[FT]インド「デジタル税」強化、対米摩擦の火種に

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『インドが外国IT(情報技術)企業に対する世界有数の厳しい課税を打ち出し、バイデン米政権との対決に向かっている。

インドのモディ政権は2月、2020年4月にデジタルサービスを対象として導入した税率2%の「平衡税」の改正を発表した。アナリストらによると適用範囲を拡大する内容だ。

電子商取引(EC)から動画ストリーミング配信に至るまでを網羅する課税は、16年にデジタル広告を対象に導入された同種の6%の課…

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電子商取引(EC)から動画ストリーミング配信に至るまでを網羅する課税は、16年にデジタル広告を対象に導入された同種の6%の課税、通称「グーグル税」に続くものだ。

平衡税の改正は、米IT(情報技術)企業を押さえ込もうとして論争を引き起こしているインド政府の大胆な動きの一環だ。国会審議中の厳格なデータ保護法案から、ツイッターなどソーシャルメディア上のコンテンツ規制まで取り組みは多岐にわたる。

だが、トランプ前米政権の最終盤に「最も明確な形での不公平」とみなされた平衡税の改正は、米国との貿易摩擦の危険をはらむ。新たな課税は米国による報復措置の可能性を高め、農産物からハーレーダビッドソンの大型バイクまで、広範な分野で悪化した貿易関係の改善を図るバイデン政権下の取り組みを阻害する恐れがある。

「スリラー作品を見ているようだ。数週間おきに展開が変わる」と話すのは、インド政府系の財政政策研究所(NIPFP)のスランジャリ・タンドン助教授だ。

他国より範囲が広いインドのデジタル税

世界中の各国政府が現在、ニュースメディアに対する影響力や納税額など、巨大IT企業が国内社会で果たしている役割について詳しく調べている。

進出先の各国で大きなビジネスをしながら、本社機能を海外に置いて課税を逃れていると批判を浴びたフェイスブックやグーグルなどの企業への課税に関して、インド政府はいち早く積極姿勢を取った。

デジタル課税の国際ルールをめぐる経済協力開発機構(OECD)での協議が進展しないことに業を煮やし、インド政府はいち早く動いたのだ。英国、フランス、イタリアも独自のデジタルサービス課税を検討している。

「歳入を増やせば問題は解決すると考えているのか、あるいは独自に全当事者を交渉テーブルに着かせるための方策とも捉えることができる」とタンドン氏は言う。「後者に関しては十分にうまくいっている。そもそも平衡税がかけられていなかったら、インドは今ほどの交渉力を得ていなかったはずだ」

各国のデジタル税について調査した米通商代表部(USTR)はインドの平衡税について、他国より範囲が広いとしている。USTRによると、課税される公算が大きい119の企業のうち86社が米企業で、各社のコンプライアンス費用は数百万ドル(数億円)に達するという。

アナリストらは、バイデン米大統領がトランプ前大統領の強硬姿勢を貫くかどうかは不透明だと受け止めている。トランプ氏はフランスのデジタル税導入を受けて、同国からの高級輸入品に25%の報復関税をかけた。

印法律事務所ニシス・デサイ・アソシエーツで国際税務責任者を務めるメイヤッパン・ナガッパン氏は「(編集注、報復関税をかけたら)より解決が困難な問題になる」と話す。

同氏によると、平衡税の適用対象は年間売上高2000万ルピー(約2900万円)超の企業と広範でハードルが低いため、規模の小さい企業はインドから離れる可能性があるという。

「その種の企業は裁判所に訴えたりしない。単純にインドに来なくなるだろう」

「拠点なくても経済活動あれば課税」の論理

インドは現在、米シリコンバレーとの力関係を変えようとしている。例えば、インド国内で続く農民デモに関連するコンテンツの削除をめぐり、要求に従うことを渋るツイッターと対峙している。

インド政府は論争を呼んでいるオーストラリアの新たなメディア法案にも関心を持ち、モディ首相が先週、モリソン豪首相と法案について話し合った。

インドにとって、外国IT企業がもっと税金を払うことは急務だ。14億人が暮らすインドは所得が向上するなかでスマートフォンの普及が進み、ECからクラウドサービスまでビジネスが活況を呈している。

しかし、インドは慢性的に徴税率が低く、さらにコロナ禍が深刻な歳入不足につながり、状況は一層悪化している。

インド政府によると、20年4月~21年1月の平衡税による税収はほぼ150億ルピーで、導入時16年度の34億ルピーから大きく増加している。

法律事務所BMRリーガルのマネージングパートナー、ムケシュ・ブターニ氏は、政府の観点から見ると平衡税導入の論理は「非常にシンプル」だと指摘する。

「ある企業が経済活動をしているとする。実体的な拠点はなくても、この国の市民と取引をしているのだから経済的なつながりがある、ということだ」

だが、デジタル税に対するインドの姿勢は、ビジネスをしにくい国という悪評をさらに高める危険もはらむ。悪評は、遡及課税をめぐる英ボーダフォンや英ケアン・エナジーなどの企業との何年にもわたる紛争の産物だ。

途上国にも優しい解決策を

インドは18年、実体的な拠点はなくても国内で「重要な経済的存在感」を示していればいれば課税するとして、外国IT企業に対する姿勢を強めた。ただし今のところ、大半の西側企業は2国間租税条約により課税から守られている。

インドの賭けは成功するのか、アナリストの見方は分かれる。インド最高裁で訴訟に携わる資格を持つ弁護士のアシュシ・ゴエル氏は、最終的にはインドが国際舞台でより有利な税制を求めることに役立つかもしれないとの見方だ。

「待ち続けているわけにはいかない」と同氏は言う。「先進国だけでなく、途上国側にも優しい解決策があってしかるべきだ」

By Benjamin Parkin

(2021年2月24日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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