水素供給網の整備加速 ENEOSは給油所で来春販売

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『脱炭素の切り札とされる燃料電池車のインフラ整備が規制緩和で進み始めた。石油元売り最大手のENEOSホールディングス(HD)はこれまで難しかった市街地の給油所で燃料電池車(FCV)向け水素充塡サービスを展開する。国内水素販売トップの岩谷産業は簡易型水素ステーションの建設を推進。欧州や中国が水素への取り組みを強化する中、日本は規制の見直しをテコに水素インフラ整備を急ぐ。

日本は2017年に世界で初めて…

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日本は2017年に世界で初めて国の政策として水素基本戦略を策定。規制改革案に水素ステーション関連の規制見直しが盛り込まれた。ガス保安や立地安全を巡る規定が厳しく、水素ステーション設置はコストや技術面で難易度が高かった。

ここにきて規制見直しが進み、民間企業の水素ステーション設置に広がりが出てきた。

ENEOSHDによると給油所内に水素充塡設備を設置するのは国内初。22年春から神奈川県と愛知県の給油所2カ所から始める。ENEOSブランドの給油所は全国1万3000カ所あり、水素充塡は新ビジネスとしても期待がかかる。

給油所での併売が可能になったのは、20年1月に経済産業省がガスなどの安全対策などを規制する高圧ガス保安法の法解釈を明確にしたことがある。水素充塡に必要な圧縮機などの関連機器は安全のため他の設備と距離を取り鉄筋コンクリートで仕切る必要があったが、簡便にできるようになった。その結果、市街地の給油所でも水素充塡機の設置が可能になった。

一連の規制緩和では高圧ガス保安規制の省令も改正し、水素ステーションの無人営業を可能にした。機器の材料、立地や運営面などこれまで見直された規制は数十項目に及ぶ。政府は21年度予算案には110億円を計上し、資金面でも民間の取り組みを支援する。

岩谷産業は全国で水素ステーション整備を進めている。経産省の見解で、水素を保管するトレーラーの温度を冷やす散水装置の設置を不要化した。コストを抑えられる簡易型の水素ステーションを現在、6カ所建設中だ。

「燃料電池実用化推進協議会」(FCCJ)によれば、水素スタンドの建設費は当初約5億円だったが、一段の規制改革などで2億円まで減らせると試算している。

【関連記事】水素、脱炭素の主軸に 大量導入がコスト削減のカギ
札幌市が水素先進都市へ始動、FCVなど需要調査


自治体レベルでも脱炭素の取り組みが広がり、東京都中心に全国で100台の燃料電池バス普及を見込む。ただ、各地で水素供給のインフラ不足が課題で、30年までに3000台のFCV導入を掲げる札幌市には、水素ステーションは移動式の1台しかない。

政府は30年にFCV80万台、水素ステーションも900カ所に増やす目標を掲げる。約3万店あるガソリンステーションの約3%で、水素供給の整備は緒に就いたばかりだ。

海外も水素への傾斜を強めている。調査会社マークラインズによると、20年のFCV(乗用車と小型商用車)販売台数は韓国が5350台と日本の約7倍。欧州連合(EU)が20年7月に水素戦略を発表し、トラックやバスなど商用車で水素利用を重点展開する。中国も燃料電池バスを先行して普及を進めている。水素燃料の活用で国家間の競争も始まっている。

FCV、コストなお課題 日本での普及EVに後れ
燃料電池車(FCV)は日本勢が世界をリードする技術だが、日本での普及は電気自動車(EV)に比べても遅れている。EVより航続距離が長いなどのメリットはあるが、コストの高さやインフラ整備が課題となっている。

