中国NIO、次世代電池で波紋 「22年の実用化」宣言で

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『中国の新興電気自動車(EV)メーカー、上海蔚来汽車(NIO)が1度の充電で1000㌔㍍超を走行できる次世代電池を世界に先駆けて2022年に実用化すると発表し、波紋を広げている。EVブームの中での期待感から株価は急上昇し、時価総額は日産自動車やホンダを上回る9兆円規模になった。半面、赤字が続き収益力などに不安を抱えるNIOの発表内容を疑問視する向きもある。

「22年第4四半期に『固体電池』を実用化する。航続距離は1…

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航続距離は1000㌔㍍を突破し、安全で効率も良い」。1月上旬、NIOが開いた年次発表会で李斌・最高経営責任者(CEO)は表明した。開発した電池を今後発売する新車種「ET7」に搭載する方針。現行の主力車種の電池も新型に交換すれば、航続距離を600㌔㍍前後から900㌔㍍前後に伸ばせるという。

固体電池はいまの主流のリチウムイオン電池と異なり、内部の電解液を固体にして出力を上げるのが特徴だ。エネルギー密度は現状の3倍程度に高まる。

株式市場では次世代の車載電池の本命である「全固体電池」だと受け止められ、米ニューヨーク市場でNIOの株価は上場来高値をつけた。

NIOの次世代電池が実現すれば各車種の性能は大幅に高まるが、「固体電池」が何を指すのかが議論を呼んでいる。NIOは技術の詳細を語らず、ET7の発売時期や価格は未公表。NIOに電池を供給してきた中国の車載電池最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)も沈黙を保つ。

「もしある人が、彼の車は1000㌔㍍走れて、すぐ充電でき、安全でコストも低いなどと言ったら、信じてはいけない。現時点では不可能だからだ」。NIOの発表から1週間後、中国のEVに関するフォーラムで、業界の重鎮である中国科学院の欧陽明高・院士は語った。名指ししてはいないが、NIOが念頭にあったとみられる。

NIOの言う固体電池は「(全固体電池よりも初歩的な)『半固体電池』とみられる」(中国の興業証券)との指摘がある一方で、「電池開発に取り組む方向性は正しい」(中国の証券会社)との意見が出ている。

議論を巻き起こしているNIOは14年に設立し、18年9月にはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。中国でEV需要が増えたこともあり、20年の販売台数は19年比2倍強の約4万4千台となった。

直近の20年7~9月期決算は売上高が前年同期比2.5倍の45億2600万元(約740億円)と過去最高を記録した一方、最終損益は10億4700万元の赤字だった。黒字化には年間18万台の新車を売る必要があるとみる専門家もいる。

NIOの財務をみると、19年末には債務超過の状態だった。その後、NIOの株価は米テスラ株の高騰につられる形で20年夏から上昇。この環境を生かして公募増資による大型の資金調達を相次いで実行し、20年9月末には債務超過を解消した。新型電池を実用化するという宣言も、投資家の関心を呼び込む構図になっている。

株価が高騰したテスラや、企業買収を目的とした上場会社「SPAC」を活用して上場し、その後株価が乱高下した米ニコラなど、EVに対する過熱感が指摘される中での次世代電池「実用化宣言」。中国政府の側面支援などの出方を含め、NIOを巡る動向への関心は続きそうだ。

トヨタなど、全固体電池の開発急ぐ
電池はEVの将来性能を決めるだけに自動車大手が技術開発を急ぐ。全固体電池の実用化を目指すトヨタ自動車の技術幹部は「2020年代前半には700㌔㍍や1000㌔㍍走れる製品を出していかないといけない」と話す。

ほかのトヨタ関係者は「現時点で少量生産はできているが、安定した量を大量生産するのはまだ難しい」と指摘する。

独フォルクスワーゲンは25年にも全固体電池の生産ラインを設置する計画。韓国の現代自動車も全固体電池の研究開発を進める。自社が主導する形で25年に搭載車を試作し、27年に量産準備を始める計画という。

外資系証券のアナリストは全固体電池について「20年代前半から投入が始まるが、普及し出すのは30年ぐらい」とみる。コスト面でリチウムイオン電池の優位が続くため、全固体電池の採用は高級車種から進む見通しだ。(広州=川上尚志、名古屋=湯沢維久、東京=押切智義)