シンガポール、IT人材誘致へ新ビザ 月給要件160万円

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『シンガポール政府がトップレベルのIT(情報技術)人材の誘致へ新たな就労ビザ「テック・パス」を導入した。自由な働き方を認める一方、ビザ取得に必要な月給要件は160万円以上と高いハードルを課す。優秀な人材の獲得へ知恵を絞る中、製造業への就労ビザ発給は厳格化。中程度の技能を持つ外国人労働者への門戸は狭まっている。

1月19日から申請を受け付けたテック・パスの取得には「直近1年間の月給が2万シンガポールド…

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1月19日から申請を受け付けたテック・パスの取得には「直近1年間の月給が2万シンガポールドル(約160万円)以上」などの3条件のうち2つを満たす必要がある。期限2年間のパスを更新する際も、年収24万シンガポールドルといった諸条件のうち、複数を満たす必要がある。一定の成功を収めた起業家や、人工知能(AI)やデータ分析の専門家などを対象に想定しており、当初の発給枠は500人に限る。

取得要件は厳しい一方で、取得者の自由度は高い。通常の専門職ビザは就職先の企業が固定されるが、テック・パスを取ればシンガポールに来てから起業したり、複数の企業の従業員やアドバイザーになったりできる。

政府が欲するのが、トップ人材が持つ技術やネットワーク力だ。有能な人材がシンガポールで起業し、最先端のサービスを開発すれば、多くの雇用機会が生まれ、IT企業の集積地として飛躍できる。ドイツ出身で自らもシンガポールで起業したジュリアン・アートープ氏は「テック・パスは起業家をさらに呼び寄せるだろう」と話す。

国内の新卒者だけでは、変化の激しいIT人材の需要を賄いきれないという事情もある。ある外資系IT企業の東南アジア事業のトップは「AIなど最先端の人材は明らかに不足している」という。政府はテック・パスの取得者が、国内人材のデジタル能力を引き上げる先導役となることを期待している。

一方で非高度人材への対応は厳しい。16日には製造業への就労ビザ発給を絞り込むと発表した。Sパスと呼ばれる中技能の労働者向けビザ発給の上限比率を全従業員の20%から22年1月に18%に、23年1月からは15%に引き下げる。国内人材やIT化によって代替可能な技能しか持たない外国人への門戸は徐々に狭まっている。

チャン・チュンシン貿易産業相は「シンガポールの競争力は世界中から人材を集める能力にあることを忘れてはならない」と強調する。20年7月の総選挙の前後は新型コロナウイルスによる景気悪化の影響で、国民の雇用確保の議論が目立った。年が変わり、コロナ後のデジタル化の加速をにらんだ人材政策に重心を置き始めたようにみえる。(シンガポール=中野貴司)