ミャンマー情勢膠着 抗議デモ、国軍決め手欠く

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『【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーでは24日もクーデターを起こした国軍への市民らの抗議デモが続いた。市民側が求める民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の解放は実現しない。国軍も本格的な武力弾圧に踏み切れないでいる。欧米は市民側を支持する一方、国軍には制裁強化を示唆し、市民への暴力停止を求めている。市民、国軍の双方は決め手に欠け、「持久戦」の様相をみせてきた。

24日には最大都市ヤンゴンの目抜き通りで、道路を封鎖する警官隊と「我々のリーダー(スー・チー氏)を帰せ」と叫ぶデモ参加者が20メートルほどの距離でにらみ合った。デモ隊は警察が設けた規制ラインを越えない。国軍に協力する警察側はすでにデモ側の計3人を銃撃で殺害しているが、いずれも外国メディアの少ない首都ネピドー、第2の都市マンダレーでの出来事だ。ヤンゴンでは自重しているようにみえる。

ヤンゴンでデモに参加していた銀行員の男性(30)は「銃撃は怖いが、諦めたら(国軍の)恐怖が何十年も続く」と話した。だが、警官隊と衝突する考えはない。「解散しろと言われたら、移動して別の場所で集まればよい」と話した。1988年、2007年にもそれぞれ、当時の軍事政権に市民らはデモで立ち向かったが、いずれも武力で鎮圧された。そのときの事情を伝え聞き、「反省」を生かしているようだ。

デモ参加者が頼るのは、国軍に対する欧米諸国の圧力だ。ヤンゴンで参加者が持つプラカードや横断幕の多くは英語表記。公務員や銀行員が職場を放棄してクーデターに抗議する「不服従運動(CDM=Civil Disobedience Movement)」という標語を掲げる。メディアを通じ、欧米に直接、支援を求めている。

一方、国軍側には、市民の抵抗がここまで広がるとは想定外だったと思われる。ヤンゴンでは自警団の市民が警察に射殺されたが、デモ参加者を放水車や威嚇射撃で解散させるような手荒なことはしていない。22日にはヤンゴンを中心に「全国で計100万人規模」(地元メディア)というデモが起きたが、大きな衝突はなかった。

国軍が恐れるのは欧米の制裁強化だ。特に欧州連合(EU)がミャンマーへの特恵関税の停止に踏み切れば、同国の主力輸出品である繊維製品が大きな打撃を受ける。景気悪化は軍人らが出資する国軍系企業に損失を与え、軍内の不満を高めかねない。欧米諸国はデモ参加の市民らへの暴力停止を強く要請しており、国軍は無視できない。

国軍は司法機関に命じ、スー・チー氏を刑事事件の容疑者として勾留しており、3月1日には本格的な審理が始まる見通しだ。拘束は長引く見通しだ。国軍はクーデターの名目を、スー・チー氏が党首の政党が大勝した2020年11月の総選挙(上下院選)で不正があったためと主張し、いまの非常事態宣言が解除された後は「複数の政党が参加する公正な総選挙を実施する」と公言している。

外交関係者には「国軍が総選挙のスケジュールを明示することで市民側の理解を得ようとする可能性はある」というが、情勢はなお不透明だ。