新興国、インフレ一段と 低所得層直撃、政治不安要因に

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『【サンパウロ=外山尚之、イスタンブール=木寺もも子】新興国で物価上昇が長期化している。通貨安や投機マネーの流入で食品価格の高騰が止まらず、経済的に苦境にある低所得者層を直撃している。怒りの矛先は政府に向かいつつあり、各国とも対応に苦慮している。

2月上旬、ブラジル最大都市サンパウロのファベーラ(貧民街)、パライゾポリスにある食品スーパー。乳児を抱えた女性が品定めをしながら「コメもジャガイモも高くな…

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乳児を抱えた女性が品定めをしながら「コメもジャガイモも高くなってて、何を食べれば良いのか」とため息をついた。ブラジル地理統計院(IBGE)によると、同国の1月の食料品価格は前年同月比で約14.8%増。食生活に欠かせないコメは同74%増、食肉は同23%増で、市民の懐事情は厳しい。

ブラジルは新型コロナウイルスの感染者数が世界で3番目に多く、通貨レアルは対ドルで弱含んでいる。通貨安で輸入食材の価格が上昇し、コメや食肉は収益性が高い輸出に向かっていることも国内市場の供給不足を招き、物価を押し上げている。

トルコでも物価上昇率は約15%と、右肩上がりの状況が続く。新型コロナで外貨収入の柱である観光客も急減し、経常収支の悪化を嫌気して通貨リラは下落基調にある。フィリピンも1月のインフレ率が4.2%と2年ぶりの高さとなるなど、多くの新興国で物価高が国民生活を直撃している。

国連食糧農業機関(FAO)が算出する1月の世界食品価格指数(14~16年の国際価格平均値が100)は113.3ポイントと、14年7月以来、最も高い水準に達した。新型コロナによる需要減退で20年前半は100を割り込んでいたが、後半にかけて上昇に転じた。新型コロナに伴う物流の混乱や投機マネーの流入による穀物相場の上昇、天候不順なども相場を押し上げる要因となっている。

物価上昇のあおりを大きく受けるのは低所得者層だ。ブラジルの失業率は14%を上回る状況で、1年前から約3ポイント上昇した。収入がない中での食料品価格の上昇は死活問題となっている。20年末でコロナ対策の低所得者向けの現金給付が打ち切られたことを受け、各地で反政府の抗議デモが発生した。

政府は3月から現金給付の再開を約束したが、財源は見つかっていない。ボルソナロ氏は「我々が財政で失敗すれば、激しいインフレが来ることになる」と支持者に警告する。財政赤字の拡大は通貨安要因で、さらなる物価上昇をもたらしかねない。

世界銀行は20年末の時点で、貧困国で食料不足に苦しむ人は2億3300万人と、1年前から7割増加したと指摘。21年末までにさらに4割増えると予測する。パキスタンやスーダンでも物価上昇を理由とした抗議活動が発生しており、火種は各地に広がっている。

物価上昇は金融政策にも影響を及ぼす。フィリピン中央銀行は11日の金融政策決定会合で、政策金利の翌日物借入金利を過去最低水準の年2.0%で据え置くと決めた。ブラジルやインドも物価上昇を理由に政策金利の引き下げを停止しており、金融緩和を通じて景気を底上げするという従来の手法は封じられつつある。

世界的な金融緩和に伴う投機マネーの流入で穀物価格が上昇傾向にあり、食品価格には先高観測が根強い。トルコでは中銀が目標とする5%までインフレ率を引き下げるには2年以上かかる見込みだ。物価上昇との戦いは長期戦の様相を呈しており、各国政府にとって頭痛の種となっている。