対イラン、軍事力を誇示 バイデン米政権が初の空爆

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『【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は25日、シリアで親イラン武装勢力に対する初めての空爆に踏み切った。周辺国の武装勢力への支援を通じて中東で影響力を高めるイランに対して、軍事力を誇示して対抗する狙いがある。イランが反発し、核合意修復に向けた対話が遠のくリスクもある。

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米国防総省の声明によると、米軍はシリア東部でイランが後ろ盾とされるイスラム教シーア派武装勢力「神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)」らが使用する施設を破壊した。「防御的な精密攻撃だ」と説明し、武装勢力による追加攻撃を抑止する目的だと訴えた。攻撃はバイデン氏が承認した。

今回の空爆は2月中旬以降に相次いだイラクにある米国関連施設へのロケット弾攻撃への報復となる。ロケット弾攻撃は親イラン武装勢力の関与が疑われていた。15日のイラク北部アルビルの米軍駐留拠点の周辺に対するロケット弾攻撃では米国人に負傷者が出た。22日にも首都バグダッドの在イラク米大使館が位置するエリアにも攻撃があった。

在サウジアラビア米大使館で勤務したアッバース・ダフーク氏は空爆の狙いについて「イランとの対話を模索しつつも、必要に応じて一方的な軍事行動を行う意志を示すものだ」と指摘する。

バイデン氏に対しては、イランに対して弱腰だとの批判も広がりつつあった。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ元政権はシリアのアサド政権が化学兵器を使用した時でも空爆を見送ったためだ。トランプ前政権は米国人に死傷者が出ると即座に報復攻撃を実施していた。

米ハドソン研究所のピーター・ラフ上級研究員は、イスラエルやサウジアラビアが米国のイランとの対話方針を引き続き懸念しつつも「今回の軍事行動を歓迎するだろう」と分析する。バイデン政権は2月中旬、両国が反対するイラン核合意への復帰に向けたイランとの対話にカジを切った。米政権が復帰を優先してイランや同国の支援勢力の挑発行為を黙認すれば、イランの抑止が難しくなるとイスラエルやサウジは懸念しているとみられている。

バイデン氏は25日、サウジのサルマン国王と電話し「親イラン勢力による攻撃に直面するサウジの防衛を強く支援していく」と伝えた。バイデン政権はイエメン内戦に介入するサウジへの軍事支援を停止。これを受け、イランが支援するイエメンの反体制派武装勢力フーシがサウジへの攻撃を激化させたとの見方があり、サウジが米国に不信感を強めていた。

サウジを巡っては、米情報機関がサウジの著名ジャーナリストの殺害事件をめぐる調査報告書を近く公表する。トランプ前米大統領は実力者ムハンマド皇太子の関与を断定しなかったが、米メディアによると報告書は関与を指摘する見通しだ。バイデン政権はサウジが人権を軽視したとして何らかの制裁措置を講じるとみられ、米・サウジ関係を揺るがす要因になるとみられている。

イランが米軍の攻撃に対してどのように反応するかは現時点で不透明だ。イランは23日、国際原子力機関(IAEA)による抜き打ち査察などを定めた「追加議定書」の履行を停止した。ウランの濃縮レベルを大幅に引き上げる構えも見せている。保守派が影響力を強めるイランで米国に対する強硬論が一段と強まれば、バイデン政権が探る対話は実現のハードルが上がる。

国防総省は声明で「シリア東部やイラクでの緊張緩和を目指して用心深く行動している」と強調した。イランとの対話を引き続き探る意図を示すもので、空爆をめぐって同国との対立を避けたい意向がにじむ。

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