米、サウジ皇太子を冷遇 民主リベラル派に配慮

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『【ワシントン=中村亮】バイデン米政権は26日、サウジアラビアの著名ジャーナリスト殺害事件について実力者のムハンマド皇太子の関与を断定した。人権侵害を黙認してきた慣習を見直し、ムハンマド氏を冷遇する。民主党リベラル派に配慮した。米・サウジ関係の悪化はイランとの対話に向けた火種にもなる。

サウジの記者ジャマル・カショギ氏は2018年10月、トルコのイスタンブールにあるサウジ総領事館で殺害された。米国家…

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米国家情報長官室が26日公表した調査報告書は「ムハンマド氏が記者を拘束また殺害する作戦を承認した」と結論づけた。

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「皇太子はカショギ氏をサウジの脅威とみなしていた」とも指摘した。バイデン政権はサウジ情報機関の元幹部らに制裁を科し、サウジの76人に対して米国の査証(ビザ)発給を制限する。

バイデン米大統領は26日、米メディアのインタビューで25日のサウジのサルマン国王との電話について「ルールは変わっており、大きな転換を発表すると明確に伝えた」と明らかにした。

バイデン氏の真意は不明だが、米歴代政権は中東安定や原油の安定供給を優先し、サウジの人権侵害を事実上黙認してきた。バイデン氏の発言はこうした外交儀礼を継承しない方針を示したとも受け取れる。

米政権はサウジの将来を担う実力者のムハンマド氏の扱いを見直す。バイデン氏は25日、サルマン氏と電話し、ムハンマド氏を避けた。

サキ米大統領報道官は26日、記者団に「(サルマン氏が)国家首脳であり適切な相手だ」と説明した。トランプ前米大統領はムハンマド氏と電話することが多かったが、バイデン政権では同氏の扱いを格下げする考えを示した。

バイデン氏のサウジに対する強硬姿勢は民主党への配慮がある。同党のロバート・メネンデス上院外交委員長は26日の声明で「今回の措置は始まりに過ぎず、米政権が極悪な犯罪についてムハンマド皇太子本人の責任を問う具体策を取ると期待している」と強調した。

バイデン政権はサウジに制裁を科したが、ムハンマド氏は対象に指定しておらず追加措置を促したものだ。

民主党で反サウジの流れをつくったのが、リベラル派の代表格であるバーニー・サンダース上院議員だ。「世界最悪の飢饉(ききん)の危機」(国連)とされるイエメン内戦にはサウジが介入し、米国は軍事面でサウジを支援した。

サンダース氏は2019年3月、軍事支援を停止する決議を主導し、上院で可決させた。人権を強く重視し民主党内で影響力を増すリベラル派の意向をバイデン氏は素通りできなくなっていた。

元国務省高官は「米国は中国に対して価値観や規範をめぐる競争下にあり、その行方は21世紀の流れを決める」と指摘する。強権的な国家運営を標榜する中国に対抗するうえで、米国は同盟国や友好国であっても、人権侵害を容認しづらくなっているとみる。

米・サウジ関係の悪化は避けられず、バイデン政権が探るイランとの対話の足かせになる可能性がある。

米政権は中東政策の最優先課題に15年に結んだイランの核開発を制限する国際合意への復帰を目指しているが、イランを敵視するサウジやイスラエルは核合意に批判的な立場を崩しておらず、隔たりは鮮明だ。

バイデン政権はサウジやイスラエルに配慮もしている。米軍は25日、シリアの親イラン武装勢力を空爆した。

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駐イエメン米大使を務めたジェラルド・フェイアスタイン氏は「バイデン政権はイランに対してトランプ政権よりも弱腰ではないというメッセージを送ろうとした」と指摘する。トランプ政権は親イラン武装勢力への攻撃をためらわず、サウジやイスラエルは好意的に受けとめていた。