FCVは水素と空気中の酸素を反応させて電気を発生させる。走行時に排出するのは水だけで「究極のエコカー」とされる。技術で先頭を走るのがトヨタ自動車で、2014年に世界で初めて量産型となる「ミライ」を投入。20年12月には6年ぶりの全面改良となる新型を発売した。
新型ミライの航続距離は約850キロメートルと、200~400キロメートルが多いEVを大きく上回る。EVのフル充電までの時間が1時間ほどかかるのに対して、FCVに必要な水素の充塡にかかる時間は大幅に短いのも特徴だ。
それでも19年度末までの日本での保有台数は約4000台と、EVの約12万4000台と差が開いている。大きな要因がコストだ。代表的なEVである日産自動車の「リーフ」は電池容量が大きいタイプの最低価格が441万円。ミライは710万円からと高い。
新型ミライは基幹部品のひとつである水素タンクの原価を従来車種と比べ約7割下げるなどコスト削減の技術開発も進めたが、本格的な普及へさらなる上積みが必要だ。
インフラ整備もなお課題だ。EVの充電ステーションが日本全国で約2万カ所に増えたのに比べ、水素ステーションは約140カ所にとどまる。
解決策として進めるのが水素活用の裾野を広げる取り組みだ。例えば新型ミライの燃料電池システムは乗用車だけでなく、商用車や産業車両、船舶、鉄道などさまざまな用途向けの外販を念頭に開発している。水素需要が増えれば充塡インフラ整備などに弾みがつく。
バスやトラックなど商用車で普及を促す動きもある。基本的に同じルートを走るため、水素ステーションが少なくても運行しやすいからだ。
海外勢も商用車を中心にFCVを強化する。欧州では商用車大手の独ダイムラーとボルボ(スウェーデン)が発電装置の開発を統合し効率化。25年以降に航続距離1千キロメートルを超えるFCVトラックを量産する計画だ。中国政府も商用車中心にFCV供給網を築く方針で、35年までに100万台前後の保有台数をめざす。
FCVとEVとの関係についてトヨタは「インフラ整備状況や充塡時間、航続距離など得意分野が異なっており、互いに共存していく」(幹部)とみる。豊田章男社長も20年11月の決算記者会見で「世界各地でエネルギー事情が異なるため、いろいろな電動化のメニューを持っていることが強みになる」と指摘。引き続きFCVやEVに加えてハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの開発と販売を続ける考えだ。
この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Business/Energy/Japan-s-hydrogen-fueling-network-expands-to-gas-stations?n_cid=DSBNNAR

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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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今後の展望 「2050年カーボンニュートラル」が宣言されて以降、日本では2035年を目処に電動車100%を目指すことになっている。しかし、どういう自動車のポートフォリオを提供すれば、これからの勝ち組となるのか、よくわからない。そもそも漠とした疑問が山積みだ。水素ステーションなどインフラ設置が遅れてボトルネックにならないよう、併せて提供されなければならないが、今のスピード感で間に合うのか。水素の製造過程で出る二酸化炭素の排出をどう捉えるのか。ハイブリッド車の扱いの違いが将来的に日本自動車に悪影響とならないか。軽自動車の基準をどうするか。全体を踏まえた鳥瞰図と具体的なロードマップが必要である。
2021年2月17日 9:33いいね
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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説 結局水素をどこでどうやって大量に作り持ってくるかなのです。究極的には再生可能エネルギーの電気で水を電気分解するのが望ましいわけですが、特に再エネが高い日本ではあまりに高コストなので、今は海外で天然ガス等から水素を作り日本に輸送+CO2はその国の地中に埋める方法がメインで考えられています。化石燃料資源国への依存はいまと変わるものではありませんが、脱炭素化のための投資。一昨日参加した石油天然ガス小委資料がよくまとまっていました。https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/sekiyu_gas/pdf/013_03_00.pdf
2021年2月17日 9:25 (2021年2月17日 9:26更新)
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山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授
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ひとこと解説 セルフガソリンスタンドであっても、給油開始は監視カメラで安全を確認した人の手によって許可が出されているのをご存知でしょうか。AIなどによる支援が人手不足の鍵になると考えています。

FCVやEVもステーションの数や充電にかかる時間など課題が山積です。次のイノベーションやブレイクスルーが何なのか、目が離せません。
2021年2月17日 8:10 (2021年2月17日 8:15更新)
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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 今では当たり前になっているセルフ式のスタンドも、かつては規制に阻まれていました。危険物の特性を知らないドライバーが自身でガソリンなどを給油することは危険だとされていたからです。今でも無人の給油所は認められていません。水素となるとさらに規制は厳しくなります。安全性を確保しながら、さまざまな規制を緩和していかなければインフラ整備は進みません。
2021年2月17日 7:12いいね
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