南シナ海に攻撃原潜を潜入させたフランスの真意

南シナ海に攻撃原潜を潜入させたフランスの真意
フランス版FONOPで中国牽制、それだけではない狙い
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64112

 ※ これは、絶対見といた方がいい記事だと思うぞ…。

 ※ 前に、各国の「戦略原潜」について、紹介したことがある…。その時、「フランスの原潜とは、ちょっと耳慣れなかったんで、注目した。」とか、言っておいた…。

 ※ その「背景」の一端が、語られている…。

 ※ さわりを、紹介する…。

 『北村 淳のプロフィール
軍事社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。日本語著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社)『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』(講談社)『シミュレーション日本降伏:中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP研究所)などがある。

アメリカ海兵隊のドクトリン
米軍の見た自衛隊の実力
写真で見るトモダチ作戦
海兵隊とオスプレイ
巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない
トランプと自衛隊の対中軍事戦略
シミュレーション日本降伏:中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』

『2月8日、フランス国防大臣フロランス・パルリはツイッターで、フランス海軍攻撃原潜「エムロード(エメラルド)」が南シナ海を航行(潜航)したことを公表した。

 通常、どの国も潜水艦の作戦行動に関しては公表しないことが原則になっているが、中国がそのほぼ全域を主権的海域であると主張している南シナ海に攻撃原潜を送り込んだ事実をフランスが明らかにした真意に憶測が持たれている。

 エムロードはフランス海軍が運用している6隻のリュビ級攻撃原潜の1隻で、攻撃原潜としては小型(水中排水量2640トン、全長73.6メートル)である。ちなみに海上自衛隊「そうりゅう型潜水艦」は水中排水量4200トン、全長83メートルと、リュビ級原潜より大型である。』

『彼女(※フランス国防大臣)は、領域紛争中の南シナ海におけるパトロールは、国際海洋法秩序が尊重されなければならないことを示す意義を有しており、アメリカ海軍による「FONOP(公海航行自由原則維持のための作戦)」類似の作戦であったことも明言している。FONOPは、南シナ海に対する国際海洋法秩序をないがしろにした中国の侵略的拡張姿勢に異議を唱えるため、中国側が領海と主張する海域を航行する作戦である。』

『それと同時に、フランスはインド太平洋地域に多くの海外県・海外領土(マヨット島、レユニオン島、ワリス・フツナ諸島、南太平洋のフランス領ポリネシア、ニューカレドニアなど)を有しているため、それらの領域に対する主権と国益を保護する能力を有している事実をデモンストレーションしている、ともツイートしている。』

『それに対して、中国国防当局や中国外交当局は至って静かである。その沈黙は、“強力無比”な中国海洋戦力にとってフランスのちっぽけな原潜など何の脅威にもならない、という自信の誇示であると言ってもよい(中国は水中排水量7000トン、全長110メートルの09III型攻撃原潜を9隻運用している。さらに中国海軍は09III型を含めて少なくとも12隻の攻撃原潜と50隻前後の通常動力潜水艦を運用している)。』

『その理由は、やはり国防相自身が触れているように、インド洋や太平洋地域に海外県や海外領土を有するとともに、船舶による貿易活動も国家経済を支える重要手段となっているフランスにとって、現在の国際海洋法秩序の根幹となっている公海航行自由原則維持が、いかなる海域においても踏みにじらるような事態があってはならないと考えているからにほかならない。

 南シナ海で、現行の国際海洋法秩序が中国によって突き崩された場合、中国によって生み出された新たな海洋原則がインド洋や太平洋にも波及しかねない。その結果、フランス本国からインド洋や南太平洋を隔てたはるか彼方の海外県と海外領土との間の海上交通は容易に遮断されてしまいかねないのである。』

『もっとも、南シナ海潜航はともかく、フランス海軍がこの時期にインド洋と太平洋を1万5000キロメートル以上も小型艇であるエムロードに航海させたのにはもう1つの重要な目的があると考えられる。

 それは、フランス潜水艦の優秀性をオーストラリアにアピールするという目的である。

 オーストラリアは老朽化した潜水艦の後継艦に、日本、ドイツ、フランスの潜水艦の中からフランスの潜水艦を採用した(本コラム2016年3月3日、2016年4月14日、2016年5月5日、参照)。しかしながら、フランスの国営メーカーが受注したオーストラリア海軍の12隻もの次期潜水艦「アタック級潜水艦」(フランス海軍の次期攻撃原潜をベースにして通常動力に入れ替えて製造されることになっている)建造計画は、膨れ上がったコストや、遅れに遅れている進捗状況などによって、キャンセルの話も浮上している状況である。

 そこで、アタック級潜水艦よりも旧式で小型なフランス原潜がいまだに大航海に耐えうることを実証して、オーストラリアがフランスの潜水艦から日本の潜水艦などに心変わりしてしまわないようにデモンストレーションを行ったという可能性も考えられるのだ。』