米が基幹産業で脱中国 半導体など、同盟国と連携模索

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODC2540G0V20C21A2000000/

『【ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権が基幹産業を支える重要部材のサプライチェーン(供給網)見直しに乗り出した。半導体やレアアースなど4品目で中国に依存しない調達体制を築く。100日以内に具体策を打ち出す構えで、日豪など同盟国の企業との連携も模索する。電池のように中国が高い競争力を持つ分野もあり、実効性には課題も残る。

バイデン大統領は24日、①半導体②高容量電池③医薬品④重要鉱物――について供給…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り1989文字

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権が基幹産業を支える重要部材のサプライチェーン(供給網)見直しに乗り出した。半導体やレアアースなど4品目で中国に依存しない調達体制を築く。100日以内に具体策を打ち出す構えで、日豪など同盟国の企業との連携も模索する。電池のように中国が高い競争力を持つ分野もあり、実効性には課題も残る。

バイデン大統領は24日、①半導体②高容量電池③医薬品④重要鉱物――について供給網の問題点と対応策を検討するよう求める大統領令に署名した。重点的に取り組む4品目は「米国の競争力を維持・強化するのに必要不可欠だ」と指摘した。

念頭に置くのは中国だ。バイデン氏は大統領令の署名に先立ち「米国の国益や価値観を共有しない外国に依存できない」と強調した。バイデン政権もトランプ前政権と同様に中国に厳しい姿勢を貫く。

自動車向けなどを中心に世界的な品不足が起きている半導体は、超党派で米国生産の強化を求める声が上がる。野党・共和党のコーニン上院議員は24日、バイデン氏と会談後、記者団に「我々は同じ意見だ」と表明。国内の設備投資を資金支援する予算法案の成立に意欲を示した。

ボストン・コンサルティング・グループによると、米国は設計ソフトや製造装置でそれぞれ85%、50%と高いシェアを握るが、生産は12%にとどまる。インテルやクアルコムなど世界的に有力な国内企業を抱える一方、生産では台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子など海外勢に頼る。

半導体を中核産業と位置づける中国は巨額の補助金で追い上げる。今後10年間の世界の増産投資のうち3~4割は中国が占める見通し。中国の世界生産シェアは20年の15%から30年に24%に高まり、台湾を抜いて世界最大になる可能性がある。

対抗策として米国は中国勢の抑え込みと自国への工場誘致を並行して進めている。中国の半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対しては制裁を科して先端半導体の生産に歯止めをかけた。一方でTSMCのアリゾナ州への工場誘致に成功した。

レアアースも中国頼みだ。米地質調査所(USGS)によると、世界生産の58%が中国で、米国の輸入相手の80%を占める。習近平(シー・ジンピン)指導部は戦略資源と位置づける。

レアアースの用途は広い。電気自動車(EV)や風力発電といった環境分野のほか、戦闘機や対ミサイル防衛システムなど軍事品、石油の精製にも不可欠だ。米商務省は19年の報告書で「中国やロシアが米国や同盟国へのレアアース輸出を止めれば、供給網に深刻な衝撃を与える」と警鐘を鳴らす。

中国依存度を下げるには、まず中国以外の調達ルートを確保する必要がある。レアアースの鉱石はオーストラリアや米国からも産出されるが、環境負荷の大きさやコスト面での優位さから、中国が分離・精製の大半を握る。現在、米国は自国で産出した鉱石を中国に輸出し、加工品を輸入し幅広い産業で使っている。米国と豪州は米国内で鉱石の分離・精製工場の建設計画を進めており、このプロジェクトを軌道に乗せることが重要となる。

医薬品の主成分となる原料についても中国依存が高まっている。米食品医薬品局(FDA)によると、2019年8月時点で米国向けの医薬品の原料を作る世界の製造所の13%にあたる230工場が中国にあるという。工場数は10年から10年弱で2倍以上に増えた。

調達の切り替えが起きそうなのがEVのコストの約3割を占めるリチウムイオン電池だ。調査会社のマークラインズによると、20年の車載用リチウムイオン電池の市場シェア(生産容量ベース)で世界トップは中国の寧徳時代新能源科技(CATL)で25%だった。中国勢は原料のリチウムを国内で調達できるのが強みで、比亜迪(BYD)も4位に入った。

