米、同盟国と供給網整備 半導体・EV電池で中国に対抗

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『【ワシントン=鳳山太成、台北=中村裕】バイデン米政権は半導体や電池など重要部材のサプライチェーン(供給網)づくりで同盟国や地域と連携する。関連の動きを加速させる大統領令に月内にも署名する。日本などアジア各国・地域との協力を念頭に、安定して調達できる体制を整備する。対立する中国に依存する供給網からの脱却を目指す。

バイデン大統領は供給網の国家戦略をつくるよう命じる大統領令に署名する。日本経済新聞が入…

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日本経済新聞が入手した原案によると、半導体のほか、電気自動車(EV)用の電池、レアアース(希土類)、医療品を中心に、供給網の強化策づくりに乗り出す。

大統領令は「同盟国との協力が強靱(きょうじん)な供給網につながる」と指摘。敵対国の制裁や災害など有事に影響を受けにくい体制を築くよう命じる見通しだ。半導体は友好関係にある台湾をはじめ、日本や韓国と連携するとみられる。レアアースでは有力企業を持つオーストラリアなど、アジア各国・地域との協力を視野に入れる。

具体的には、重要製品の供給網に関する情報を同盟国と共有する。生産品目で互いに補完するほか、非常時に速やかに融通し合える仕組みを検討する。余剰能力や備蓄品の確保も協議する。中国との取引を減らすよう要請する可能性もある。

年明けから表面化した半導体不足は米自動車メーカーなどを直撃し、供給網の見直しは、その意味でも急務だ。ボストン・コンサルティング・グループによると、工場立地別の2020年の生産能力シェアは米国が12%。世界最大の22%を占める台湾に増産を求めたが、フル稼働中だ。短期的には打つ手が乏しい。

中国の半導体の生産能力は30年に24%と世界最大になる可能性がある。供給網で中国に依存すれば安全保障上の懸念が生じ、貿易規制を通じて圧力をかけられる恐れがある。中国は過去、尖閣諸島を巡り対立した日本へのレアアース輸出を規制したことがある。

実際、米国はレアアースの約80%を中国から輸入している。医療品についても最大9割を対中輸入に頼っており、予断は許さない。

特に半導体の有力メーカーは世界でも限られ、米国と歩調を合わせるかは企業の判断による。米国と足並みをそろえるには各国政府の理解と協力も不可欠だ。新たな供給網構築の実現には今後、多くの時間を要する可能性も高い。

半導体不足、安全保障上の懸念強まる

 【台北=中村裕】米国が半導体や電池など重要部材の供給網(サプライチェーン)づくりで同盟国や地域と連携する大統領令を発令するのは、2018年以降の中国との激しい対立で、安全保障の観点から中国を完全に排除した供給網を新たに構築する必要があると判断したためだ。半導体不足が米国の産業界を直撃し、影響が予想以上に深刻化し始めたこともある。

 すでに米国は昨年から新たな供給網の構築に動いている。その一つが半導体などIT(情報技術)に強く、友好関係にある台湾との関係強化だ。
 具体的には、半導体製造で世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)の工場誘致を成功させた。TSMCは24年の稼働を目指し、米政府の補助金も得て、120億㌦(約1兆2600億円)を投じてアリゾナ州で米向けの軍事用の半導体を量産する計画。米台の半導体連携を象徴する工場になる見込みだ。

米国はTSMCの工場誘致など供給網構築を進める=ロイター

 さらに米国は昨秋から台湾や日本、オーストラリアなど特に技術や資源に強い国・地域に対し、中国に依存しない供給網の構築を連携してつくるよう呼び掛けてきた。
 特に米台間の動きは早く、すでに昨年11月、ワシントンで高官協議を行い、半導体や高速通信規格「5G」など7項目の技術連携で覚書(MOU)を結び、脱・中国を志向した新たな供給網の早期構築で一致した。

 日本側も米台連携の動きに同調し、昨年から経済産業省が主導する形で米国と同様に、TSMCの誘致に力を注いできた。誘致に成功すれば「日米台」でより強固な供給網ができ、日本も将来にわたって先端の半導体を確保しやすくなる。そのためすでに総額2000億円の予算を設け、日本企業との連携を視野にしたTSMCの受け入れ準備を着々と整えている。

 米国が掲げる新たな供給網の構想について、日本政府関係者は「当面は集中的に米国のサプライチェーンを調査すると聞いている。半導体やレアアースなどをどの国にどの程度、依存しているかを洗い出す。同盟国と対策を練るのはその後になるだろう」とみている。
 米国は約80%を中国から輸入するレアアースでも、豪州との間で脱・中国を進めている。生産大手の豪ライナスは米国防総省の資金援助を得て、米テキサス州に工場を建設する。環境政策で注力するEVの電池でもパナソニックや韓国LG化学と競争する中国勢がシェアを高めており、対策が欠かせない。
 ただ、例えば5G関連では、華為技術(ファーウェイ)など中国勢は価格競争力に強みがある。新たな供給網の構築は米国や日本企業にコスト増を強いる可能性がある。

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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 記事に出てくるレアアース(希土類)は17種の元素で構成され、電気自動車のモーターなどに使う高性能磁石の原料になります。10年ほど前に中国が対日輸出を停止した「レアアース・ショック」の教訓から供給源を分散させるなどの対策を進めました。中国の生産シェアは9割から6割まで減りましたが、依然として過半は中国です。
中国はアフリカのコンゴ民主共和国が主産地で、リチウムイオン電池の電極に使うコバルトのサプライチェーンにも深く関与しています。対中国という意味合いだけでなく、こうした金属資源をボトルネックにしないように各国で省資源、代替技術の開発を急ぐことが重要だと思います。
2021年2月24日 7:09いいね
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村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 21世紀に入り加速したスマホ、クラウドの時代を背後から支えたものの1つが、工場をもたないファブレス半導体会社と製造を専門とするファウンドリーの台頭でした。効率よく半導体を世の中に供給するのに有効な国際的分業ですが、「次の姿」を描くべき時期を迎えました。
2021年2月24日 8:05いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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分析・考察 中国に「サシの勝負」を挑んだトランプ前政権の流儀から、技術や資源を持つ同盟国や友好国と手を組んで中国に対抗する「バイデン流」への転換を示す最初の具体例ともいえます。

安全保障に影響が及ぶ分野を絞り込んで、戦略的に対中依存を下げる手法は正攻法ではありますが、時間軸に興味があります。一気に中国離れはできないでしょうし、かといって悠長に進めていては所期の目的を果たせません。

過渡期には中国も米国やアジア、特に台湾に様々な揺さぶりをかけるはず。台北発の記事のように新たな供給網はコスト増を招く可能性があり、米国の呼び掛けに対中利害の違う各国の歩調がどこまでそろうかも焦点です。
2021年2月24日 7:48いいね
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