英中「黄金時代」に幕 香港住民は英移住ビザに殺到

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『【ロンドン=中島裕介、北京=羽田野主】英中関係の悪化に歯止めがかからない。中国が香港への統制を強めたのをきっかけに、香港の旧宗主国の英国が反発。英国が始めた香港住民の移住支援策には申請が殺到している。中国のウイグル族の人権問題では、中国が英BBCの放送を禁じた。「黄金時代」とうたわれた蜜月関係は終わりを迎えている。

英紙タイムズ(電子版)は18日、英国が香港住民向けに始めた新たなビザ制度について、…

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英紙タイムズ(電子版)は18日、英国が香港住民向けに始めた新たなビザ制度について、受け付け開始から約2週間で約5000人の申請があったと報道した。

英政府は中国が2020年6月末に香港国家安全維持法を施行した後、中国返還前に生まれた香港市民が持つ「英国海外市民(BNO)旅券」の保持者とその家族向けに、英市民権取得につながる特別ビザの発行を決めた。5年間で最大32万人の香港市民が英国に逃れると予測する。

中国外務省はこの問題でBNOを旅券として無効とみなす対抗措置をとった。「さらなる措置をとる権利も留保する」として追加措置をとる構えをみせている。

英中関係は最近まで「黄金時代」と称されていた。英国は15年に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主要7カ国(G7)で最初に参加した。中国企業による英国内の原子力発電所への出資や鉄鋼大手の買収など基幹産業での結びつきも強まった。

だが中国国内の新型コロナウイルス対策の初動への疑念などから英国内で対中懐疑論が台頭し始めた。20年6月末に習近平(シー・ジンピン)指導部が香港で統制を強める香港国安法を制定すると、英中関係の悪化は決定的になった。

中国の放送当局は21年2月11日、英BBCワールドニュースの放送を禁止した。BBCはウイグル族の「再教育施設」について、人権迫害や集団の性的暴行があったと報じ、中国が抗議していた。

これに先立つ4日、英当局は中国国際テレビ(CGTN)の番組の最終的な編集権を中国共産党が握っているとして、放送免許を取り消した。英紙デーリー・テレグラフによると、中国人3人が中国の別々の報道機関への勤務を装って英国に入国していた。英当局が身元を突き止めスパイ容疑で中国に送還したという。

英政府は春以降に最新鋭空母クイーン・エリザベスをインド太平洋地域に派遣する際、日本の自衛隊と共同訓練する方針を固めている。中国の海洋進出をにらんだもので、東シナ海・南シナ海情勢を巡り一方的な現状変更の試みに反対するための連携強化だ。

 英空母「クイーン・エリザベス」=2017年11月、英南部ポーツマス(ゲッティ=共同)

英国が強硬路線にカジを切るのはジョンソン政権を支える与党・保守党内の対中懐疑派が勢いを増している点が大きい。特に伝統的に人権を重んじる保守派にとっては、香港の自治の侵害やウイグル族の強制労働が疑われる問題は容認できない。

英議会では政府提出の貿易法案に、特定民族の破壊行為があると認定された国との貿易や投資の協定を結びにくくする修正を加えようとする動きが活発化している。

上院は2月上旬の貿易法案の審議で「英国の高等裁判所に、民族破壊行為があったかを判断する役割を与え、『あった』と認定された場合、議会で当該国との通商政策について議論する」という趣旨の修正を加えた。議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いだ。

修正案が下院に戻ると政府は上院の修正案を拒否する代わりに「議会の委員会に民族破壊行為について調査する役割を与える」という妥協案を示した。9日にはこの案が賛成多数で可決されたが、与党・保守党から上院の修正案に賛同する議員約30人の造反が出た。

 台北市で行われた、中国当局に逮捕された香港の民主派活動家ら12人の釈放を求めるデモ行進(共同)

上院は再び同様の修正を追加して下院に差し戻す見通し。もし法案の賛同者が増えて可決すれば、英国の参加後に中国が環太平洋経済連携協定(TPP)に入る際の大きな障壁になる可能性もある。

だが英国内も対中強硬一色というわけではない。英首相官邸の関係者は「香港やウイグルの件は看過できない」としつつも、「気候変動やコロナ対策などでは英中の建設的な連携が必要だ」と明かす。もともとは親中派といわれるジョンソン首相も12日、「新年明けましておめでとう。恭喜発財!」と中国の新年を祝うビデオメッセージをツイッターに投稿した。

習指導部内にも英国との関係悪化を懸念する意見もあるようだ。

中国共産党の機関紙、人民日報は5日付の1面で李克強(リー・クォーチャン)首相が中英関係に深く関わってきた英企業家らにオンラインでメッセージを送ったと伝えた。企業家らを「氷を砕いた者」とたたえ「中国はこれまでと少しも変わらず英国との関係発展を重視している」と秋波を送っている。

トランプ前政権時代に米中は国交を樹立して以来、最悪とまでいわれるほど関係が悪化した。バイデン米政権の出方も読めない状況で、英国はできるだけ近づけておきたいのが習指導部の本音だ。

ジョンソン首相のメッセージを中国国営中央テレビ(CCTV)が取りあげたのも国民の対英感情を悪化させたくないためだ。

香港やウイグル問題は中国が最重視する「核心的利益」と位置づける。習指導部の強硬姿勢が英国の反発を招き、さらに強い態度に出ざるを得ないという悪循環に陥っている。

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