脱炭素を公約に掲げ、EVの普及を急ぐバイデン政権は「米国はEVの純輸出国なのに、電池生産のリーダーではない」と不満を抱く。CATLは米テスラにも電池を供給する。対中依存度を減らすには、中国に次いで電池生産が多い韓国や日本との連携が不可欠となる。

【関連記事】
米、供給網100日以内に見直し 半導体などで大統領令
米、同盟国と供給網整備 半導体・EV電池で中国に対抗
中国、上期のレアアース生産枠3割拡大、米包囲網に備え

難題は日本など同盟国にも突きつけられる。米政府高官は中国依存を下げるため「輸入制限も選択肢」と指摘した。外国企業は米国への輸出を続けるために「中国製部材を使わない」など、中国と距離を置くよう迫られる展開もあり得る。

ある国内半導体メーカー関係者は「米国も中国も重要な市場。しがらみがない状態で事業をしたい」とぼやく。一方で商機を見いだす企業もある。国内半導体設計の関係者は「中国企業が調達網から抜けるならば、そこを営業で取りに行く」と話す。

米国とのつながりを強める動きも出てきた。台湾にある米国の代表機関で事実上の大使館である米国在台湾協会(AIT)の所長は25日、台湾の半導体関連企業の幹部ら数十人と会談し、米国との緊密なパートナーシップを求めた。日本経済新聞が入手した文書によると、ドイツ在台湾協会や日本台湾交流協会などの代表者も会議に参加したという。米主導の調達網を新たな安全保障と見なす企業も出てきそうだ。

レアアースでは米国と似た対応を同盟国がとる可能性がある。すでに日本は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて豪州の鉱山会社に出資し中国依存度を減らしたレアアースの生産を後押ししている。

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

中空麻奈のアバター
中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
コメントメニュー

別の視点 中国製が市場シェアの多くを占める製品は多く、なかなか脱中国は進まない可能性が大きい。たとえば、カーボンニュートラルを目指すために必要なものの一つであるソーラーパネルを見ても、世界のソーラーパネル出荷量の65-75%を中国産パネルが占めていると言われている。これから世界中で太陽光発電プロジェクトが促進されれば、少なくとも短期的には、需要の拡大により、市場における中国の支配的地位は一段と強くなる可能性すらある。いくら脱中国をスローガンにしても、米国にとってすら、かなり難しい課題に見える。
2021年2月26日 8:38いいね
0

秋田浩之のアバター
秋田浩之
日本経済新聞社 本社コメンテーター
コメントメニュー

ひとこと解説 トランプ前政権が始めた対中ディカップリングをバイデン政権は事実上、踏襲しています。違うのはより重点分野に特化し、信用できる同盟国と一緒に進めていくこと。この路線はもはや米国家方針であり、24年にバイデン氏が再選されようが、共和党政権になろうが継続するはずです。
問題は、果たして「米国連合」が中国にどこまで太刀打ちできるのか。国有企業が主力の中国の方が、短距離レースでは有利にみえます。ただ、親方五星紅旗の国有企業よりも、自由競争が働きやすい民間企業のほうがマラソンレースでは有利なのでは。期待も含め、そう思います
2021年2月26日 8:19いいね
3

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
コメントメニュー

ひとこと解説 第一報が流れた時に「時間軸に興味があります」とコメントしましたが、半導体、EV用などの高容量電池、医薬品、レアアースの重点4品目は100日以内と急ピッチで対策が出るとのこと。台湾ではすでに働きかけが始まったそうで、劇場型だった前政権の対中圧力から、新政権による的を絞った「脱中国」への急展開が起きているようです。
これに並行して、中国の国有IT大手2社が合併して「規模の利益」を確保し、米国の動きに対抗するとのニュースも。米中双方がハイテク競争の足場固めを始めたともいえます。はざまに立つ日本や韓国、台湾の企業も、米中双方との距離感、そして新たな商機の見極めを早急に進める必要があります。
2021年2月26日 7:59いいね
7 』