「議論は時期尚早」と出口論を封じている。

これに対し、市場は金利上昇の過程で23年初頭の利上げを織り込んだ。自然に量的緩和の早期縮小も意識し始めている。今後、ワクチンの普及でコロナ危機が急速に収束に向かった場合、巨額の財政出動が経済に強すぎる刺激を与える可能性も捨てきれない。こうしたなかで、FRBが量的緩和の縮小を巡る議論に口を閉ざし、FRBと市場の思惑のズレが生じやすくなり、債券相場の振れが大きくなっている。

FRBは経済の正常化の過程で生まれるインフレ圧力は一時的との見立てだ。パウエル議長ら執行部にとっては金融緩和の長期化を繰り返し訴えたいところだが、経済回復が進むほど、そのメッセージは届きにくくなる。3月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では21年の成長見通しが上向くのは確実とみられ、参加メンバーの間で利上げ前倒しの予測が増えることも考えられる。「テーパーなきタントラム」が深刻になるリスクは消えない。